双子と弁当屋の娘
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バトルを見学する人垣の向こうから彼女の声が聴こえた。
「ポケモンバトル負けたら3万、勝ったら十倍」
彼処でバトルをしているのが本当に昨日の彼女なのか僕には分からないけど、ノボリがそうだと断定していたからそうなんだと思う。
「誰か挑戦しませんかーっ」
それにしても初めて聴いた彼女の声、誰かに似てるって思うのは僕の気のせいなのかな?
バトルの誘いが聴こえる度にクダリの心が揺らいだ。
此処はバトルサブウェイの外で、此処ならサブウェイマスターに課せられた決まりは適応外となる。
「なら、別に良いよね」
ノボリを気にして今まで我慢していたクダリであったがその我慢も限界だった。
トウコの肩に回していた腕を下ろし、クダリは人垣の方へと駆け出す。
「あ!」
と、クダリの行動が見えたトウヤが指を指し、それをノボリが視線で追った。
ノボリが見たのは人混みに紛れながら奥へと進むクダリの後ろ姿。
「クダリ!」
「ごめんね。ノボリ」
と振り返らず謝る片割れの声。
それを最後に人混みで姿を消したクダリにノボリは頭をおさえた。
「あの愚弟が」
今に頭痛でも起こしそうなノボリの苦々しい顔にトウヤは軽く背中を叩く。
「取り敢えず俺達も彼処へ言ってみましょう」
誰かバトルをしませんか?と、尋ねても集まった人は互いに顔を見合わせるばかりで我こそは!という声はなかなか上がらなかった。
流石に勝ちすぎたかなとサクラは頭を傾げる。
朝からずっとバトルをやりっぱなしでいたおかげか財布はもうぱんぱんに膨れていたしもう引き上げ様かと思った時、声が上がった。
「僕と、
バトルして!」
人混みにを掻き分けてやって来たらしいその人は私の前に出るなり肩で息をしていた。
あまりに荒い息をしているものだから思わず大丈夫か気になって手が伸びる。
「大丈夫ですか?」
伸ばした手が掴まれた。
え?なんて思って思っていたらその人は顔を上げて、私は固まる。
何故、気付かなかったのだろう。
ほぼ全身白という格好に、
キャスケットから覗く灰色の髪に、
他のトレーナーとは違うその雰囲気に
灰色の瞳が私を捉えていた。
サクラは今すぐに逃げ出したいと思うのだが生憎、こういう時のお助け役であるゾロアークは人垣の向こうの机でまだ眠っているだろうし、連れてきたラルトスとヨーテリーは茂みの向こうの草むらに遊びに行ってしまった。
三匹を置いて自分一人逃げる訳にはいかないし、クダリさんに手を掴まれている以上逃げたくても逃げられない。
絶体絶命だ。
「ねえ、僕とバトルして!
昨日は出来なかった本気のバトル」
「昨日は出来なかったって、昨日のバトルに手を抜いてたのを認めるんですね」
せっかくバトルをして忘れていたのに、
じわじわと浸食してくる嫌な感情にサクラは顔を俯かせ、眉を寄せた。
「確かに昨日のは、手加減した。
でもしょうがないそれがサブウェイのルール。
マスターは"スーパー"のトレイン以外でお客様に本気を出せない」
「ふざけたルールですね」
「僕もそう思う。でもマスターである以上僕達はそのルールを守らなくちゃいけない」
でも、だけど、
とクダリは言葉を続けた。
「ここはバトルサブウェイじゃない。僕もマスターじゃない。
だから本気を出しても誰かに怒られたりしない!
僕と本気の楽しいバトル、しよ!」
ね?と頭を傾げて、クダリは明るい笑顔をサクラに向ける。
「・・・・・・私は」
「クダリィィィィッ!」
サクラの声は凄い剣幕で現れたノボリによって遮られた。
「貴方と言う人はいつもいつも、勝手な事ばかりして!
しかも何です?お客様に私闘を申込むなどマスターとしてあるまじき行為ですよ」
クダリさん、サブウェイの外なら怒られないって言ってたのに凄く怒られてるじゃないですか・・・
そんな事を考えながらクダリを見れば、彼は口を尖らせ明らかに不機嫌な顔をしている。
「ノボリ今、マスターにあるまじきって言ったけどマスターがサブウェイの外でポケモンバトルしちゃ駄目なんて規則ない!」
「確かに規則にはありませんが常識的に考えれば分かる事でしょう!」
目の前で起こった双子の論争をサクラはただ唖然として見ていた。
その間にもポケモンバトルを見るために集まっていた観客は何時まで経っても始まらないバトルに痺れを切らして一人、また一人と帰っていく。
そんな彼等を羨ましく思いサクラは今だ言い争う二人に尋ねた。
「帰っても良いですか?」
「絶対駄目!」
「駄目でございます!」
さいですか、と両手を上げ肩を竦めたサクラは帰る事も許されず、いつの間にか手は解放されていたので取り敢えずその場に腰を下ろす。
「「サクラさん!」」
後ろからの強い衝撃に何事かと振り向けば不安げな顔のトウコとトウヤがいた。
「クダリさんに何もされてないですか?!」
「例えばセクハラとか!」
トウコの具体的なチョイスに苦笑いを浮かべたサクラは「大丈夫」と答える。
「セクハラはされてないから」
「"は"ってじゃあ何をされたんですか!?」
「バトルを申込まれちゃった」
「「えっ」」
「そしたらノボリさんがやって来てずっとこの状態なの」
互いの顔を見合わせ困惑の色を見せたトウコとトウヤに対して、サクラは笑っていた。
「帰っても良いか尋ねたら駄目って言われちゃうし、何時になったら帰れるんだろうねー」
「もう、ノボリ。さっきからしつこい!」
「しつこく物も言いたくなります。サブウェイの外とはいえ、一度施設をご利用なさったお客様にバトルを申込むなどマスターとして許される事ではありません」
「ノボリはずっとそればっかり!他に文句は無いわけ?」
クダリの挑発的な物言いにノボリの口角がひきつった。
「文句ですって?ええ、ありますとも!お客様の都合もいとわず己の欲求だけでバトルを申込「あ、都合とか無いんで大丈夫です」んで・・・?」
割り込まれた声にノボリもクダリも顔をそちらへと向ける。
声の方には小さく片手を挙げながらももう片方の手でお尻に付いた砂埃を払うサクラ。(その彼女の足元には「あわわわ」と何故か挙動不振なトウコとトウヤがいた)
「元々、バトルの挑戦者を募っていたのは私ですし。特に用事とかは無いんです」
「ですが」「じゃあ!」
納得していないノボリの声をクダリの声が掻き消す。
「僕とバトルしてくれる?!」
期待に満ちたクダリにサクラはゆっくりと頷いた。
バトルの申込が承諾されて、喜びのあまりサクラに抱き付こうとしたクダリを彼女は手を前に出して止める。
「その代わりに条件があります」
「・・・条件?」
「絶対に手を抜かないで下さい。
少しでも手加減したらどちらが勝っていようとそこでバトルは終了。
分かりましたか?」
サクラの出した条件をクダリは頷いて聞き入れた。
「手加減しない、本気のバトルする」
じゃあ、と言ったサクラはクダリの片手を掴んだ。
「じゃあ、始めましょう。
一切手抜き無しの楽しいバトルを」
「ポケモンバトル負けたら3万、勝ったら十倍」
彼処でバトルをしているのが本当に昨日の彼女なのか僕には分からないけど、ノボリがそうだと断定していたからそうなんだと思う。
「誰か挑戦しませんかーっ」
それにしても初めて聴いた彼女の声、誰かに似てるって思うのは僕の気のせいなのかな?
バトルの誘いが聴こえる度にクダリの心が揺らいだ。
此処はバトルサブウェイの外で、此処ならサブウェイマスターに課せられた決まりは適応外となる。
「なら、別に良いよね」
ノボリを気にして今まで我慢していたクダリであったがその我慢も限界だった。
トウコの肩に回していた腕を下ろし、クダリは人垣の方へと駆け出す。
「あ!」
と、クダリの行動が見えたトウヤが指を指し、それをノボリが視線で追った。
ノボリが見たのは人混みに紛れながら奥へと進むクダリの後ろ姿。
「クダリ!」
「ごめんね。ノボリ」
と振り返らず謝る片割れの声。
それを最後に人混みで姿を消したクダリにノボリは頭をおさえた。
「あの愚弟が」
今に頭痛でも起こしそうなノボリの苦々しい顔にトウヤは軽く背中を叩く。
「取り敢えず俺達も彼処へ言ってみましょう」
誰かバトルをしませんか?と、尋ねても集まった人は互いに顔を見合わせるばかりで我こそは!という声はなかなか上がらなかった。
流石に勝ちすぎたかなとサクラは頭を傾げる。
朝からずっとバトルをやりっぱなしでいたおかげか財布はもうぱんぱんに膨れていたしもう引き上げ様かと思った時、声が上がった。
「僕と、
バトルして!」
人混みにを掻き分けてやって来たらしいその人は私の前に出るなり肩で息をしていた。
あまりに荒い息をしているものだから思わず大丈夫か気になって手が伸びる。
「大丈夫ですか?」
伸ばした手が掴まれた。
え?なんて思って思っていたらその人は顔を上げて、私は固まる。
何故、気付かなかったのだろう。
ほぼ全身白という格好に、
キャスケットから覗く灰色の髪に、
他のトレーナーとは違うその雰囲気に
灰色の瞳が私を捉えていた。
サクラは今すぐに逃げ出したいと思うのだが生憎、こういう時のお助け役であるゾロアークは人垣の向こうの机でまだ眠っているだろうし、連れてきたラルトスとヨーテリーは茂みの向こうの草むらに遊びに行ってしまった。
三匹を置いて自分一人逃げる訳にはいかないし、クダリさんに手を掴まれている以上逃げたくても逃げられない。
絶体絶命だ。
「ねえ、僕とバトルして!
昨日は出来なかった本気のバトル」
「昨日は出来なかったって、昨日のバトルに手を抜いてたのを認めるんですね」
せっかくバトルをして忘れていたのに、
じわじわと浸食してくる嫌な感情にサクラは顔を俯かせ、眉を寄せた。
「確かに昨日のは、手加減した。
でもしょうがないそれがサブウェイのルール。
マスターは"スーパー"のトレイン以外でお客様に本気を出せない」
「ふざけたルールですね」
「僕もそう思う。でもマスターである以上僕達はそのルールを守らなくちゃいけない」
でも、だけど、
とクダリは言葉を続けた。
「ここはバトルサブウェイじゃない。僕もマスターじゃない。
だから本気を出しても誰かに怒られたりしない!
僕と本気の楽しいバトル、しよ!」
ね?と頭を傾げて、クダリは明るい笑顔をサクラに向ける。
「・・・・・・私は」
「クダリィィィィッ!」
サクラの声は凄い剣幕で現れたノボリによって遮られた。
「貴方と言う人はいつもいつも、勝手な事ばかりして!
しかも何です?お客様に私闘を申込むなどマスターとしてあるまじき行為ですよ」
クダリさん、サブウェイの外なら怒られないって言ってたのに凄く怒られてるじゃないですか・・・
そんな事を考えながらクダリを見れば、彼は口を尖らせ明らかに不機嫌な顔をしている。
「ノボリ今、マスターにあるまじきって言ったけどマスターがサブウェイの外でポケモンバトルしちゃ駄目なんて規則ない!」
「確かに規則にはありませんが常識的に考えれば分かる事でしょう!」
目の前で起こった双子の論争をサクラはただ唖然として見ていた。
その間にもポケモンバトルを見るために集まっていた観客は何時まで経っても始まらないバトルに痺れを切らして一人、また一人と帰っていく。
そんな彼等を羨ましく思いサクラは今だ言い争う二人に尋ねた。
「帰っても良いですか?」
「絶対駄目!」
「駄目でございます!」
さいですか、と両手を上げ肩を竦めたサクラは帰る事も許されず、いつの間にか手は解放されていたので取り敢えずその場に腰を下ろす。
「「サクラさん!」」
後ろからの強い衝撃に何事かと振り向けば不安げな顔のトウコとトウヤがいた。
「クダリさんに何もされてないですか?!」
「例えばセクハラとか!」
トウコの具体的なチョイスに苦笑いを浮かべたサクラは「大丈夫」と答える。
「セクハラはされてないから」
「"は"ってじゃあ何をされたんですか!?」
「バトルを申込まれちゃった」
「「えっ」」
「そしたらノボリさんがやって来てずっとこの状態なの」
互いの顔を見合わせ困惑の色を見せたトウコとトウヤに対して、サクラは笑っていた。
「帰っても良いか尋ねたら駄目って言われちゃうし、何時になったら帰れるんだろうねー」
「もう、ノボリ。さっきからしつこい!」
「しつこく物も言いたくなります。サブウェイの外とはいえ、一度施設をご利用なさったお客様にバトルを申込むなどマスターとして許される事ではありません」
「ノボリはずっとそればっかり!他に文句は無いわけ?」
クダリの挑発的な物言いにノボリの口角がひきつった。
「文句ですって?ええ、ありますとも!お客様の都合もいとわず己の欲求だけでバトルを申込「あ、都合とか無いんで大丈夫です」んで・・・?」
割り込まれた声にノボリもクダリも顔をそちらへと向ける。
声の方には小さく片手を挙げながらももう片方の手でお尻に付いた砂埃を払うサクラ。(その彼女の足元には「あわわわ」と何故か挙動不振なトウコとトウヤがいた)
「元々、バトルの挑戦者を募っていたのは私ですし。特に用事とかは無いんです」
「ですが」「じゃあ!」
納得していないノボリの声をクダリの声が掻き消す。
「僕とバトルしてくれる?!」
期待に満ちたクダリにサクラはゆっくりと頷いた。
バトルの申込が承諾されて、喜びのあまりサクラに抱き付こうとしたクダリを彼女は手を前に出して止める。
「その代わりに条件があります」
「・・・条件?」
「絶対に手を抜かないで下さい。
少しでも手加減したらどちらが勝っていようとそこでバトルは終了。
分かりましたか?」
サクラの出した条件をクダリは頷いて聞き入れた。
「手加減しない、本気のバトルする」
じゃあ、と言ったサクラはクダリの片手を掴んだ。
「じゃあ、始めましょう。
一切手抜き無しの楽しいバトルを」