双子と弁当屋の娘
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「ねえ、あそこで何かやってる!」
「分かりましたからそんなに服を引っ張らないで下さいまし!」
独特な喋り方に聞き覚えある声、サクラと格闘家のバトルを眺めていたトウコは何となく振り返った。
「ブハッ」
その見覚えのありすぎる姿にトウコは勢いあまって向かいに座っていたトウヤに口に含んでいたジュースを吹き掛けてしまう。
ぽたぽたと滴り落ちるオレンジの液体にトウヤの眉がぴくりと動く。
「トウコ・・・」
椅子から静かに立ち上がり、トウコの側迄移動したトウヤはグイッと彼女の胸ぐらを掴み持ち上げた。
トウヤは無言ながらも帽子の影から覗く目は少しどころかかなり怒っている。
それもその筈、トウコにジュースを吹き掛けられたのはこれで二度目なのだ。
見るからに怒ったトウヤにどうする事も出来ずトウコは「落ち着いて」と彼に言うのだが
「この状態で落ち着いていられると思う?」
それは藪蛇だった様で、顔からジュースを滴り落としたトウヤは笑みを浮かべた。
その清々しく真っ黒な笑みのトウヤにトウコは内心、かなり焦る。
何とかトウヤに機嫌を直してもらおうとトウコが取り出したのはモンスターボールで、中から出てきたランクルスに"あまごい"を命じた。
トウコの命令に一瞬『本当に良いの?』と顔をしたランクルスであるが双子の片割れに胸ぐらを掴まれた主人の状況に驚き、慌てて小さな雨雲を双子の頭上に出した。
小さな雨雲は音をたて、始めは弱く徐々に激しく双子の上から雨を降らす。
テレビで警報が出そうな程の激しい雨にトウコもトウヤも上から下までぐっしょりと濡れた。
そこで小さな雨雲は無くなり、トウヤはつかんでいたトウコの胸ぐらを離す。
「・・・トウコ、何か言うことは」
「ごめんなさい」
雨水をたっぷり吸い込んだ服は絞ればこれでもかと言わんばかりに水が出てきた。
どうやら先程の雨で怒りが冷めたらしいトウヤはトウコの謝罪を聴くと無言で自分の服を絞っている。
互いには無言なのは辛いがこうなった原因は自分にあるのでトウコも大人しく自分の服を絞っていた。
「・・・って、服を絞ってる場合じゃないの!」
トウコが大人しくしていたのは束の間で、彼女はトウヤの肩を掴む。
「ちょっ、さっきから何」
「私、見たのよ」
「何を」
「何をって」
答えようとした瞬間、トウコの声を観客の声が 掻き消した。
格闘家の無念な声が聴こえたのでまたサクラが勝った様だ。
「ごめん。今、何て言った?
聞こえなかった」
「だから、ここにノボリさんとクダリさんがいるの!!」
トウコが叫びにも似た瞬間。
トウヤが目を見開き、「あ、」と声を漏らした。
視線の先はトウコ、
「呼んだ?」
ではなく彼女の後ろにいたクダリ。
「確かに今、呼ばれましたね」
と、ノボリもいた。
「トウコもトウヤも昨日ぶり~」
トウコの肩に腕を回し軽く手を振るクダリに二人は固まる。
「こんな所でお会いになれるとは奇遇でございますね」
「そう、ですね」
寧ろ、その奇遇を恨みたい気分なトウヤの笑みはかなりひきつっていた。
「昨日はコートをわざわざ返しにきていただきありがとうございました」
ノボリが発した"コート"という単語にトウヤは内心、本題が来たなと思うのだが焦る心を落ち着かせ笑みを崩さないよう努める。
「いえ、バトルサブウェイに行くついでに頼まれたものですから」
「ほう、頼まれて
それは何方にですか?出来れば此方から直接お礼を言いたいと思っているのですが」
「いや、それは個人情報なので」
「私が思うにトウヤ様にコートを返すよう頼んだのは昨日のトレインに同乗していた彼女だと思うのですがどうでしょう?」
トウヤとしては話をさっさと終らしてこの場から逃げ出したいのにノボリがそれを許さなかった。
聞かれたくない事ばかりを聞いてくるノボリに返答出来ず、クダリに捕まったトウコにトウヤは助けを求めるのだがまるで先程の仕返しだと言わんばかりに目を逸らされる。
「どうしたの?」
「トウヤが自業自得だって話」
クダリのトウコの会話が聞こえ、トウコにトウヤを助ける意思が無いことが分かった。
「どうしましたトウヤ様、先程から顔色が優れないようですが」
なにくわぬ顔で此方を気遣うノボリにトウヤは誰のせいだよと心の中、恨み言を連ねる。
「ところで質問の答えはいつ頂けるのですか」
「答えなくちゃ駄目ですか?」
「そうですね。トウヤ様から答えを頂けないのなら・・・」
言いかけたノボリの首が後ろの方で行われているバトルに向けられた。
「彼女に直接、尋ねるしかないですね」
そう言ってる間にまたもバトルに集まった観客からは歓声があがる。
野太い男の悲痛な声が聴こえたので勝敗は言わずもがなサクラの勝利の様だ。
「それは、脅しですか?」
「私は別にトウヤ様を脅そうと思って言っているわけではないのですが私が彼女に尋ねる事でトウヤ様に不都合が生じるならばこれは脅しになるのかもしれませんね」
こう言う時って大人は汚いと思う。
彼女に尋ねたらどうなるか何て本当は分かってるくせに俺に喋らせようと敢えて選ばせる。
「大人ってずる賢くて汚ないね」
何てノボリさんに嫌味を言えば
「大人とは皆、こういう者なのでございます」
と返された。
絶対もう、大人何かにはなりたくないと思う。
「分かりましたからそんなに服を引っ張らないで下さいまし!」
独特な喋り方に聞き覚えある声、サクラと格闘家のバトルを眺めていたトウコは何となく振り返った。
「ブハッ」
その見覚えのありすぎる姿にトウコは勢いあまって向かいに座っていたトウヤに口に含んでいたジュースを吹き掛けてしまう。
ぽたぽたと滴り落ちるオレンジの液体にトウヤの眉がぴくりと動く。
「トウコ・・・」
椅子から静かに立ち上がり、トウコの側迄移動したトウヤはグイッと彼女の胸ぐらを掴み持ち上げた。
トウヤは無言ながらも帽子の影から覗く目は少しどころかかなり怒っている。
それもその筈、トウコにジュースを吹き掛けられたのはこれで二度目なのだ。
見るからに怒ったトウヤにどうする事も出来ずトウコは「落ち着いて」と彼に言うのだが
「この状態で落ち着いていられると思う?」
それは藪蛇だった様で、顔からジュースを滴り落としたトウヤは笑みを浮かべた。
その清々しく真っ黒な笑みのトウヤにトウコは内心、かなり焦る。
何とかトウヤに機嫌を直してもらおうとトウコが取り出したのはモンスターボールで、中から出てきたランクルスに"あまごい"を命じた。
トウコの命令に一瞬『本当に良いの?』と顔をしたランクルスであるが双子の片割れに胸ぐらを掴まれた主人の状況に驚き、慌てて小さな雨雲を双子の頭上に出した。
小さな雨雲は音をたて、始めは弱く徐々に激しく双子の上から雨を降らす。
テレビで警報が出そうな程の激しい雨にトウコもトウヤも上から下までぐっしょりと濡れた。
そこで小さな雨雲は無くなり、トウヤはつかんでいたトウコの胸ぐらを離す。
「・・・トウコ、何か言うことは」
「ごめんなさい」
雨水をたっぷり吸い込んだ服は絞ればこれでもかと言わんばかりに水が出てきた。
どうやら先程の雨で怒りが冷めたらしいトウヤはトウコの謝罪を聴くと無言で自分の服を絞っている。
互いには無言なのは辛いがこうなった原因は自分にあるのでトウコも大人しく自分の服を絞っていた。
「・・・って、服を絞ってる場合じゃないの!」
トウコが大人しくしていたのは束の間で、彼女はトウヤの肩を掴む。
「ちょっ、さっきから何」
「私、見たのよ」
「何を」
「何をって」
答えようとした瞬間、トウコの声を観客の声が 掻き消した。
格闘家の無念な声が聴こえたのでまたサクラが勝った様だ。
「ごめん。今、何て言った?
聞こえなかった」
「だから、ここにノボリさんとクダリさんがいるの!!」
トウコが叫びにも似た瞬間。
トウヤが目を見開き、「あ、」と声を漏らした。
視線の先はトウコ、
「呼んだ?」
ではなく彼女の後ろにいたクダリ。
「確かに今、呼ばれましたね」
と、ノボリもいた。
「トウコもトウヤも昨日ぶり~」
トウコの肩に腕を回し軽く手を振るクダリに二人は固まる。
「こんな所でお会いになれるとは奇遇でございますね」
「そう、ですね」
寧ろ、その奇遇を恨みたい気分なトウヤの笑みはかなりひきつっていた。
「昨日はコートをわざわざ返しにきていただきありがとうございました」
ノボリが発した"コート"という単語にトウヤは内心、本題が来たなと思うのだが焦る心を落ち着かせ笑みを崩さないよう努める。
「いえ、バトルサブウェイに行くついでに頼まれたものですから」
「ほう、頼まれて
それは何方にですか?出来れば此方から直接お礼を言いたいと思っているのですが」
「いや、それは個人情報なので」
「私が思うにトウヤ様にコートを返すよう頼んだのは昨日のトレインに同乗していた彼女だと思うのですがどうでしょう?」
トウヤとしては話をさっさと終らしてこの場から逃げ出したいのにノボリがそれを許さなかった。
聞かれたくない事ばかりを聞いてくるノボリに返答出来ず、クダリに捕まったトウコにトウヤは助けを求めるのだがまるで先程の仕返しだと言わんばかりに目を逸らされる。
「どうしたの?」
「トウヤが自業自得だって話」
クダリのトウコの会話が聞こえ、トウコにトウヤを助ける意思が無いことが分かった。
「どうしましたトウヤ様、先程から顔色が優れないようですが」
なにくわぬ顔で此方を気遣うノボリにトウヤは誰のせいだよと心の中、恨み言を連ねる。
「ところで質問の答えはいつ頂けるのですか」
「答えなくちゃ駄目ですか?」
「そうですね。トウヤ様から答えを頂けないのなら・・・」
言いかけたノボリの首が後ろの方で行われているバトルに向けられた。
「彼女に直接、尋ねるしかないですね」
そう言ってる間にまたもバトルに集まった観客からは歓声があがる。
野太い男の悲痛な声が聴こえたので勝敗は言わずもがなサクラの勝利の様だ。
「それは、脅しですか?」
「私は別にトウヤ様を脅そうと思って言っているわけではないのですが私が彼女に尋ねる事でトウヤ様に不都合が生じるならばこれは脅しになるのかもしれませんね」
こう言う時って大人は汚いと思う。
彼女に尋ねたらどうなるか何て本当は分かってるくせに俺に喋らせようと敢えて選ばせる。
「大人ってずる賢くて汚ないね」
何てノボリさんに嫌味を言えば
「大人とは皆、こういう者なのでございます」
と返された。
絶対もう、大人何かにはなりたくないと思う。