双子と弁当屋の娘
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『ちょっとは元気が出たみたいだな』
晴々とは言わないが少しすっきりしたサクラの横顔にゾロアークは呟く。
その呟きが聴こえたのか、サクラは少し嫌味に「おかげ様で」と笑った。
「誰かさんが昨日、私を置き去りにしたおかげで?あの子達とたっぷり遊んで嫌なものを発散しましたから」
『なら良いじゃんか』
そう怒るなよと、ゾロアークはぷにぷにとした柔らかなゾロアの肉球でサクラの頬をつつく。
思わずその魅惑的な感触にほだかされそうになるサクラ。
「私は、肉球何かに、負けません!」
だが既にゾロアークの肉球で頬っぺたぷにぷに攻撃にサクラの口角は緩んできていた。
『口調がおかしいぞ』
「気のせいよ。
私は肉球に屈しは『今なら肉球触り放題』・・・」
ゾロアークの呟きにサクラの目が光った。
前足を片方掴んでサクラは「その話、乗った!」と声をあげてピンク色の肉球を連打し始める。
ぷにぷにぷにぷに
と、まるで何かに憑かれたかの様に一心不乱で肉球を連打するサクラ。
自分で言い出した事なので始めは我慢していたゾロアークだったが肉球を押される度に体に走る不快感とむず痒さ。
それにだんだんと耐えきれなくなったゾロアークは結局前足を掴むサクラの手を振りほどき蹴飛ばした。
「ぐはっ」
「・・・何をやっとんだか」
「やはりこのコートは彼女が着ていた物で間違い無いようです」
ノボリはビニールに包まれた赤いコートを自分の机へと投げる。
「じゃあ、コートを渡したトウヤが噂の赤マス?」
「それは・・・無いかと
トウヤ様は私にコートを渡す際
"確かにその服お返ししましたから"
と、まるで誰かに頼まれていたかの様な口振りでした」
「でもその言い方ならトウヤ本人が借りていた風にも聞こえる」
凭れた椅子を揺らし、音を立てたクダリをノボリは見つめ溜め息一つ。
そのあからさまに自分を馬鹿にしたかの様な反応にクダリはムッとした。
「では、クダリは想像出来るのですか?
トウヤ様がスカートを穿いてバトルする姿を」
目撃者の話では赤マスは小柄でスカートを穿いていたと聞く。
まだ成長期の途中であるトウヤなら小柄という証言にピッタリと当てはまるのだがスカートを穿いていたとなるとどうだろう。
「うん、無理。
トウヤには悪いけど余り想像もしたくないね」
スカートを穿いていたという事で赤マスの性別は女性と(巷では"男の娘"なるモノが流行っているらしいがそれでは男の娘以外の可能性も出てくるのでここは割愛)考えられる。
「じゃあ、トウコ?」
「そうですね。
トウコ様は素晴らしい実力がありますから可能性としてあり得ます。ですがトウヤ様は返す際にこのコートが"彼女"の手掛かりともなると言っておりました」
「彼女・・・赤いフードの女の子!」
「そうです」
彼女の話題になった途端、クダリの表情が輝いた。
「昨日のあの子!凄かったね。
ポケモンはしっかり育てられてるみたいだしごり押しに見えて意外に考えてるんだもん」
「ええ、昨日のバトルは久し振りにブラボーなものでした」
お客の常連化、バトルのマンネリにそろそろ飽きていた二人には昨日のバトルがそれはもう素晴らしく感じた。
一日置いたにも関わらず興奮冷めきらぬ二人。
彼女とまたバトルをしたいとクダリは呟くのだが、その願いは今のところ叶いそうにない。
「あの子、スーパーマルチの切符を受け取ってくれなかった」
彼女が下車する際にクダリはスーパーマルチトレインに挑戦出来る切符を彼女に渡そうとしたのだが、彼女は無表情でそれを押し返した。
何を言うわけでもなく彼女は終始無言であったがそれは明らかな拒絶。
彼女の態度に彼女と一緒に来ていたトウコとトウヤは自分達が原因で彼女を不快にさせてしまったのだと言った。
「私達の何が彼女を不快な気持ちにさせてしまったのでしょう」
二人同時についた溜め息。
普段は笑っているクダリもこの時ばかりはノボリの様に口角が下がっていた。
「こんな事なら彼女に本気出して戦えば良かったな」
クダリが見るに昨日の彼女はまだ本気の力は出していない。
借りに昨日の彼女がバトルに実力の半分を出していたとして、その半分で充分楽しみ興奮出来たのにそれが倍となったなら一体どうなるのか。
もはや、クダリの思いは後悔だ。
「それは出来ませんよクダリ」
いくらバトルサブウェイがバトル施設であっても客商売なのは変わらない。
"スーパー"を冠さないトレインでは原則マスターが本気を出さない事を決められている。
借りにマスターが20勝を終えた挑戦者と本気で戦ったとして、
挑戦者が負ければその圧倒的マスターの実力に恐れ慄き、もう挑戦しないかも知れない。
逆にマスターが負け、挑戦者が買った場合はその勝利に満足してやはり上記と同様に挑戦しにこないかもしれない。
それでは困るのだ。
商売をしている以上、お客が来ないというのはあってはならない事。
バトルサブウェイではそうならないために"スーパー"と冠するトレインと冠さないトレインを置いた。
"スーパー"と冠するトレインには本気を出すマスターを49戦目に置いて主に常連客向けに
冠さないトレインには負けても次は勝てるかもと挑戦者に変な自信を与える程度にマスターには手加減させていた。
結局、クダリのマルチトレインに乗ってきた彼女と本気でバトルすれば良かったと言うのは彼がバトルサブウェイのマスターでいる限り無理な話という事。
「分かってる。言ってみただけ」
それはクダリも重々承知している。
「だけど」
そんな事を言ってみたくなるほど彼女とのバトルは素晴らしかった。
「ノボリは思わなかった?
あの子と本気のバトルをしたいって」
「それは・・・私も思いました」
「でしょ!」
「ですが決まりは決まりでございます」
彼女に手加減した事に後悔はないと言った感じのノボリにクダリは小さく「ノボリの石頭」と呟く。
それが彼の耳に届いたのか、鋭い眼光で
「何かいいましたか」
と睨むので、クダリは慌てて首を振り否定した。
「僕、何も言ってない。
今日はお客さんが少ないねって言った!」
「そう言えばそうですね」
クダリの咄嗟の嘘にノボリの意識もそちらに移った。
何時もなら既に二人とも挑戦者に引っ張りだこなのに今日はまだ数える程しか呼ばれていない。
「外で何か催されているのでしょうか」
「お祭り?パレード?僕も行きたい!」
あくまでノボリが言ったのは「かもしれない」という仮定の話なのに既にクダリは乗り気だった。
「お祭り何て・・・朝、出勤した時は何時もと変わらないライモンだった筈です」
それはない、と自ら立てた仮定を否定したノボリにクダリは「じゃあ」と提案した。
「お昼の時に外で何かしてるのか調べに行こうよ」
「たまたま今日はお客様が少ない日なだけで何もないと思いますが」
あまり乗り気ではないノボリを、クダリはそれでも諦めず誘う。
「ねー外に出てみようよ」
ねーねーともうそれがクダリの鳴き声なんじゃないかと思えてしまうほどねーねーと言い続けたクダリにノボリがとうとう折れた。
「分かりました。では昼の休憩時に外へ出てみましょう」
ノボリを誘う事に成功したクダリは両手を挙げて喜ぶのだがノボリが「そのかわり」と言葉を続ける。
「まだ昼の休憩迄時間はたっぷりとあります。
休憩に入る前に今日、提出の書類全て仕上げて下さいまし」
「げっ」
「全て完璧に出来ていればクダリの誘いに同行しましょう」
ノボリの出した交換条件にクダリは自分の机に山となった書類とノボリを見比べた。
その二つを何度か見比べて覚悟を決める。
「僕、書類頑張る」
晴々とは言わないが少しすっきりしたサクラの横顔にゾロアークは呟く。
その呟きが聴こえたのか、サクラは少し嫌味に「おかげ様で」と笑った。
「誰かさんが昨日、私を置き去りにしたおかげで?あの子達とたっぷり遊んで嫌なものを発散しましたから」
『なら良いじゃんか』
そう怒るなよと、ゾロアークはぷにぷにとした柔らかなゾロアの肉球でサクラの頬をつつく。
思わずその魅惑的な感触にほだかされそうになるサクラ。
「私は、肉球何かに、負けません!」
だが既にゾロアークの肉球で頬っぺたぷにぷに攻撃にサクラの口角は緩んできていた。
『口調がおかしいぞ』
「気のせいよ。
私は肉球に屈しは『今なら肉球触り放題』・・・」
ゾロアークの呟きにサクラの目が光った。
前足を片方掴んでサクラは「その話、乗った!」と声をあげてピンク色の肉球を連打し始める。
ぷにぷにぷにぷに
と、まるで何かに憑かれたかの様に一心不乱で肉球を連打するサクラ。
自分で言い出した事なので始めは我慢していたゾロアークだったが肉球を押される度に体に走る不快感とむず痒さ。
それにだんだんと耐えきれなくなったゾロアークは結局前足を掴むサクラの手を振りほどき蹴飛ばした。
「ぐはっ」
「・・・何をやっとんだか」
「やはりこのコートは彼女が着ていた物で間違い無いようです」
ノボリはビニールに包まれた赤いコートを自分の机へと投げる。
「じゃあ、コートを渡したトウヤが噂の赤マス?」
「それは・・・無いかと
トウヤ様は私にコートを渡す際
"確かにその服お返ししましたから"
と、まるで誰かに頼まれていたかの様な口振りでした」
「でもその言い方ならトウヤ本人が借りていた風にも聞こえる」
凭れた椅子を揺らし、音を立てたクダリをノボリは見つめ溜め息一つ。
そのあからさまに自分を馬鹿にしたかの様な反応にクダリはムッとした。
「では、クダリは想像出来るのですか?
トウヤ様がスカートを穿いてバトルする姿を」
目撃者の話では赤マスは小柄でスカートを穿いていたと聞く。
まだ成長期の途中であるトウヤなら小柄という証言にピッタリと当てはまるのだがスカートを穿いていたとなるとどうだろう。
「うん、無理。
トウヤには悪いけど余り想像もしたくないね」
スカートを穿いていたという事で赤マスの性別は女性と(巷では"男の娘"なるモノが流行っているらしいがそれでは男の娘以外の可能性も出てくるのでここは割愛)考えられる。
「じゃあ、トウコ?」
「そうですね。
トウコ様は素晴らしい実力がありますから可能性としてあり得ます。ですがトウヤ様は返す際にこのコートが"彼女"の手掛かりともなると言っておりました」
「彼女・・・赤いフードの女の子!」
「そうです」
彼女の話題になった途端、クダリの表情が輝いた。
「昨日のあの子!凄かったね。
ポケモンはしっかり育てられてるみたいだしごり押しに見えて意外に考えてるんだもん」
「ええ、昨日のバトルは久し振りにブラボーなものでした」
お客の常連化、バトルのマンネリにそろそろ飽きていた二人には昨日のバトルがそれはもう素晴らしく感じた。
一日置いたにも関わらず興奮冷めきらぬ二人。
彼女とまたバトルをしたいとクダリは呟くのだが、その願いは今のところ叶いそうにない。
「あの子、スーパーマルチの切符を受け取ってくれなかった」
彼女が下車する際にクダリはスーパーマルチトレインに挑戦出来る切符を彼女に渡そうとしたのだが、彼女は無表情でそれを押し返した。
何を言うわけでもなく彼女は終始無言であったがそれは明らかな拒絶。
彼女の態度に彼女と一緒に来ていたトウコとトウヤは自分達が原因で彼女を不快にさせてしまったのだと言った。
「私達の何が彼女を不快な気持ちにさせてしまったのでしょう」
二人同時についた溜め息。
普段は笑っているクダリもこの時ばかりはノボリの様に口角が下がっていた。
「こんな事なら彼女に本気出して戦えば良かったな」
クダリが見るに昨日の彼女はまだ本気の力は出していない。
借りに昨日の彼女がバトルに実力の半分を出していたとして、その半分で充分楽しみ興奮出来たのにそれが倍となったなら一体どうなるのか。
もはや、クダリの思いは後悔だ。
「それは出来ませんよクダリ」
いくらバトルサブウェイがバトル施設であっても客商売なのは変わらない。
"スーパー"を冠さないトレインでは原則マスターが本気を出さない事を決められている。
借りにマスターが20勝を終えた挑戦者と本気で戦ったとして、
挑戦者が負ければその圧倒的マスターの実力に恐れ慄き、もう挑戦しないかも知れない。
逆にマスターが負け、挑戦者が買った場合はその勝利に満足してやはり上記と同様に挑戦しにこないかもしれない。
それでは困るのだ。
商売をしている以上、お客が来ないというのはあってはならない事。
バトルサブウェイではそうならないために"スーパー"と冠するトレインと冠さないトレインを置いた。
"スーパー"と冠するトレインには本気を出すマスターを49戦目に置いて主に常連客向けに
冠さないトレインには負けても次は勝てるかもと挑戦者に変な自信を与える程度にマスターには手加減させていた。
結局、クダリのマルチトレインに乗ってきた彼女と本気でバトルすれば良かったと言うのは彼がバトルサブウェイのマスターでいる限り無理な話という事。
「分かってる。言ってみただけ」
それはクダリも重々承知している。
「だけど」
そんな事を言ってみたくなるほど彼女とのバトルは素晴らしかった。
「ノボリは思わなかった?
あの子と本気のバトルをしたいって」
「それは・・・私も思いました」
「でしょ!」
「ですが決まりは決まりでございます」
彼女に手加減した事に後悔はないと言った感じのノボリにクダリは小さく「ノボリの石頭」と呟く。
それが彼の耳に届いたのか、鋭い眼光で
「何かいいましたか」
と睨むので、クダリは慌てて首を振り否定した。
「僕、何も言ってない。
今日はお客さんが少ないねって言った!」
「そう言えばそうですね」
クダリの咄嗟の嘘にノボリの意識もそちらに移った。
何時もなら既に二人とも挑戦者に引っ張りだこなのに今日はまだ数える程しか呼ばれていない。
「外で何か催されているのでしょうか」
「お祭り?パレード?僕も行きたい!」
あくまでノボリが言ったのは「かもしれない」という仮定の話なのに既にクダリは乗り気だった。
「お祭り何て・・・朝、出勤した時は何時もと変わらないライモンだった筈です」
それはない、と自ら立てた仮定を否定したノボリにクダリは「じゃあ」と提案した。
「お昼の時に外で何かしてるのか調べに行こうよ」
「たまたま今日はお客様が少ない日なだけで何もないと思いますが」
あまり乗り気ではないノボリを、クダリはそれでも諦めず誘う。
「ねー外に出てみようよ」
ねーねーともうそれがクダリの鳴き声なんじゃないかと思えてしまうほどねーねーと言い続けたクダリにノボリがとうとう折れた。
「分かりました。では昼の休憩時に外へ出てみましょう」
ノボリを誘う事に成功したクダリは両手を挙げて喜ぶのだがノボリが「そのかわり」と言葉を続ける。
「まだ昼の休憩迄時間はたっぷりとあります。
休憩に入る前に今日、提出の書類全て仕上げて下さいまし」
「げっ」
「全て完璧に出来ていればクダリの誘いに同行しましょう」
ノボリの出した交換条件にクダリは自分の机に山となった書類とノボリを見比べた。
その二つを何度か見比べて覚悟を決める。
「僕、書類頑張る」