双子と弁当屋の娘
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「聞いた話何だけど」
というトウコの話の振りにサクラは「何?」と尋ねた。
「バトルサブウェイに"赤マス"何て言うのが出たんだって」
「ふ~ん」
バトルサブウェイにそんな興味がないサクラは彼女の話を適当に聞きながらボールの中の生クリームを混ぜる。
「あ、それ、俺も聞いた」
リビングでポケモン達と戯れていたトウヤもやってきてカウンターに凭れた。
同じ顔の二人が同じ体勢で話す姿は何ともシュールでまるで合わせ鏡のよう。
「なんでも赤いサブウェイマスターの衣装に身を包み」
「イッシュじゃ珍しいポケモンを使い戦う」
「電車の中にも関わらずラッキーやカイリューにはかいこうせんを命じるって」
「どう考えても」
「「サクラさんじゃない/じゃん」」
双子は同じ顔をしてサクラを見るのだが、サクラ本人は素知らぬ顔でケーキを作っている。
「ん?何の事」
極め付きには話を聞いていなかったという笑顔。
だがサクラとそれなりに付き合いがある双子にはその笑顔が不自然で、トウコが「しらばっくれんじゃねえぞ!」とドラマに出てくるベテラン刑事の様な台詞を吐いてカウンターを叩いた。
「証拠は上がってるんですよサクラさん」
トウコに便乗してトウヤもドラマの刑事の様な口調で話出す。
「証拠?ていうか、二人共その口調どうしたの」
「バトルサブウェイの常連さんに聞いたらこんな証言を貰ったの
"赤マスは特殊能力を持ったメタモンを使う"
って」
サクラの言葉を無視し、話すトウコにトウヤも続く。
「そのメタモンって言うのが目の前のポケモンに変身せずに主人の命令に応じたポケモンに変身するらしい」
「常連さん達は変身=メタモンって思ってるみたいだけど私達はメタモンじゃないと思う」
「・・・何故?」
「俺達は"主人の命令に応じたポケモンに変身"するポケモンをメタモン以外に知っているから」
そう言って双子が指を指したのはケーキに塗られた生クリームをつまみ食いするゾロア。
正しくはゾロアに"化けた"ゾロアークだろうか。
「サクラさんのゾロアークは命令に応じて色々なポケモンに化けるし」
「サクラさんはラッキーもカイリューも持ってる」
「これほど証言と一致した人間を疑わずしてどうする!て感じ」
双子の推理にサクラは溜め息をつくと、椅子を引っ張り出して腰を下ろした。
腕と足を組み厨房の机に背中を預けたサクラは二度目の溜め息。
双子を横目に捉え、「で?」と尋ねる。
「「え?」」
「私がその赤マスだとして貴方達二人は一体何が望みなの
二人が調べて迄態々そんな話をするんだから何か目的があるんでしょ」
望みを叶える叶えないは別にして話すよう促せばトウコがにんまりと笑う。
因みにトウヤもにんまりと迄はいかないが意地の悪い笑みを浮かべていた。
「流石サクラさん!話が早い!」
「俺達とポケモンバト「却下」ル」
ケーキに使おうとして余った苺を摘み口に入れる。
口の中に広がる苺の甘味と酸味を堪能しながら咀嚼していればカウンターの方から非難の嵐。
「サクラさんのケチーポケモンバトル位良いじゃない!」
「不特定多数の他人とはして、俺達とはしてくれないんですか?」
「私はケチだし、お金にならないバトルはしません」
あー五月蝿いと片手で片耳を塞いだサクラはケーキを冷蔵庫にしまい、お茶の準備を始めた。
紅茶が二つに緑茶が一つ。
「私達だってバトルに負けた時はちゃんとお金を払います」
「私はケチでお金が好きだけど年下からお金を巻き上げる程外道じゃありません」
盆にカップを三つ乗せて厨房を出たサクラは双子がいるリビングに出て、卓袱台にカップを下ろした。
卓袱台を前に腰を下ろしたサクラに集まるよう双子もカウンターから卓袱台に移動する。
「それに二人とは一回、バトルしたじゃない」
ほら、二人と初めて会った時と話せばトウコは首を横に振った。
「あれは私達が不意討ちで襲ったものだからノーカウントです」
「この外道共め・・・」
沸々と沸き上がる怒りを抑え込みながらサクラは緑茶を一口。
トウヤが先程から静かなので様子を見れば何処か神妙な面持ちで紅茶のカップを見つめていた。
「トウヤ君どうしたの?もしかして紅茶苦手だった?」
尋ねれば、彼を首を横に振り否定する。
「なら、」
「ケーキ」
「は?「あーそうですよケーキ!ケーキ!」」
急にバトルからケーキに話題を変える双子にサクラは困惑した。
「さっきこれ見よがしにケーキ作ってたのにケーキがない」
どういう事なの!とトウコは卓袱台を叩く。
連絡も無しに勝手に家に上がり、寛いでいた二人。
それだけじゃなしに茶菓子を催促し出す二人にサクラは頭が痛くなるのを感じる。
「・・・あれは夕飯のデザートなの。
どうせすぐ夕飯になるんだから我慢して」
「分かった」
「じゃあ、俺達とバトルして?」
「何がじゃあなの!なにが!」
今度はサクラが勢いよく卓袱台を叩いた。
先程から続く終わりの見えない会話に嫌気が指してきたサクラは双子に"赤マス"となってしまった経緯を説明する。
「あれは所長さんに頼まれたアルバイトだったの
頼んできたのが所長さんじゃなかったあの仕事は絶対に断っていたし、お金を稼ぐ時にしかバトルはしない」
「だから負けた時は」
「自分より年下からはお金を巻き上げないってさっきも言ったでしょ?」
サクラの追撃に双子は黙り込んでしまった。
「何で私なんかとバトルしたがるのかなぁ・・・」
まるで理解出来ないと言った風のサクラに双子目を見開き大袈裟に驚いた顔をする。
「そのわざとらしい顔止めてよ」
一人なら未だしもよく似た二人が同じ顔をするものだから妙な迫力があった。
「だって、」
「それ、本気で言ってるの」
信じられないと言う二人にサクラは取り敢えず頷く。
「ゾロアーク一匹で各地方のジムを荒らしに荒らし」
「四天王どころかチャンピオンも倒し」
「"出稼ぎ"と称して何度もジムリーダーやチャンピオンに挑むも負け無し」
「そんな最強すぎる人を目の前にしてバトルを申し込まないバトル廃人がいますか?」
「いたとしてもそいつは廃人と名乗れない」
だから、と二人は卓袱台から体を乗り出しサクラの手を掴む。
「俺と」
「私と」
「「ポケモンバトルしてよ」」
「だが、断る」