双子と弁当屋の娘
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サクラは自分の手を見つめ、
恨めしげに"チョキ"の手を睨んだ。
『じゃんけんに勝って奢って貰ったんだ。別に良いじゃねぇか』
頭に乗ったゾロアークはそう言って欠伸を一つ。
だが、サクラはゾロアークに言われても納得していない。
「そういう問題じゃない」
らしい。
視線を喫茶店の中へ向ければ、硝子窓の向こうでノボリが会計をしている姿が見える。
「あそこで"グー"を出してれば」
後悔先に立たず、悔やんでももう遅く仕方のない事。
後悔の少し前にサクラもノボリと同様にお会計の位置に立っていた。
「お会計870円になります」
珈琲とクリームソーダを合わせての合計金額を告げた店員にサクラは今更「会計を別に」なんて言える筈もなく、財布からお札を一枚取り出す。
そっと置けば何故かお札は二枚、一枚はノボリが置いたものだった。
「サクラ様、ここは私が」
喫茶店に入ろうと誘ったのは自分だから、支払いも自分がというノボリにサクラは首を振る。
「私が頼んだものの方が高いのに支払わせるなんて出来ません」
サクラが頼んだのはクリームソーダ、ノボリが頼んだのは珈琲でその金額差は200円を越えていた。
「だから」
「ですが」
「あの、」
終わらぬ不毛な争いに鶴の一声。
二人のやり取りを見ていた店員が小さく手を挙げて
「ここはもうじゃんけんで決めては?」
店員の思わぬ提案に二人は顔を見合わせ、構えた。
「では負けた方が支払うという事でどうでしょう」
「良いですね。じゃあ」
「「じゃんけん・・・」」
ぽん、という掛け声にチョキを出すサクラ。
ノボリはパーを出していてじゃんけんはサクラの勝ちだった。
その結果に負けたにも関わらず満足気なノボリは余分だったお札をサクラに渡すと「私がお支払しますので」と店からサクラを出した。
じゃんけんに勝った筈なのにこの敗北感は何なのか溜め息をついていればゾロアークが大きな声でサクラの名を呼んだ。
だが、一歩踏み出していた足はゾロアークの声に反応が出来ず地面へ下りる。
ぐにゅ
そんな擬音が聴こえそうな軟らかさだった。
地面が軟らかいなと考えていれば前方からはただならぬオーラ。
これは、ヤバイ
とサクラは直感的に悟った。
顔を上げれば見覚えある顔で、サクラの顔は思わず苦笑いになる。
「お前・・・」
「さっきはどうも」
サクラが足を踏んづけたのは喫茶店に入る前に蹴り飛ばした不良さんでした。
不良男はサクラが先程、自分を蹴り飛ばした奴だと認識するや、顔が歪んだ。
サクラは踏んでいた彼の足から自分の足を退けて後退するのだが、男はサクラの腕を掴み力任せに引寄せた。
「さっきはよくも俺の顔を蹴り飛ばしてくれたな」
そう言った俺の右頬には痛々しい靴の跡。
「・・・お兄さんがしつこく私に絡むからですよ」
顔を背けて言ったサクラはこの男に路地裏で所謂ナンパをされた。
「君、可愛いね」から始まりくだらない話で間を埋めて最後には「俺と何処かに行かない?」と男がサクラの腕を掴み、引っ張ったのは表通りからかなり離れた場所にあるホテル街。
始めは軽い抵抗だったサクラもぐいぐい自分を引っ張る男に少しの危機感を覚え、抵抗を強めたのだがそれを男は力ずくで押さえつけようとして逆にサクラに蹴り飛ばされた。
まさかまたこんな所で会うとは、それは二人が思ったに違いない。
「はぁ?まあ、良い。
せっかくまた会ったんだ。顔の慰謝料きっちり払ってもらうぜ」
男はそう言うとまたも懲りずにサクラの腕をぐいぐいと引っ張る。
それにサクラは「止めて」と抵抗するのだが所詮は女の力。
サクラの抵抗は虚しく、片腕を掴まれるだけでなくもう一方の腕も掴まれてしまった。
「離して下さい」
「離せと言われて離す馬鹿がいるかよ」
それもそうだとサクラも自分で言っておいて思う。
それでもこのまま連れていかれては困るので抵抗していれば男は舌打ちをしてモンスターボールを握った。
赤い光線と共に姿を現したズルズキンはその垂れた尾を引き摺りながらも格闘ポケモンらしく構える。
「ゾロアーク、」
現れたズルズキンに対応すべく今まで威嚇ばかりだったゾロアークに声をかけるのだが、瞬間に腕を引かれて首元に冷たいものが宛がわられた。
「大人しくしろ」
それはナイフだった。
サクラの首元で光るナイフにゾロアークは動きを止め男を睨みつける。
だがサクラにナイフが突き付けられている以上ゾロアークは下手に動く事が出来ない。
男はそんなゾロアークを笑った。
「大人しくしてろよ。少しでも怪しい動きをしたら首が切れるぞ」
それはサクラに言っているのかゾロアークに言っているのか、どちらかは分からないが男の目は本気だ。
ギラギラと目を鈍く輝かせた男は楽しげに「慰謝料はどうやって払ってもらおうか」等と話している。
「俺の顔を傷付けたんだ。金だけじゃ済まされないぞ」
男の手がサクラの足へと伸びる。
抵抗しようにもナイフを喉元に近付けられてはサクラもゾロアークも動けない。
「ギギギアル"ギアソーサー"です」
その声と同時に歯車が男とズルズキン目掛けて飛んできた。
勢いのある歯車にズルズキンは何とか避けるもナイフを持つ男は避けられず直撃する。
サクラから手を離し、道の向こう側に迄飛ばされた男。
ズルズキンは飛ばされた主人の元へ慌てて駆け寄った。
何が起こったのか分からず立ち尽くすサクラの頭をゾロアークが叩く。
『あそこ』
彼が指す方向を見れば一瞬にして視界が真っ暗に、もう夜になったのか
「サクラ様大丈夫でございますか」
違う。
「お怪我はありませんか?」
辺りが真っ暗になったかと思ったらそれはノボリさんのコートで、手袋を嵌めた彼の白い手が私の頬を包んでいた。
視界に色が戻ったかと思ったらまた黒一色。
「ナイフを突き付けられた姿を見た時は心臓が止まる思いでした」
私は今、ノボリさんに抱きしめられている。
恨めしげに"チョキ"の手を睨んだ。
『じゃんけんに勝って奢って貰ったんだ。別に良いじゃねぇか』
頭に乗ったゾロアークはそう言って欠伸を一つ。
だが、サクラはゾロアークに言われても納得していない。
「そういう問題じゃない」
らしい。
視線を喫茶店の中へ向ければ、硝子窓の向こうでノボリが会計をしている姿が見える。
「あそこで"グー"を出してれば」
後悔先に立たず、悔やんでももう遅く仕方のない事。
後悔の少し前にサクラもノボリと同様にお会計の位置に立っていた。
「お会計870円になります」
珈琲とクリームソーダを合わせての合計金額を告げた店員にサクラは今更「会計を別に」なんて言える筈もなく、財布からお札を一枚取り出す。
そっと置けば何故かお札は二枚、一枚はノボリが置いたものだった。
「サクラ様、ここは私が」
喫茶店に入ろうと誘ったのは自分だから、支払いも自分がというノボリにサクラは首を振る。
「私が頼んだものの方が高いのに支払わせるなんて出来ません」
サクラが頼んだのはクリームソーダ、ノボリが頼んだのは珈琲でその金額差は200円を越えていた。
「だから」
「ですが」
「あの、」
終わらぬ不毛な争いに鶴の一声。
二人のやり取りを見ていた店員が小さく手を挙げて
「ここはもうじゃんけんで決めては?」
店員の思わぬ提案に二人は顔を見合わせ、構えた。
「では負けた方が支払うという事でどうでしょう」
「良いですね。じゃあ」
「「じゃんけん・・・」」
ぽん、という掛け声にチョキを出すサクラ。
ノボリはパーを出していてじゃんけんはサクラの勝ちだった。
その結果に負けたにも関わらず満足気なノボリは余分だったお札をサクラに渡すと「私がお支払しますので」と店からサクラを出した。
じゃんけんに勝った筈なのにこの敗北感は何なのか溜め息をついていればゾロアークが大きな声でサクラの名を呼んだ。
だが、一歩踏み出していた足はゾロアークの声に反応が出来ず地面へ下りる。
ぐにゅ
そんな擬音が聴こえそうな軟らかさだった。
地面が軟らかいなと考えていれば前方からはただならぬオーラ。
これは、ヤバイ
とサクラは直感的に悟った。
顔を上げれば見覚えある顔で、サクラの顔は思わず苦笑いになる。
「お前・・・」
「さっきはどうも」
サクラが足を踏んづけたのは喫茶店に入る前に蹴り飛ばした不良さんでした。
不良男はサクラが先程、自分を蹴り飛ばした奴だと認識するや、顔が歪んだ。
サクラは踏んでいた彼の足から自分の足を退けて後退するのだが、男はサクラの腕を掴み力任せに引寄せた。
「さっきはよくも俺の顔を蹴り飛ばしてくれたな」
そう言った俺の右頬には痛々しい靴の跡。
「・・・お兄さんがしつこく私に絡むからですよ」
顔を背けて言ったサクラはこの男に路地裏で所謂ナンパをされた。
「君、可愛いね」から始まりくだらない話で間を埋めて最後には「俺と何処かに行かない?」と男がサクラの腕を掴み、引っ張ったのは表通りからかなり離れた場所にあるホテル街。
始めは軽い抵抗だったサクラもぐいぐい自分を引っ張る男に少しの危機感を覚え、抵抗を強めたのだがそれを男は力ずくで押さえつけようとして逆にサクラに蹴り飛ばされた。
まさかまたこんな所で会うとは、それは二人が思ったに違いない。
「はぁ?まあ、良い。
せっかくまた会ったんだ。顔の慰謝料きっちり払ってもらうぜ」
男はそう言うとまたも懲りずにサクラの腕をぐいぐいと引っ張る。
それにサクラは「止めて」と抵抗するのだが所詮は女の力。
サクラの抵抗は虚しく、片腕を掴まれるだけでなくもう一方の腕も掴まれてしまった。
「離して下さい」
「離せと言われて離す馬鹿がいるかよ」
それもそうだとサクラも自分で言っておいて思う。
それでもこのまま連れていかれては困るので抵抗していれば男は舌打ちをしてモンスターボールを握った。
赤い光線と共に姿を現したズルズキンはその垂れた尾を引き摺りながらも格闘ポケモンらしく構える。
「ゾロアーク、」
現れたズルズキンに対応すべく今まで威嚇ばかりだったゾロアークに声をかけるのだが、瞬間に腕を引かれて首元に冷たいものが宛がわられた。
「大人しくしろ」
それはナイフだった。
サクラの首元で光るナイフにゾロアークは動きを止め男を睨みつける。
だがサクラにナイフが突き付けられている以上ゾロアークは下手に動く事が出来ない。
男はそんなゾロアークを笑った。
「大人しくしてろよ。少しでも怪しい動きをしたら首が切れるぞ」
それはサクラに言っているのかゾロアークに言っているのか、どちらかは分からないが男の目は本気だ。
ギラギラと目を鈍く輝かせた男は楽しげに「慰謝料はどうやって払ってもらおうか」等と話している。
「俺の顔を傷付けたんだ。金だけじゃ済まされないぞ」
男の手がサクラの足へと伸びる。
抵抗しようにもナイフを喉元に近付けられてはサクラもゾロアークも動けない。
「ギギギアル"ギアソーサー"です」
その声と同時に歯車が男とズルズキン目掛けて飛んできた。
勢いのある歯車にズルズキンは何とか避けるもナイフを持つ男は避けられず直撃する。
サクラから手を離し、道の向こう側に迄飛ばされた男。
ズルズキンは飛ばされた主人の元へ慌てて駆け寄った。
何が起こったのか分からず立ち尽くすサクラの頭をゾロアークが叩く。
『あそこ』
彼が指す方向を見れば一瞬にして視界が真っ暗に、もう夜になったのか
「サクラ様大丈夫でございますか」
違う。
「お怪我はありませんか?」
辺りが真っ暗になったかと思ったらそれはノボリさんのコートで、手袋を嵌めた彼の白い手が私の頬を包んでいた。
視界に色が戻ったかと思ったらまた黒一色。
「ナイフを突き付けられた姿を見た時は心臓が止まる思いでした」
私は今、ノボリさんに抱きしめられている。