日頃の疲れが溜まっているのかノボリさんは夕飯とデザートを食べるとクダリさんの肩に凭れて眠っていた。

せっかく眠っているのに起こすのは忍びないので、ノボリさんを背負って上に運ぼうとしていたらクダリさんに肩を叩かれる。

｢何ですか？｣

｢誰もいない時は自力でも良いけど、誰かいるときは他の人の力も借りようよ｣

それはつまり、

｢今はクダリさんの力を借りろって事ですか｣

｢そう！サクラちゃんだって女の子何だからさ
困った時は誰かに可愛く頼る！｣

そう言って立ち上がったクダリさんは私が背負いかけていたノボリさんを易々と担ぐ。
しかし、眠っている相手を米俵みたいに担ぐのは如何なものかと私は思う。

ノボリさんが起きる様子もないので別に良いけど


｢でもクダリさんはまだ食事の途中じゃないですか｣

見れば卓袱台の上に伸びてふやけたうどんがまだ残っている。
何時もはすぐに食べ終わるクダリだが今日はノボリの食事の介助の合間に少しずつ時間をかけて食べていたのでうどんは減るどころか伸びてふやけて見た目増えてしまった。
流石にこれ以上、伸びたらうどんは不味くなる。

｢やっぱりノボリさんは私が運びますからクダリさんは残りのうどんを食べきって下さい｣

｢やだ。だってノボリを背負うサクラちゃんって今に潰れそうで見ててハラハラしちゃう｣

この地方の人の基準じゃ子供が大人を背負ってるみたいなもんだもんねーなんて自分で考えて少し落ち込んだ。

｢それにうどんは大丈夫！おじいさんが作ったうどんだから伸びても美味しい｣

厨房から私達の話を聞いていたのかおじいちゃんが｢嬉しい事、いってくれるじゃないか｣なんて言ってた。
クダリさんもこう言ってるし、

｢じゃあ、お願いします｣

と頼んだ。

｢任せて！｣と元気に階段を駆け上がるクダリさん。

ああ、もっと静かに！ノボリさんが起きるからぁっ！！





やはり月末だからか今日もお客さんは少ない。
あるお客さんは｢今月、わざマシンをいっぱい買っちゃってかなりヤバイんですよね｣と笑っていた。
今日お弁当を買ったら明日から一食パン一枚の生活らしい、壮絶すぎる。
あまりにもそれは不憫だったのでお弁当のおかずをぎっちぎちに詰めてとおじいちゃんに頼んだ。
ぎっちぎちにおかずが詰められたおかずを見てお客さんは驚いていたがありがとうと笑って帰って行った。

頑張って生き残ってまたお弁当を買いにきてほしいものだ。


時計を見ればもう、日付が変わろうとしている。
流石に客はもう来ないだろうと閉店準備をし、リビングを見ればヨーテリーやプラソル、マイナンと戯れるクダリがいた。
そう言えばまだ帰ってなかったんだと思い出す。

｢クダリさん｣

｢サクラちゃん家って結構イッシュじゃ珍しいポケモンがいるよね！この子達何て言うの？｣

｢赤い子がプラソル、青い子がマイナンですよ｣

｢プラソルとマイナンって言うんだー君達すっごく可愛いねー！｣

抱き締めるクダリにプラソルとマイナンもはしゃいで喜んでいた。
その側ではヨーテリーが『僕も！僕も！』構って、と服を引っ張りながらせがんでいた。

｢あー・・・プラソル、マイナン、ヨーテリーはもう眠る時間を過ぎているんだがら今すぐ上に上がりなさい｣

そう言えば三匹と一人から｢『えー』｣と不満の声が上がったが、我が家には我が家のルールがある。
軽く睨めば三匹は素早く階段を上がって消えてしまう。
残ったクダリさんには

｢サクラちゃんお母さんみたいー｣

と笑われた。

｢クダリさんは｣

｢うん、僕は何処で寝ればいいの｣

うん？？


｢客間はノボリが使ってるし僕は何処で寝ればいい？｣

にこにこと無邪気な表情で聞いてくるクダリさん。
ちょっと待ってくれ、

｢クダリさんもしかしてここに泊まる気ですか？｣

｢だってノボリはぐっすり眠ってるから今更起こして家に帰る何て難しいし、だからってノボリを置いて一人家に帰るの僕が嫌だしね｣

至極、正論の様な自分の要望も混ざっているようなクダリの言い分にサクラはとても困った。
今更なのだから一人位増えても差ほど変わらないとは思うのだが、残念な事に我が家にはノボリさんが使っている部屋以外、客間がないのだ。

だからと言って店の常連になりつつある彼をリビングに寝かせる程サクラは酷くはない。

腕を組み、悩んだ結果

｢私の部屋を使って下さい｣

そう言うしか無かった。