双子と弁当屋の娘
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「そういえばサクラちゃん達、こんな所で何してるの?」
ずっと気になっていた。
散歩をするにしては長く止まっているし、クダリやサクラが立つ場所の側には大きな穴が開いている。
見れば穴の中心でせっせと地面を掘るサンドの姿。
「あれって、」
「サンドに化けたゾロアークです。
ゾロアークどう?出てきそう」
サクラが呼び掛ければ、ゾロアークが化けているというサンドは声をあげ鳴いていた。
多分、サクラが問い掛けた事に対しての返事なのだろうがクダリにはただサンドが鳴いている、位しか解らなかった。
だがサクラは違う、まるでポケモンの言葉が分かっているかの様な素振りをみせ、「やっぱりまだかかるか」と会話を続けている。
この時、クダリの中で一度は「あり得ない」と決めつけて捨てた一つの仮説が再び浮上していた。
「クダリさん、地面タイプのポケモンって今持っていますか?」
考えていただけに反応が遅れたクダリは、話は聞いていたので「あ、うん、持ってる!」と何時も以上に片言になりながら慌ててドリュウズの入ったボールをサクラに見せる。
ボールを見たサクラの顔が確かに華やいだ。
「すみませんが、その子の力を貸して下さい!」
自分の腕を掴み必至にお願いをしてきたサクラに「分かった」と頷いたクダリはボールからドリュウズを出す。
「で、ドリュウズは何したら良いの?」
「あの穴をゾロアークと一緒に掘って貰えたら
出来れば優しくお願いします。
余り勢いがあると裂ける可能性があるので」
「え、裂けるの?」
「はい、多分」
裂けるって地面が?一体サクラが何の為に穴を掘ってるのか分からないクダリはドリュウズにサクラから言われた事をまんま命令した。
ドリュウズに優しく掘らないと裂けるからと伝えればドリュウズも『え、裂けるの?何がっ?!』と自分と似た反応を見せたのでサクラと二人して笑ってしまう。
「クダリさん、」
サクラに呼ばれ、また何かお願い事かなと思ったクダリは横に立つサクラに顔を向けた。
見ればサクラは真剣な顔をしていた。
「明日、仕事に行きませんか」
行きませんか。
それはどういう意味なのか。
"行こう"とも取れるし"行かない"とも取れるが、ニュアンスや今、サクラがクダリに向けている真剣な顔から前者の意味で捉えるのが正しいだろう。
「どうして?」
どうして君がそんな事を言うのだ。
事情も、理由も知らない君がどうして
「皆が困るから」
まるで、クダリの心内を読むかの様にサクラは口を開いた。
「今日、お弁当の配達でギアスステーションに行ったんです。
ステーションの中はお客さんでごった返していました」
「何時もの事だよ」
「そうかもしれませんね。
じゃあ、聞きます。ギアスステーションに来るお客さんは皆、怒っているんですか?
私が行った時は誰かしら苛々して怒っていました」
それもそうだ。
折角バトルサブウェイに来たというのにどう言うわけか電車は二本運休で、残りの四本は遊園地の人気アトラクション並みに待ち時間があった。
駅側に事情があるとは言え、忙しいなか何とか時間を見付けて挑戦しにきた者も入れば遠い所から遥々来た者もいる。
殆どの人は長い待ち時間を苛々しながらも待っていたが、中には諦めて帰る人もいた。
この事態に駅員達はお客に謝り、文句を言われながらひたすら走り回る。
「こんな事になったのは誰のせいなのか私が言わなくても分かりますよね?」
「・・・僕は悪くない」
クダリは俯き、サクラから顔を逸らしていた。
だが幾ら顔を逸らしても耳からはサクラの言葉が入ってくる。
「クダリさんが悪いんです。クダリさんが仕事を休んだからお客さんにも駅員さんにも迷惑が掛かった」
「!でも、元はといえばノボリが」
「ノボリさんと喧嘩したんですってね。
ノボリさんから聴きました。流石に喧嘩の原因はプライベートな事なので聴きませんでしたが、
でもノボリさんと喧嘩したから仕事に行かないと言うのはお門違いですよ。
幾ら相手の顔が見たく無かったからってそれはあくまで私生活の話、それを仕事に持ち込むのは間違っています」
「・・・・・・」
サクラの容赦ない言葉にクダリは黙っていた。
その言葉が正しいと分かっていたから何も言えなかった。
分かっていた、
自分が休んだらどうなるのか
休んだ事で何れだけの人に迷惑をかけるのか。
それでも
「でも見たく無かったんですよね。
顔も見たくない!って考えもなしに勢いで言っちゃったから傷付いたかもしれないノボリさんの顔を見たく無かった」
「・・・サクラちゃんってエスパー?」
「違いますよ。友達にエスパーの子はいますけど」
いるんだ。エスパーの友達が、
そう思っていたクダリの顔にハンカチが当てられた。
「目が真っ赤・・・ミネズミみたいになってますよ。
家に帰ったら冷やさないと駄目ですね」
そう言って笑ったサクラの優しい笑顔にクダリの目からぼろぼろと涙が溢れる。
それに驚くサクラ。
主人を泣かせたと勘違いしているのか穴を掘っていたドリュウズが凄い形相でサクラを見ている。
「わ、わ、どうしたんですかクダリさん!?ちょっとお願いですから泣き止んで下さい。
ドリュウズさんが凄く恐い顔をしてるこっちを見てる」
「えへ、僕、サクラちゃんに泣かされちゃった」
それは元々鋭いドリュウズの瞳がより鋭くなった瞬間だった。
「止めて下さいよ!今のこの状況じゃその冗談笑えない」
「あは、冗談じゃないよ」
「クダリさんっ!!」
もはや悲鳴に近い声でサクラはクダリにしがみ付いた。
余程、サクラはこちらを睨むドリュウズが恐ろしいのか「さっきの訂正して下さい!」と懇願してくる。
「でも、本当に冗談じゃない。
僕、サクラちゃんの優しさにうるってきちゃったの
だから僕はサクラちゃんの優しさに泣かされちゃった」
「え、」
「だからその優しさついでに明日、駅の皆に謝るのついて来てほしいな」
お願い、
クダリは不安に揺れる瞳でサクラの手を握る。
サクラの黒い瞳が不安げなクダリの姿を写していた。
「そんなの
付いてくに決まってるじゃないですか。クダリさんが仕事に行かないのを許した時点で私達、共犯何ですから」
「サクラちゃん」
「途中でやっぱり止めた、何て言い出してもゾロアークにサイコキネシスを頼んで運んでもらいますから」
「それは、やだ・・・」
「冗談ですよ」
笑い合う二人の姿を穴を掘っていたポケモン二匹が『やれやれ』と言った風に眺めていた何て当の本人達は知らない。
ずっと気になっていた。
散歩をするにしては長く止まっているし、クダリやサクラが立つ場所の側には大きな穴が開いている。
見れば穴の中心でせっせと地面を掘るサンドの姿。
「あれって、」
「サンドに化けたゾロアークです。
ゾロアークどう?出てきそう」
サクラが呼び掛ければ、ゾロアークが化けているというサンドは声をあげ鳴いていた。
多分、サクラが問い掛けた事に対しての返事なのだろうがクダリにはただサンドが鳴いている、位しか解らなかった。
だがサクラは違う、まるでポケモンの言葉が分かっているかの様な素振りをみせ、「やっぱりまだかかるか」と会話を続けている。
この時、クダリの中で一度は「あり得ない」と決めつけて捨てた一つの仮説が再び浮上していた。
「クダリさん、地面タイプのポケモンって今持っていますか?」
考えていただけに反応が遅れたクダリは、話は聞いていたので「あ、うん、持ってる!」と何時も以上に片言になりながら慌ててドリュウズの入ったボールをサクラに見せる。
ボールを見たサクラの顔が確かに華やいだ。
「すみませんが、その子の力を貸して下さい!」
自分の腕を掴み必至にお願いをしてきたサクラに「分かった」と頷いたクダリはボールからドリュウズを出す。
「で、ドリュウズは何したら良いの?」
「あの穴をゾロアークと一緒に掘って貰えたら
出来れば優しくお願いします。
余り勢いがあると裂ける可能性があるので」
「え、裂けるの?」
「はい、多分」
裂けるって地面が?一体サクラが何の為に穴を掘ってるのか分からないクダリはドリュウズにサクラから言われた事をまんま命令した。
ドリュウズに優しく掘らないと裂けるからと伝えればドリュウズも『え、裂けるの?何がっ?!』と自分と似た反応を見せたのでサクラと二人して笑ってしまう。
「クダリさん、」
サクラに呼ばれ、また何かお願い事かなと思ったクダリは横に立つサクラに顔を向けた。
見ればサクラは真剣な顔をしていた。
「明日、仕事に行きませんか」
行きませんか。
それはどういう意味なのか。
"行こう"とも取れるし"行かない"とも取れるが、ニュアンスや今、サクラがクダリに向けている真剣な顔から前者の意味で捉えるのが正しいだろう。
「どうして?」
どうして君がそんな事を言うのだ。
事情も、理由も知らない君がどうして
「皆が困るから」
まるで、クダリの心内を読むかの様にサクラは口を開いた。
「今日、お弁当の配達でギアスステーションに行ったんです。
ステーションの中はお客さんでごった返していました」
「何時もの事だよ」
「そうかもしれませんね。
じゃあ、聞きます。ギアスステーションに来るお客さんは皆、怒っているんですか?
私が行った時は誰かしら苛々して怒っていました」
それもそうだ。
折角バトルサブウェイに来たというのにどう言うわけか電車は二本運休で、残りの四本は遊園地の人気アトラクション並みに待ち時間があった。
駅側に事情があるとは言え、忙しいなか何とか時間を見付けて挑戦しにきた者も入れば遠い所から遥々来た者もいる。
殆どの人は長い待ち時間を苛々しながらも待っていたが、中には諦めて帰る人もいた。
この事態に駅員達はお客に謝り、文句を言われながらひたすら走り回る。
「こんな事になったのは誰のせいなのか私が言わなくても分かりますよね?」
「・・・僕は悪くない」
クダリは俯き、サクラから顔を逸らしていた。
だが幾ら顔を逸らしても耳からはサクラの言葉が入ってくる。
「クダリさんが悪いんです。クダリさんが仕事を休んだからお客さんにも駅員さんにも迷惑が掛かった」
「!でも、元はといえばノボリが」
「ノボリさんと喧嘩したんですってね。
ノボリさんから聴きました。流石に喧嘩の原因はプライベートな事なので聴きませんでしたが、
でもノボリさんと喧嘩したから仕事に行かないと言うのはお門違いですよ。
幾ら相手の顔が見たく無かったからってそれはあくまで私生活の話、それを仕事に持ち込むのは間違っています」
「・・・・・・」
サクラの容赦ない言葉にクダリは黙っていた。
その言葉が正しいと分かっていたから何も言えなかった。
分かっていた、
自分が休んだらどうなるのか
休んだ事で何れだけの人に迷惑をかけるのか。
それでも
「でも見たく無かったんですよね。
顔も見たくない!って考えもなしに勢いで言っちゃったから傷付いたかもしれないノボリさんの顔を見たく無かった」
「・・・サクラちゃんってエスパー?」
「違いますよ。友達にエスパーの子はいますけど」
いるんだ。エスパーの友達が、
そう思っていたクダリの顔にハンカチが当てられた。
「目が真っ赤・・・ミネズミみたいになってますよ。
家に帰ったら冷やさないと駄目ですね」
そう言って笑ったサクラの優しい笑顔にクダリの目からぼろぼろと涙が溢れる。
それに驚くサクラ。
主人を泣かせたと勘違いしているのか穴を掘っていたドリュウズが凄い形相でサクラを見ている。
「わ、わ、どうしたんですかクダリさん!?ちょっとお願いですから泣き止んで下さい。
ドリュウズさんが凄く恐い顔をしてるこっちを見てる」
「えへ、僕、サクラちゃんに泣かされちゃった」
それは元々鋭いドリュウズの瞳がより鋭くなった瞬間だった。
「止めて下さいよ!今のこの状況じゃその冗談笑えない」
「あは、冗談じゃないよ」
「クダリさんっ!!」
もはや悲鳴に近い声でサクラはクダリにしがみ付いた。
余程、サクラはこちらを睨むドリュウズが恐ろしいのか「さっきの訂正して下さい!」と懇願してくる。
「でも、本当に冗談じゃない。
僕、サクラちゃんの優しさにうるってきちゃったの
だから僕はサクラちゃんの優しさに泣かされちゃった」
「え、」
「だからその優しさついでに明日、駅の皆に謝るのついて来てほしいな」
お願い、
クダリは不安に揺れる瞳でサクラの手を握る。
サクラの黒い瞳が不安げなクダリの姿を写していた。
「そんなの
付いてくに決まってるじゃないですか。クダリさんが仕事に行かないのを許した時点で私達、共犯何ですから」
「サクラちゃん」
「途中でやっぱり止めた、何て言い出してもゾロアークにサイコキネシスを頼んで運んでもらいますから」
「それは、やだ・・・」
「冗談ですよ」
笑い合う二人の姿を穴を掘っていたポケモン二匹が『やれやれ』と言った風に眺めていた何て当の本人達は知らない。