あの葉が落ちたら(▽/暗)
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五週目。入院する間を数える為に纏めて一週、二週と数えていたが目を覚ましたクダリにその必要は無くなっていた。
四週間もの間に見慣れた白く高い天井は目の前に無く、代わりに視界いっぱいに木目の低い天井が入る。
おかしいと思いながら体を起こせば、何時も体を動かすに邪魔だったギプスが足から消えていた。
「クダリ、起きましたか」
声を掛けてきたのは自身の片割れであるノボリで、クダリは何故自分が自宅にいるのか尋ねようとベットから床へと足を伸ばした所
「駄目でございます!」
凄い剣幕で止められた。
「貴方はまだ病み上がりなのですよ?!ちゃんとベットで横になり、安静にしていなければ」
ノボリはクダリをベットへと押し戻すと、枕を直し布団を掛け直す。
「病み上がりって、僕骨折してただけ!でもギプス外れたからもう歩ける」
「骨折?何を言っているのですか。貴方は風邪をひいてずっと寝込んでいたのですよ」
「ノボリこそ何言ってるの?僕は木から落ちて足折った。
風邪なんてひいてない」
「貴方、長く眠り過ぎて夢と現実の区別が出来ていないのではないですか?」
いくら言ってもノボリは取り合ってはくれず起き上がるのを許してはくれなかった。
ノボリは持っていたペットボトルをクダリに渡して確り寝ているのですよと言い付けて部屋を出る。
廊下から聞こえるノボリの足音が遠ざかるのを待ってからクダリは掛けられた布団を蹴飛ばすとベットから飛び下り、転けた。
その余りの勢いに階下にいたノボリから何事か尋ねられたが
「バチュルと遊んでただけだから」
と答えて事なきを得る。
床へは受け身が間に合わず顔から突っ込んだクダリだったが彼は笑顔だった。
思い通りに動かなかったのは骨折した右足で、その足が不自由という事は自分が言っていた事が夢ではないという事。
右足の不自由さに苦戦しながらも着替え、身仕度を整えたクダリはノボリの目を盗み家から飛び出した。
彼女の病室でクッキーを食べた記憶を最後に目覚めたら自宅にいたのには驚いたがそんな事よりクダリは彼女の事が気になって気になって仕方なかった。
思うように動かない右足を引きずる様に歩きやっと着いた病院。
クダリはさっそく三階の彼女の部屋に向かうのだが
「あれ?」
入った部屋には花も本も、それを読む彼女の姿も何処にも無かった。
それどころか彼女がいた形跡さえ無く、白い部屋は妙に寂しい印象を与える。
「お姉さん、何処行ったの」
誰か、看護婦に聞こうと振り向けば視界は真っ白に
見上げれば彼女と初めて会った時に彼女と一緒にいた看護婦が立っていた。
その看護婦はクダリを見るなり顔を真っ青にすると、クダリから顔を逸らして押していた台車を急に発進させる。
まるで幽霊でも見たかの様な顔をして台車と共に廊下から消えた看護婦にクダリは只、呆気にとられた。
「ナースステーションで聞けばお姉さんの事分かるかな」
エレベーターで一階に降り、ナースステーションで尋ねれば
「その様な名前の方はこの院内で入院しておりませんね」
「じゃあ、最近
退院したとか?」
聞けばパソコンのタイピングの音が聞こえた。
「それでしたら、」
受付の女性が言いかけた所で言葉が途切れる。
頑張って背伸びをするクダリだが、高いカウンターの向こうはなかなか見えず。
だが内緒話の様に小さな声が幾つか聞こえたので見えないカウンターの向こうで受付の女性と誰かが喋っているのは分かった。
「退院された方の記録にもその様な方の名前は・・・お探しになられている方の入院先は本当に此処で?」
ふと、クダリの頭にノボリの言っていた言葉が過った。
"貴方、長く眠り過ぎて夢と現実の区別が出来ていないのではないですか?"
自分はノボリの言う通り夢と現実の区別が出来ていないと言うのか。
クダリは思わず病院の外へと飛び出し病院名を確認した。
が、クダリが此処へ運ばれた時は眠っており入院している間も病院名を確認する機会など無かった。
よくよく考えてみれば自分が入院していた病院の名前は知らない。
他に何か確認する手は無いかと考え、浮かび上がったのは彼女と出会う切っ掛けになったあの木だった。
木の群から離れ、病院に寄り添う様に立っていた大きな木。
それが病院の裏手にあればこの病院が自分の入院していた場所になると考えたクダリはさっそく、病院の裏庭に向かった。
病院の白い壁を伝い、裏庭への長い道程を途中ボールから出てきたバチュルに応援されて着いた裏庭。
見れば、そこに彼女と出会ったあの木の姿は無かった。
「どうして無いの?確かに此処にある筈なのに
・・・どうして」
泣いても木が無い事実は変わらない。
彼女は本当に夢の住人だったのか。
だったら鮮明に覚えてる彼女との記憶は一体何なのか。
彼女と過した約一ヶ月の記憶が夢の造り出した嘘だとして
この胸を占める恋しさと寂しさは何なのか、
声をあげて泣くクダリに考える余裕など少しも無かった。
「お姉さん、お姉さん、
サクラお姉さん」
病院で過した一ヶ月が夢でも現実でも彼女は此処にいない。
「どうして何処にもいないの」
四週間もの間に見慣れた白く高い天井は目の前に無く、代わりに視界いっぱいに木目の低い天井が入る。
おかしいと思いながら体を起こせば、何時も体を動かすに邪魔だったギプスが足から消えていた。
「クダリ、起きましたか」
声を掛けてきたのは自身の片割れであるノボリで、クダリは何故自分が自宅にいるのか尋ねようとベットから床へと足を伸ばした所
「駄目でございます!」
凄い剣幕で止められた。
「貴方はまだ病み上がりなのですよ?!ちゃんとベットで横になり、安静にしていなければ」
ノボリはクダリをベットへと押し戻すと、枕を直し布団を掛け直す。
「病み上がりって、僕骨折してただけ!でもギプス外れたからもう歩ける」
「骨折?何を言っているのですか。貴方は風邪をひいてずっと寝込んでいたのですよ」
「ノボリこそ何言ってるの?僕は木から落ちて足折った。
風邪なんてひいてない」
「貴方、長く眠り過ぎて夢と現実の区別が出来ていないのではないですか?」
いくら言ってもノボリは取り合ってはくれず起き上がるのを許してはくれなかった。
ノボリは持っていたペットボトルをクダリに渡して確り寝ているのですよと言い付けて部屋を出る。
廊下から聞こえるノボリの足音が遠ざかるのを待ってからクダリは掛けられた布団を蹴飛ばすとベットから飛び下り、転けた。
その余りの勢いに階下にいたノボリから何事か尋ねられたが
「バチュルと遊んでただけだから」
と答えて事なきを得る。
床へは受け身が間に合わず顔から突っ込んだクダリだったが彼は笑顔だった。
思い通りに動かなかったのは骨折した右足で、その足が不自由という事は自分が言っていた事が夢ではないという事。
右足の不自由さに苦戦しながらも着替え、身仕度を整えたクダリはノボリの目を盗み家から飛び出した。
彼女の病室でクッキーを食べた記憶を最後に目覚めたら自宅にいたのには驚いたがそんな事よりクダリは彼女の事が気になって気になって仕方なかった。
思うように動かない右足を引きずる様に歩きやっと着いた病院。
クダリはさっそく三階の彼女の部屋に向かうのだが
「あれ?」
入った部屋には花も本も、それを読む彼女の姿も何処にも無かった。
それどころか彼女がいた形跡さえ無く、白い部屋は妙に寂しい印象を与える。
「お姉さん、何処行ったの」
誰か、看護婦に聞こうと振り向けば視界は真っ白に
見上げれば彼女と初めて会った時に彼女と一緒にいた看護婦が立っていた。
その看護婦はクダリを見るなり顔を真っ青にすると、クダリから顔を逸らして押していた台車を急に発進させる。
まるで幽霊でも見たかの様な顔をして台車と共に廊下から消えた看護婦にクダリは只、呆気にとられた。
「ナースステーションで聞けばお姉さんの事分かるかな」
エレベーターで一階に降り、ナースステーションで尋ねれば
「その様な名前の方はこの院内で入院しておりませんね」
「じゃあ、最近
退院したとか?」
聞けばパソコンのタイピングの音が聞こえた。
「それでしたら、」
受付の女性が言いかけた所で言葉が途切れる。
頑張って背伸びをするクダリだが、高いカウンターの向こうはなかなか見えず。
だが内緒話の様に小さな声が幾つか聞こえたので見えないカウンターの向こうで受付の女性と誰かが喋っているのは分かった。
「退院された方の記録にもその様な方の名前は・・・お探しになられている方の入院先は本当に此処で?」
ふと、クダリの頭にノボリの言っていた言葉が過った。
"貴方、長く眠り過ぎて夢と現実の区別が出来ていないのではないですか?"
自分はノボリの言う通り夢と現実の区別が出来ていないと言うのか。
クダリは思わず病院の外へと飛び出し病院名を確認した。
が、クダリが此処へ運ばれた時は眠っており入院している間も病院名を確認する機会など無かった。
よくよく考えてみれば自分が入院していた病院の名前は知らない。
他に何か確認する手は無いかと考え、浮かび上がったのは彼女と出会う切っ掛けになったあの木だった。
木の群から離れ、病院に寄り添う様に立っていた大きな木。
それが病院の裏手にあればこの病院が自分の入院していた場所になると考えたクダリはさっそく、病院の裏庭に向かった。
病院の白い壁を伝い、裏庭への長い道程を途中ボールから出てきたバチュルに応援されて着いた裏庭。
見れば、そこに彼女と出会ったあの木の姿は無かった。
「どうして無いの?確かに此処にある筈なのに
・・・どうして」
泣いても木が無い事実は変わらない。
彼女は本当に夢の住人だったのか。
だったら鮮明に覚えてる彼女との記憶は一体何なのか。
彼女と過した約一ヶ月の記憶が夢の造り出した嘘だとして
この胸を占める恋しさと寂しさは何なのか、
声をあげて泣くクダリに考える余裕など少しも無かった。
「お姉さん、お姉さん、
サクラお姉さん」
病院で過した一ヶ月が夢でも現実でも彼女は此処にいない。
「どうして何処にもいないの」