双子と弁当屋の娘
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「はっ!」
サクラは気付くと畳の上で寝ていた。
何故畳?私の部屋はフローリングだ
と、そこで思考が止まる。
静かな部屋に聴こえる寝息。
自分は今、こうして起きている
なら、誰の、と寝息が聴こえる方へゆっくり首を動かせば泣き疲れた子供の様に眠るクダリがいた。
一瞬何故彼が家にいるのかと考えてしまったがすぐに昨日の出来事が脳裏に蘇る。
「ああ、そうだ。クダリさんが姐さんに押し倒されたのを助けて・・・」
泣きつかれたんだったなぁと思い出し、眠っているクダリに対し合掌をした。
きっと、昨日の出来事は彼の記憶に残り、トラウマとなるだろう。
だが、だからと言って彼に罪悪感などは感じず思っても「ドンマイ!」ぐらいだろうか。
『おい、じいさんが呼んでるぞ』
声の方を見ればゾロアに化けていないゾロアークが襖の側で立っていた。
「仕入れでしょ?先にシャワーだけ浴びてくるから準備だけしておいてっておじいちゃんに言って」
『分かった』
サクラは立ち上がり、筋と言う筋を伸ばす。
「さあ、今日も頑張りましょうか!」
「やだ、行きたくない」
「行きたくないって子供じゃないんですから」
「やだ、やだ、やだ!」
布団をすっぽり被り、仕事に行きたくないと駄々を捏ねるいい年の大人。
正直、言って見苦しい。
どうして私が今、不登校児に頭を悩ます母親みたいになっているのかと言うとそれは少し前の事になる。
食材の仕入れの為にカイリューの背中に乗って夜明け前にフキヨセシティーに向かった私は日が昇り街が明るく輝き出した頃に帰って来れた。
知り合いから「カボチャがいっぱいとれたからおすそ分けねー」と両手でも持ちきれない程のカボチャを貰い喜んで帰宅。
おじいちゃんにカボチャをいっぱい貰った事を伝え、また何かお礼をしないとなと会話した後だ。
「そろそろ坊主を起こさなくて良いのか?」
そう言われて見た時計には7時半の表示。
私自身は今まで社会で働いた事が無いので「何だまだ7時半か」位に思ったが社会経験豊富なおじいちゃんの話ではこの時間に起きて来ないのは地味に不味いらしい。
そうなのか、社会人って大変何だな何て思っていたらおじいちゃん直々に「お前が起こしてこい」と命令されてしまった。
え、私が?何でと言いたくなったが強い者に従うのが我が家のルール。
うん、従うしかない。
大変不本意ではあるがまあ、弱肉強食な我が家のルール、致し方ないとゾロアークを連れて私は客間へと向かった。
客間に行けばクダリさんは起きていて、珍しく(と言っても昨日からの付き合いだが)渋い顔をしてライヴキャスターを見つめていた。
起きてるならさっさと降りて来いよと思うのだがここは我慢、我慢。
「我慢よ私」
『いや、だから心の声が漏れてるぞ』
ゾロアークに指摘され、私は口を手で塞ぐ。
何かこれ、デジャブだわ。
気を取り直し、平常心でクダリさんに「おはようございます」と声をかければもう見慣れた笑顔で「おはよう!」と返された。
何だ元気じゃないかと一安心し、ゾロアークとお互い顔を見合わせてからここに来た本題に入る。
「クダリさんもうそろそろお仕事に行く準備を「やだ」は?」
ワンモアプリーズ?
あれ、私、今、変な事言ったかもうん言ったぽい。
だってゾロアークが『何言ってんだこいつ』って顔で見てる。
『お前、何言ってんだ』
ああ、もう口に出して言われちゃった。
じゃなくて!
「今は私の事はどうでもいいから」
『逃げたな』
「五月蝿い!」
ちょっとゾロアークには黙ってて貰って、
「クダリさん"やだ"ってどういうつもりですか?!まさか仕事に行かないとか言うつもりじゃないですよね」
「僕、仕事に行かない」
ぷいっと顔を逸らされ、シェルダーみたいに布団に閉じ籠られてしまった。
いや、行かないって・・・会社ってそんな単純なものなのかゾロアークに尋ねれば『知らねーよ』と返された。
そうだよね。
今、こうして当たり前の様に彼と会話しているけど彼は人間でなければポケモンだ。
人間が働く会社の事何て分かる筈がない。
この事は後でおじいちゃんに聞こうと、頭の片隅に置いておいて私は布団を掴んだ。
取り敢えず布団からこの人を出さなければと思い、布団を引っ張るのだがびくともしない。
「仕事しましょうよクダリさん!」
「いーやーだ!!」
布団が裂けるのも覚悟で引っ張るのだがやはり、男女の力の差なのか無理だった。
それが何だが悔しくて『手伝おうか?』と聞いてきたゾロアークの申し入れを断って私は布団を引っ張る。
「もう実力行使!」
布団を引っ張り、客間を出て、廊下を滑り、階段でも容赦なく布団を引っ張った。
階段を一段一段降りる度に「痛い!」と声が上がるのだがそれでも離さない。
互いに引っ張り続けた結果、息を切らして階段を降りきった私達におじいちゃんは呆れた顔をして「二人しと何してるんだ」と言われてしまった。
・・・私も何をしているかいまいち分からない。
私はただクダリさんを起こしにきただけの筈なのに、
こうして話の始めに戻る。
「やだ、行きたくない」
「行きたくないって子供じゃないんですから」
「やだ、やだ、やだ!」
おい、いい加減にしろよと言葉に余裕が無くなってきた時、私はおじいちゃんに呼ばれた。
「何?」
「あんだけ行きたくないって言ってんだ。
何か理由があるんじゃないか?」
「・・・そうなんですか?」
クダリさん、と声をかければクダリさんが被っていた布団が激しく揺れた。
分かりやすすぎる反応に私が溜め息をついているとおじいちゃんが「じゃ、仕方ねぇな」何て言い出す。
仕方ない?
仕方ないって、おじいちゃん?!
まさか、何て嫌な予感がした。
お願いだからおじいちゃん、その先余計な事は言わないで
「どうせ仕事と似た理由で家にも帰れないんだろ」
やばい、何かクダリさんが顔を出して頷いてる。
おじいちゃん、本当にお願い。
その先は
「だったら気が済む迄家に入ればいい」
ああ、もう!
「おじいちゃんのお人好し!!」