結局、愛していたのは(▲/死)
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「サブウェイマスターのノボリさんですか?」
会話の途中だというのに突然の介入者。
振り向けばかっちりとスーツを着込んだ男が二人立っていた。
二人がどちら様か尋ねる前に男二人はジャケットの胸ポケットから警察手帳を取り出し見せ付ける。
「先日に起きました。
女性暴行殺人事件について話が聴きたく参りました」
彼女の事件である。
だがしかし、事件は犯人が捕まりめでたしめでたしの筈。
今更警察が、自分の兄弟に何の用があるというのかクダリが尋ねようとしたが、出されたノボリの腕に阻まれる。
「この様な場所で立ち話も何ですから応接間に案内いたします」
「ノボリ!」
「静かになさいクダリ。
彼等は私のお客様でございます。
部外者である貴方は執務室に戻り溜めている書類を片しては如何ですか?
貴方を助けてくれる彼女はもういないのですよ」
そこ迄言われてクダリの肩はビクリと揺れる。
「ノボリ、どうしてそんな事言うの?」
「私が知らないとでも?
貴方が彼女に抱いていた思いを、
熱情を
貴方は自身が抱いていた感情を部下を大切にするそれにすり替えていたのではありませんか?」
「違う、僕は」
「今更、言い訳は無用です。
貴方の本当の気持ちを知られて困る方もいないのですから」
ノボリの一言を引き金にクダリの頬を叩いていた。
側に刑事がいるのも構わず、叩かれたノボリの制帽が床へと静かに落ちる。
「ノボリ変!すっごく変!
一体、どうしちゃったの?!始めはサクラちゃんが死んだから情緒不安定なのかと思った。
けど、違う!前のノボリはサクラちゃんをすっごく大切にしてたのに」
それはもう、宝物の様に
優しく大切に、他人から見ても彼が彼女を大切にしているんだと分かる程。
大切にしていた筈なのに、先程からの彼の彼女に対する発言は真逆だ。
まるで彼女に興味等ない風な彼の発言の数々。
それが彼女を失った事に対する彼の強がりなのか、それとも本心からの言葉なのか?
クダリには分からない。
「それだけですか?」
「え?」
「貴方が言いたいのはそれだけか、と聞いているのです」
そう言った彼の目は何とも冷たい物だった。
その目の冷たさはクダリに叩かれた怒りによるものではない。
興味のない、クダリとの会話が酷くどうでも良いという視線。
「もう移動しても構いませんか?」
彼と話すのは時間の無駄だと本人を前に言い放ったノボリは呆然とするクダリを放り、歩き出す。
その後を慌てて追う刑事二人。
「何処に行っちゃったのさ、ノボリ」
一人、廊下に佇むクダリの呟きは誰にも拾われず空虚に消えた。