Lacking broken(▲▽/オリキャラ注意)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
電話の呼び出し音が廊下に響く。
家には今、自分と母親しかいない。
電話を取らなければと、部屋から廊下に出れば既に母親が電話を取っていた。
自分の今の行動が無駄足だったと分かり、部屋へ戻ろうとした
「今、何と言いました?」
普段の母親からは想像のつかない荒い口調に自分は思わず足を止めてしまう。
喧嘩腰に電話の向こうの相手と話す母親。
向こうの相手も母親に負けて劣らず、電話から漏れて此方に迄聴こえる程大きく荒い声で話している。
これは最早会話ではない。
会話が口論、口喧嘩となり、互いを貶める。
受話器を握る母親の手は怒りに震えて、今に廊下の床へと受話器を電話機ごと投げ捨て様としていた。
これはまずいと思わずその場から飛び出す。
「家のクダリが、
御宅の、
サクラちゃんを、
妊娠させた何てそんな事ありえません!!
家の子が御宅の娘さんを妊娠させたという証拠がありまして?無いですわよね。
ましてやその妊娠した娘さんが一人で出産してその後死んだから責任をとれなんてそんなおかしな話に此方が素直にはいとでも言うと思いますか?!
こんな質の悪い悪戯、他所でして頂戴」
ガチャンと切られる電話。
電話を切り、一息ついた母親はそこで自分の後ろにいたノボリに気が付く。
自身の後ろにいたノボリに対し、まずいという顔をした母親。
だが、今のノボリは母親が自分を見てどういう表情をしているか何てどうでも良かった。
頭を占めるのは大好きな幼馴染みが死んだという事。
そして、彼女が片割れとの間に子供を設けていた事。
どれもこれも初耳で後ろから不意に頭を殴られたかの様な衝撃だった。
此処まで動きを止めていた母親がノボリに縋りつく。
さっきの電話は只の悪戯。
質の悪い悪戯なの。
とまるでノボリだけでなく自分自身にも言い聞かせるよう彼女は何度も続けた。
あの子は何もしていない。
何もしていないんだと言い続ける彼女は床へと膝を付き、嗚咽を漏らす。
何もしていないのなら何故、母親は自分に身体を預け涙を零すのか?
それは彼女の様子が物語っている。
母親は薄々気が付いていたのかも知れない。
もしかしたら自分の息子と彼女が微笑ましい関係から男女の関係に迄進展している事を
だからこそ彼女は電話に対し、らしくない厳しい言葉を吐いた。
家を、家族を、息子を守る為事実を否定した。
上手くいけば母親だけの秘密で事は済んでいたのかも知れないがそうそう上手くいかない。
話をノボリに聞かれてしまったのだ。
「ノボリ、お願い。
あの子には言わないで頂戴
こんな事、あの子が知ったら」
最早、彼女は否定どころか自分から事実の肯定をしていた。
事実を認めた上で彼女はノボリに縋りつく。
半年前、長年付き合いのあった幼馴染一家が引っ越した。
挨拶も引っ越し先を知らす事もなく、突然の事。
近所の人達は突然の事に何事かと驚いたが動揺迄はなかった。
寧ろ、やっぱりね。
引っ越す迄に予兆の様なものが幾つか見られたのだ。
帰宅が遅く帰らない日も増えた主人に、以前の穏やかな人格が嘘のように短気となった夫人。
そして引っ越す半年以前より姿を見せなくなった一人娘。
大人達が見た一家の事情を子供のノボリとクダリは知らない。
だから何度も彼女を心配し、彼女の家を訪ねた。
しかし、訪ねても彼女は不在で門前払い。
今迄、毎日の様に顔を合わせていた彼女が姿を見せないのは心配であったがそれより心配されたのがクダリだった。
彼女と会わない日が増える毎に彼の表情が、笑顔が失われていく。
次第に彼は笑顔どころか食欲を失い、不眠症へと陥った。
毎晩、毎晩、まるで赤ん坊の様に泣き出しノボリに縋った。
どうしてサクラちゃんは僕と会ってくれないの?
どうして?どうして?
何時迄も続く問答。
そんなの私だって知りたい。
毎晩の様に縋りつく弟にノボリの睡眠迄も邪魔され、彼共々に限界だった。
結局、彼女は自分達に何も告げぬまま何処か知らぬ土地に引っ越してしまう。
その後クダリはすぐに壊れた。
壊れかけていたのが完全に壊れてしまったのだ。
母親は人目を気にしながら泣き続ける弟を連れて病院へと通い詰める。
毎日毎日、せっせと通院してカウンセリングを受ける内にクダリが元に戻ってきていた。
そんな矢先の電話だった。
「ノボリ、お願いよ。
あの子には言わないで
こんな事、あの子が知ったら今度こそあの子は」
母親が言いたい事は言わなくてもノボリは分かっていた。
自分達に黙って彼女が引っ越しただけで壊れたクダリが彼女の死を知ったら今度こそ彼は、クダリは修復不可能な迄に壊れてしまうだろう。
「分かっております。
クダリの為、私この事は墓の中迄持っていく所存でございます」
そう言えば、母親は涙を零し俯いて何度もノボリに向かって「ごめんなさい」と「ありがとう」を言った。
嘘、
嘘、ウソ、うそ、
本当に私は嘘つきです。
母親を寝室迄送ったノボリは部屋を出てすぐに口元をおさえる。
何時もは下がっている口角が上がっているのを感じ、今の自分はクダリによく似ているのだろうと皮肉を零す。
だが、笑みは絶えない。
笑みは歓喜の証。
ノボリの足取りは軽く、弾んでいた。
嬉しい、嬉しい
ノボリは彼女が好きだった。
クダリの様に壊れる程ではない。
だが、彼女の事が好きだった。
見ているだけで良い、
彼女の笑顔が見れればそれで、
それで、
良かった筈なのに
『僕達、大きくなったら結婚する!』
互いの手を握りあう二人。
冗談ではない将来の約束を二人から聴かされてノボリの目の前は真っ暗になりそうになった。
幸せそうに笑い二人を前にノボリは自分の空いた手を強く握りしめる。
二人が将来について本気なのは知っていた。
それどころか大人の目を盗んでキスをして、そういう関係にある事も知っていた。
だが、ノボリはその事を大人に話そうとはしなかった。
彼は気を熟すのを待っていたのだ。
世間体を気にする大人達、
世間体など考えもしない子供
互いの関係が熟し熟して、ぶつかり腐り落ちるのを待っていた。
彼女は死んでしまったけれど、
これでもう彼女はクダリと会う事はないしクダリも彼女に会う事は出来ない。
ましてやくクダリは彼女が死んでしまった事も知らない。
その事実を知るのは向こうの両親、母親、
そして自分だけ
「ああ、今日は何と素晴らしい日なのでしょうか」
家には今、自分と母親しかいない。
電話を取らなければと、部屋から廊下に出れば既に母親が電話を取っていた。
自分の今の行動が無駄足だったと分かり、部屋へ戻ろうとした
「今、何と言いました?」
普段の母親からは想像のつかない荒い口調に自分は思わず足を止めてしまう。
喧嘩腰に電話の向こうの相手と話す母親。
向こうの相手も母親に負けて劣らず、電話から漏れて此方に迄聴こえる程大きく荒い声で話している。
これは最早会話ではない。
会話が口論、口喧嘩となり、互いを貶める。
受話器を握る母親の手は怒りに震えて、今に廊下の床へと受話器を電話機ごと投げ捨て様としていた。
これはまずいと思わずその場から飛び出す。
「家のクダリが、
御宅の、
サクラちゃんを、
妊娠させた何てそんな事ありえません!!
家の子が御宅の娘さんを妊娠させたという証拠がありまして?無いですわよね。
ましてやその妊娠した娘さんが一人で出産してその後死んだから責任をとれなんてそんなおかしな話に此方が素直にはいとでも言うと思いますか?!
こんな質の悪い悪戯、他所でして頂戴」
ガチャンと切られる電話。
電話を切り、一息ついた母親はそこで自分の後ろにいたノボリに気が付く。
自身の後ろにいたノボリに対し、まずいという顔をした母親。
だが、今のノボリは母親が自分を見てどういう表情をしているか何てどうでも良かった。
頭を占めるのは大好きな幼馴染みが死んだという事。
そして、彼女が片割れとの間に子供を設けていた事。
どれもこれも初耳で後ろから不意に頭を殴られたかの様な衝撃だった。
此処まで動きを止めていた母親がノボリに縋りつく。
さっきの電話は只の悪戯。
質の悪い悪戯なの。
とまるでノボリだけでなく自分自身にも言い聞かせるよう彼女は何度も続けた。
あの子は何もしていない。
何もしていないんだと言い続ける彼女は床へと膝を付き、嗚咽を漏らす。
何もしていないのなら何故、母親は自分に身体を預け涙を零すのか?
それは彼女の様子が物語っている。
母親は薄々気が付いていたのかも知れない。
もしかしたら自分の息子と彼女が微笑ましい関係から男女の関係に迄進展している事を
だからこそ彼女は電話に対し、らしくない厳しい言葉を吐いた。
家を、家族を、息子を守る為事実を否定した。
上手くいけば母親だけの秘密で事は済んでいたのかも知れないがそうそう上手くいかない。
話をノボリに聞かれてしまったのだ。
「ノボリ、お願い。
あの子には言わないで頂戴
こんな事、あの子が知ったら」
最早、彼女は否定どころか自分から事実の肯定をしていた。
事実を認めた上で彼女はノボリに縋りつく。
半年前、長年付き合いのあった幼馴染一家が引っ越した。
挨拶も引っ越し先を知らす事もなく、突然の事。
近所の人達は突然の事に何事かと驚いたが動揺迄はなかった。
寧ろ、やっぱりね。
引っ越す迄に予兆の様なものが幾つか見られたのだ。
帰宅が遅く帰らない日も増えた主人に、以前の穏やかな人格が嘘のように短気となった夫人。
そして引っ越す半年以前より姿を見せなくなった一人娘。
大人達が見た一家の事情を子供のノボリとクダリは知らない。
だから何度も彼女を心配し、彼女の家を訪ねた。
しかし、訪ねても彼女は不在で門前払い。
今迄、毎日の様に顔を合わせていた彼女が姿を見せないのは心配であったがそれより心配されたのがクダリだった。
彼女と会わない日が増える毎に彼の表情が、笑顔が失われていく。
次第に彼は笑顔どころか食欲を失い、不眠症へと陥った。
毎晩、毎晩、まるで赤ん坊の様に泣き出しノボリに縋った。
どうしてサクラちゃんは僕と会ってくれないの?
どうして?どうして?
何時迄も続く問答。
そんなの私だって知りたい。
毎晩の様に縋りつく弟にノボリの睡眠迄も邪魔され、彼共々に限界だった。
結局、彼女は自分達に何も告げぬまま何処か知らぬ土地に引っ越してしまう。
その後クダリはすぐに壊れた。
壊れかけていたのが完全に壊れてしまったのだ。
母親は人目を気にしながら泣き続ける弟を連れて病院へと通い詰める。
毎日毎日、せっせと通院してカウンセリングを受ける内にクダリが元に戻ってきていた。
そんな矢先の電話だった。
「ノボリ、お願いよ。
あの子には言わないで
こんな事、あの子が知ったら今度こそあの子は」
母親が言いたい事は言わなくてもノボリは分かっていた。
自分達に黙って彼女が引っ越しただけで壊れたクダリが彼女の死を知ったら今度こそ彼は、クダリは修復不可能な迄に壊れてしまうだろう。
「分かっております。
クダリの為、私この事は墓の中迄持っていく所存でございます」
そう言えば、母親は涙を零し俯いて何度もノボリに向かって「ごめんなさい」と「ありがとう」を言った。
嘘、
嘘、ウソ、うそ、
本当に私は嘘つきです。
母親を寝室迄送ったノボリは部屋を出てすぐに口元をおさえる。
何時もは下がっている口角が上がっているのを感じ、今の自分はクダリによく似ているのだろうと皮肉を零す。
だが、笑みは絶えない。
笑みは歓喜の証。
ノボリの足取りは軽く、弾んでいた。
嬉しい、嬉しい
ノボリは彼女が好きだった。
クダリの様に壊れる程ではない。
だが、彼女の事が好きだった。
見ているだけで良い、
彼女の笑顔が見れればそれで、
それで、
良かった筈なのに
『僕達、大きくなったら結婚する!』
互いの手を握りあう二人。
冗談ではない将来の約束を二人から聴かされてノボリの目の前は真っ暗になりそうになった。
幸せそうに笑い二人を前にノボリは自分の空いた手を強く握りしめる。
二人が将来について本気なのは知っていた。
それどころか大人の目を盗んでキスをして、そういう関係にある事も知っていた。
だが、ノボリはその事を大人に話そうとはしなかった。
彼は気を熟すのを待っていたのだ。
世間体を気にする大人達、
世間体など考えもしない子供
互いの関係が熟し熟して、ぶつかり腐り落ちるのを待っていた。
彼女は死んでしまったけれど、
これでもう彼女はクダリと会う事はないしクダリも彼女に会う事は出来ない。
ましてやくクダリは彼女が死んでしまった事も知らない。
その事実を知るのは向こうの両親、母親、
そして自分だけ
「ああ、今日は何と素晴らしい日なのでしょうか」