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双子と弁当屋の娘

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「僕、大丈夫じゃない!」

「はいはい」

「僕、ヨーテリーにガブッて噛まれた!」

「はいはい」


サクラちゃん聞いてる?!」

先程から「はいはい」としか返事をしないサクラにクダリは頬を膨らまし、文句を言った。
救急箱から包帯と消毒液、ガーゼを出したサクラは水でしっかりと洗った腕の傷口にたっぷりと消毒液をかける。


悶絶。


傷口に消毒液が染みていく痛さに声も上げられず無傷な方の手で床を叩いたクダリはぷるぷると体を震わした。

「酷い、サクラちゃん酷い!」

「何が酷いんですか。私は態々貴方を店に入れてヨーテリーに噛まれた傷口の応急処置をしているんですよ?」

そう言って、再度傷口に消毒液をかけたサクラ
やはり、クダリの悲鳴は音になら無くて、大人しくなった隙にガーゼと包帯を使って傷口を保護するとサクラは「終わりましたよ」とクダリに声をかけた。

サクラちゃんやっぱり酷い!急に消毒液かけるなんて酷い!」

「まだ言ってたんですか」

ため息を吐いたサクラは救急箱を戸棚へとしまうと、今度は店の厨房に消えた。
両手にカップを持ってすぐに戻ってきたサクラはクダリに珈琲を渡し、その場に腰を下ろすと自分用に作った緑茶を啜る。

「何度でも言うよ!傷口に消毒液をかける時はまず声をかける」

「子供が相手じゃないんですから」

「でも僕は声をかけて貰わないと困る!」

「確かにクダリさん相手に応急処置をするのがどれだけ面倒くさいのか今、分かったので今度からは気をつけます

で、」

マグカップを机に置いたサクラはクダリに会って聞きたかった本題の話を始めた。

「何故、クダリさんが夜中に

しかもこんなライモンの外れにいるんですか?」

サクラの住む家でもある弁当屋・ライモン亭は主に娯楽施設やスタジアムの倉庫が並ぶ地域にあった。
その地域自体が街の華やかな景観を損ねる為に中心街からかなり離れているのだが、クダリは昼間会った時に駅で働いていると言ったが街の交通手段である駅は便利で人通りの多い中心街にある。
ならばこの付近に住んで入るのかとも思ったが、この地域は交番が置かれていないせいかライモンでもかなり危険な場所として住民達に知られている。

そんな危ない場所に態々住もう何て考える物好き(自分達を除いて)なんてサクラは知らない。

「まさかここら辺の倉庫に用がある訳じゃないですよね」

サクラの記憶が正しければこの地域にある倉庫は遊園地やスタジアムの物、地下鉄の倉庫があるなんて聞いたことない。

「うん、僕は倉庫に用はない。

サクラちゃんに用があって来た!」

「私に?」

「そう、僕を此処に泊め「却下」て」

「却下、却下、却下!

おじいちゃん!クダリさん帰るらしいから玄関の扉開けて
ゾロアークはサイコキネシスの準備」

テレポートでも良いわとサクラが言えばゾロアークもクダリを家から追い出す事に賛成なのか『合点承知!』と言わんばかりランクルスに姿を変えて準備していた。

「お?何だ。坊主帰るのか」

「帰らないよ!」

嫌だ嫌だ、駄々っ子の様に卓袱台に引っ付き離れまいとするクダリ。
そんな彼に対してサクラは容赦なくランクルスに化けたゾロアークに"サイコキネシス"を命じる。

「僕今日、帰る所ないの!お願いだから泊めて」

「ホテルにでも泊まれば良いじゃないですか!」

娯楽施設が乱立する街なだけにホテルの様な宿泊施設は充実している。
時間が時間だが探せば何処かのホテル位空いている筈なのだ。

「それは無理!」

「どうして?!」

「・・・財布を駅に忘れたから」

「・・・・・・」

「それなら仕方ないな」

夕食を作り終え、それらを運んできて老人は言った。

「まあ、一泊位なら良いだろ」

「おじいちゃん!」

「先生、取り敢えず机を下ろしてくれねぇか。
浮かんだままじゃ夕飯も食えないだろう」

「・・・ゾロアーク、サイコキネシスを解いて」

『分かった』

ゾロアークがランクルスからゾロアの姿に変わるとサイコキネシスも解けた。
浮いていたクダリと卓袱台は床へと落ちる。

「あ痛っ」

落ちるがまま落ちたクダリは痛いと喚き尻を擦った。
だが、サクラもゾロアークもクダリの事をを気にも留めない様子で遅い夕食の準備をする。

「ねえ、」

「はい」

そう言って渡されたのは一組の箸とお皿だった。
それらを思わず受け取ると「座るぞ」と老人に言われ、言われるがまま座る。

「じゃあ、まあ

いただきます」

「『いただきます』」


「いた、え?」
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