碧碧
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何やら外が騒がしい。
畑仕事をしていた彼等は何となく思った。
だが騒がしい事はこの寺ではひどく在り来たりな事なので今更気にする程でもない。
そんな事を考えていた一人である八百造がちらりと視線を移せば寺の騒ぎの主な原因1の次男坊はすぐそこにいて、野菜の世話をしている。
じゃあ、と原因2である四男坊を頭に浮かべたが今日は遊びに行くんや!と朝からいないのを思い出した。
大きくなる騒ぎに誰なんだと考えていれば同じ事を考えているのだろう、娘達を後ろに連れて室内から出てきた蟒と目があう。
「この騒ぎ、八百造さんとことも違うみたいやな」
蟒は原因1の柔造を見て呟き、八百造も蟒の後ろにいる原因3・4・5にあたる宝生三姉妹を見て蟒んとこも違うんやな、と思った。
「せやったら一体誰や・・・」
騒いだのは、と言った蟒に八百造は「原因やったらまだおる」と笑った。
ちょうどその時、「お父!」と駆けてくる志摩五男の廉造と子猫丸に蟒は納得する。
「どうした、廉造」
「~あかん!何て説明したらええやろか分からへん」
「と、とにかく付いてきて下さい」
早く!と八百造の服を引き、急かす廉造と子猫にただ事ではないと察した八百造が顔を蟒に向けると彼は無言で頷く。
「どないしたん?
何やあったんか」
緊迫し始めた場の雰囲気には合わない柔らかな声に廉造と子猫丸は八百造の服から手を離し、「和尚!こっち」と達磨をを引いた。
普段の飄々とした廉造、おっとりと大人しい子猫丸からは想像出来ない焦りように引っ張られる達磨の後を八百造と蟒が追う。
「おとん!」
廉造と子猫丸がいる先には竜士がいて、手には何故か旅行鞄、背中に何か背負っている。
「竜士、どないしたんや?背中に何を背負って・・・」
そこで達磨の言葉は止まった。
遅れて達磨達に追い付いた八百造や蟒、その息子・娘達も竜士が背負う者を見て言葉を失う。
始めは怪我した瓜坊か何かだと思った。
だが竜士が背中に背負っていたのは動物ではなく痩せ細った小さな子供。
「なんとい事や」
「寺の外で倒れとたんや!さっきまで嫌や嫌やって暴れとたんやけど急に動かんくなってしもた」
竜士から経緯を聞き、子供を抱き上げれば異様に軽い、軽すぎる。
皮膚から骨が浮きだし、まさに虫の息とも言えるか細い呼吸は誰から見てもこの子供が危ない状態だと言うことが解った。
これは一刻も早く病院に連れて行かなければと思った時、僧の一人が息を切らし此方へ駆けて来ると何やら蟒に耳打ちをする。
何度か頷いていた彼の眉間に皺が寄った。
「また何かあったんやな」
達磨は蟒の様子で察したのか、彼の言葉に蟒は頷く。
「その件は蟒に任せた。八百造は救急車を麓迄呼んでくれへんか」
「分かりました」
「柔造に蝮達はこの子等を頼んだで」
いつもなら互いに嫌だという二人だが事が事だけに珍しく「分かりました」と頼りがいのある返事をする。
「いつもこうやったら」、二人の父親である八百造と蟒からはそんな呟きが聞こえたがそこは敢えて無視し、各々がするべき事をするために動きだす。
「おとん・・・」
「竜士、さっきの話をきいとたやろ?はよう柔造と蝮に着いていき。皆お前を待っとる」
いつも聞き分けがいい竜士はこの日、珍しくすぐには聞かなかった。
強い眼孔で「俺も行く」と達磨に言ったのだ。
「やけどなぁ、竜士「俺も行く」」
「・・・分かった。やけど時を一刻も争うんや。途中で置いてかれても文句無しやで」