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碧碧

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「ほら、持ってきたぞ」

ドンと置かれた旅行鞄。
目の前に置かれた旅行鞄にメフィストは眉を寄せた。

「藤本、」

「何だ?」

「・・・いえ、何でもありません。態々ありがとうございます」

「どういたしまして」

メフィストの執務机前に設置された来客用ソファーに腰を下ろした藤本は煙草に火を付け吹かす。
息を吐けば上がる白い息、それを眺めていた藤本の頭に浮かんだのは

"青"

「いや、あれは」



"青緑"だ。



青と緑の間に揺れる

深い海を思わす青緑。

それを双眸に宿した少女の顔が頭から離れない。


何処かで見たような

見たこと無いような

目視したのは精々、一分かそこらである。
たったそれだけだと言うのに頭に残る強烈な印象は『何処かで見た事がある』という既視感のせいであろう。


「藤本!」

思考の海から無理矢理引っ張り出すメフィストの声に間を開けて「何だ」と尋ねる。

「聖騎士あろう者がぼんやり考え事ですか。

京に貴方好みの女性がでもいたのか?考え事何て珍しいですね」

メフィストはにやにやと笑っていた。
それが妙にムカつき、藤本は「違う」と否定する。

あの青緑の少女を女性と称すにはいささか無理もあったからだ。

「まあ、貴方がどんな女性を好んでいるか何て私には興味のない事ですが」

「言い出したのはお前だろ」

思わず突っ込む藤本にメフィストはわざとらしく咳払いをし、「そんな事よりも」と切り出す。

「貴方が回収してきた物なんですが」

「全部あっただろ?」

「ええ、全部ありました。

聖遺物は」

つい先日に起こった本部勤めの下二級医工騎士が起こした窃盗事件。
その事件で犯人とされた女は本部で保管されていた聖杯や聖杭といった聖遺物、グリモアの書を持ち出し逃走した。
バチカンはすぐに彼女の追っ手として藤本を派遣、何の縁か女を金剛深山で追い詰めたのだが女は悪魔堕ちをするも自害。
盗んだ本人が死亡した為、盗まれたモノを見付けるのは困難を窮めると思われたが幸いにも金剛山で寺を開く勝呂達磨が盗難品を発見。
それを藤本が預かりメフィストに渡したのだが

「聖遺物以外、武器と研究資料はどうしました」

彼女が盗んだ物は聖遺物だけではない。
下二級医工騎士がどうやって盗んだのか"最上位"が付けられた悪魔対向武器と研究資料も盗んでいるのだ。

「あー武器と研究資料な

知らね」

「は?」

藤本の言葉にメフィストは怪訝な顔をしていた。
彼は冗談ですよね?と尋ねてくるが冗談ではなく、達磨から渡された物は机に置かれた物が全てである。

そう説明すればメフィストは溜め息にも似た息を吐き出し、椅子に深く座り込む。

「困りましたねぇ」

彼とはそれなりに付き合いのある藤本から見ても珍しく、メフィストは顔に困惑の色を浮かべている。

「そんなにヤバイ物なのか?」

思わず尋ねてしまう程、彼は困惑の色を浮かべていた。

「それは私にも解りません」

盗まれた武器は最上の位が付けられてはいるが、バチカンには最上と冠する武器は数多くありその危険度も武器のタイプにより様々となっている。

「ですが、」

メフィストがバチカンから受けた命には必ず武器及び資料を回収する事と書かれていた。
一緒に盗まれた聖遺物やグリモアの書はついで扱いで、手紙を見ればバチカンがどちらを重要視しているかよくわかる。

「暫く、藤本にはこの件を担当してもらいます」

「はぁ?!」

マジかよ、という藤本の声も聞かずメフィストは部屋に部下を呼び寄せ机に置かれた聖遺物やグリモアの書を運び出された。
机に置かれた旅行鞄が無くなると下からは無惨に曲がり曲がった書類達が現れる。
それを摘まみあげ、指をパチンと鳴らせば書類は何事も無かったかの様に真っ直ぐな書類に変わった。

そして、そこでメフィストはやっと藤本を見る。

「彼女の最後を目撃したのは貴方何です。
仕事を適任だと思う人物に任せるのは当たり前でしょう」

「まあ、そうかも知れねぇけど」

こいつに言われると釈然としないのは何故だろう。
そう思いながら藤本は二本目の煙草をくわえた。

「ああ、だったらお前。

その盗まれた武器と研究資料がどんなものか調べといてくれよ」

「何故私が」

「仕事をスムーズに進める為には必要な事なんだ。

頼んだぜ名誉騎士様」

藤本の言葉にメフィストも釈然としない顔をしていて何処か悔しげにも見えた。
だが、何か思い付いたのだろう眉間に深く刻まれていた皺が和らぐ。

「分かりました。

此方で出来る限り情報を集めておきましょう」

その替わり、とメフィストは続ける。

「情報の内容、集める労力に見合った対価を頂きます」

「・・・別に良いが、そんな高い物は無理だぞ」

メフィストは名誉騎士ながら学園を経営する男である。
それに対し藤本は聖騎士であるが町の中心部から少し離れた所で修道院管理する神父。
いくら情報の対価と言われても余りに高い物は買えないし払えない、そんな金があるなら修道院の割れた硝子代に充てたい位である。
そこで藤本は思い出す。
そう言えば教会のステンドグラスも割れていた事を

「あー・・・今月も赤字かもな」

「赤字?一体何が赤字何です」

「いや、お前には一生縁のない話だろうから気にすんな」

「そうですか」

メフィストが椅子に座り直したのか、軋む音が聴こえた。
足を組み、意地の悪そうな笑みを浮かべメフィストは対価の件ですがと切り出す。
話が少し反れだしていただけに藤本は内心、覚えていたかと舌打ちしていた。

「対価は、藤本。

貴方の所の夕食に私を招待しなさい!」

「は?別に良いけど」

対価を求めるのがメフィストだったので高い物か珍しい物を所望してくるだろうと踏んでいた藤本はその要望に驚きを隠せない。

「後、夕食のシェフは燐君でお願いしますよ」

その言葉に藤本は全てを察し、ニヤリと笑った。

「何ですか藤本。

その顔は」

「いーやー・・・別に何でもねぇよ」

まだ残っていた煙草を灰皿に押し付け潰し、藤本は立ち上がる。

「んじゃ、帰るわ」

ポケットから鍵を取りだし部屋な鍵穴に差し込む。

「対価の件、絶対に忘れないで下さいね!」

「ああ、あいつにもちゃんと伝えておく」

ドアを引き、開ければ見慣れた修道院の廊下である。

「後、弟君にはくれぐれもご内密に」

「は?雪男に?何でだ」

「何でもって身の為です。

絶対に秘密ですよ」

メフィストの言葉にわけが分からない藤本であったが彼の必死さに思わず頷く。
じゃあな、と軽く手を振り扉を越えれば向こうの景色はメフィストの執務室でなく只の庭だった。

「おーい、今帰ったぞ」
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