碧碧
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼食の匂いに釣られ、呼ばなくても人が集まる。
一人、二人、
と続々と集まり、最後は竜士に呼ばれ部屋に戻った達磨で彼が畳に腰を下ろすとそれが合図だったかの様に皆が手を合わせる。
「いただきます」
誰が言ったのかそれに続き皆が食前の挨拶を済ますと沢山の箸が料理に向かった。
カチャカチャと食器がふれ合う音、
話し声、
人数が人数なだけに賑やかな食卓を一人ぼんやり眺めるのは碧。
彼女の前には皿も箸も、美味しそうな料理もあるのに料理に手を伸ばす所が箸さえ握ろうとしない。
「女将さん、その子は・・・」
気付いた蝮が碧の隣に座る虎子に尋ねた。
最後まで言わずとも蝮が何を言いたいのか分かった虎子は苦笑いを浮かべ碧の頭を撫でる。
頭を撫でられるがままにされている碧は飼い主に頭を撫でられる子猫にも見えた。
「この子は皆の後に食べるから気いしやんでええよ」
だが、蝮も何事か眺めていた子供達も気付いたからには気にせずにいられない。
無言で説明を求める子供達に溜め息をついた虎子は碧に分厚い本を渡して隣の部屋にいるように言った。
本を受け取り頷いた碧は従順に行動しいなくなると虎子は口を開く。
「あの子、誰かと一緒にご飯が食べられへんのよ」
虎子の話ではこうだ。
弱っていた碧の世話をしていて共に食事をする機会は何度かあった。
だが食事を出し、いざ食べ出すと碧は食事を摂る様子もなく固まったままで微動だにしない。
嫌いな物があるのかと尋ねればどれも好きだし美味しそうだと言う。
無理に食べさせるのもあれだからと様子を見つつ食事をしていれば先に食べた虎子の食事が済んだ。
すると今まで食事に手を伸ばさなかった碧の手が料理に向かう。
世話をする間、何度も食事という場面に遭遇したが碧のこの不可解な行動は食事の度に見れた。
「何で一緒に食べへんのか、ある日訊いてみたんよ。
そしたらあの子、」
『悪魔は同じ食卓にいるだけで汚れるから』
「皆の後に食べなくちゃいけないんだって」
さっきまで賑やかだった食卓が静かになった。
「そう言われたら何も言えんくなってなぁ。
何か気の訊いた事でも言ってあげられれば良かったんやけど」
余りにも純粋な目で言われたのだ。
今まで大人達に言われてきた事を信じ生きていた子供にそれは間違いだと言うべきか?
間違いだと言えばその間違いを信じ生きてきた子供はどう思う。
「あの青い瞳見とたら何も言えんくて・・・」
それはここにいる大人達も皆そうなのだろう。
誰もが深々と溜め息をつき、俯いている。
結局、間違いを正しても正さなくても彼等には後悔が生まれた。
こんな事ならその時に正しておけば良かったのか、考えれば考える程後悔が生まれる。
静か過ぎる食卓に子供達も思わず俯く。
「あほ臭いわ」
そう言って立ち上がったのは竜士だった。
立ち上がり竜士が向かったのは隣の部屋で、綺麗な姿勢で本を読む碧に近付くと腕を上げ、
叩いた。
子供が叩いたにしては良い音が聴こえた。
その音に竜士が何をしたのか察した虎子は慌てて隣の部屋に駆け込む。
「このど阿呆」
「ど阿呆はお前や!」
竜士が碧の頭を叩いた時より遥かに痛々しい音がした。
「自分より小さい女の子にあんたは何しとんのや!」
「こいつがど阿呆やから叩いたんや」
「そんなの理由になっとらんやろ」
この子は何考えとんのや、と我が子ながら信じられないと竜士を捕まえ碧から離す虎子。
その横をすり抜けて達磨は叩かれてぼうっとした碧に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
子供の力とは言え、叩かれても動じない碧に達磨は苦笑いを浮かべ彼女の頭を撫でた。
やはり撫でられるがまま身を委ねる碧は子猫っぽい。
「なあ、もう竜士を離したり」
「やけど!」
「普段は手より口からの子や、その竜士が叩いた位なんやから何か口より手が出てしまう程言いたい事あるんやろ」
諭すかのような達磨の口調に虎子は渋々ながら竜士を捕まえる手を離す。
達磨も碧の頭に乗せていた手を下ろし此方を見る竜士と向かい合わせる。
「何で皆と飯食わんのや」
「悪魔と人は同じ場所でご飯を食べちゃいけないから」
一緒に食べたら汚れるよ?と虎子の話と同様にブレのない回答だった。
「誰がそんな事を言ったんや」
「黒い服と白い服の人達」
「・・・お前は皆と一緒に食べたくないんか」
「私は、」
それまで坦々と答えていた碧が止まった。
何度かその大きな瞳を瞬かせて口元をおさえる。
「・・・でも、あの人達は」
「奴等は奴等や、俺はお前がどうしたいんか訊いとる」
長い前髪から覗く青い瞳は混乱しているかの様に見えた。
口元をおさえ、挙動不信にあっちを見たりこっちを見たり、とうとう俯いてしまった碧の肩を達磨が優しく叩く。
「竜士はそんな難しい事訊いとるわけやないねん。
私等は碧ちゃんと一緒にご飯食べたい、碧ちゃんは私等とご飯を食べたいか食べたないか」
「私は・・・」
気付けば皆の視線が碧に集まっていた。
その視線から思わず逃げたくなり顔を上げれば優しげな笑みを浮かべる達磨の表情。
「・・・私は、
私も、
皆と一緒にご飯が食べたい」
一人、二人、
と続々と集まり、最後は竜士に呼ばれ部屋に戻った達磨で彼が畳に腰を下ろすとそれが合図だったかの様に皆が手を合わせる。
「いただきます」
誰が言ったのかそれに続き皆が食前の挨拶を済ますと沢山の箸が料理に向かった。
カチャカチャと食器がふれ合う音、
話し声、
人数が人数なだけに賑やかな食卓を一人ぼんやり眺めるのは碧。
彼女の前には皿も箸も、美味しそうな料理もあるのに料理に手を伸ばす所が箸さえ握ろうとしない。
「女将さん、その子は・・・」
気付いた蝮が碧の隣に座る虎子に尋ねた。
最後まで言わずとも蝮が何を言いたいのか分かった虎子は苦笑いを浮かべ碧の頭を撫でる。
頭を撫でられるがままにされている碧は飼い主に頭を撫でられる子猫にも見えた。
「この子は皆の後に食べるから気いしやんでええよ」
だが、蝮も何事か眺めていた子供達も気付いたからには気にせずにいられない。
無言で説明を求める子供達に溜め息をついた虎子は碧に分厚い本を渡して隣の部屋にいるように言った。
本を受け取り頷いた碧は従順に行動しいなくなると虎子は口を開く。
「あの子、誰かと一緒にご飯が食べられへんのよ」
虎子の話ではこうだ。
弱っていた碧の世話をしていて共に食事をする機会は何度かあった。
だが食事を出し、いざ食べ出すと碧は食事を摂る様子もなく固まったままで微動だにしない。
嫌いな物があるのかと尋ねればどれも好きだし美味しそうだと言う。
無理に食べさせるのもあれだからと様子を見つつ食事をしていれば先に食べた虎子の食事が済んだ。
すると今まで食事に手を伸ばさなかった碧の手が料理に向かう。
世話をする間、何度も食事という場面に遭遇したが碧のこの不可解な行動は食事の度に見れた。
「何で一緒に食べへんのか、ある日訊いてみたんよ。
そしたらあの子、」
『悪魔は同じ食卓にいるだけで汚れるから』
「皆の後に食べなくちゃいけないんだって」
さっきまで賑やかだった食卓が静かになった。
「そう言われたら何も言えんくなってなぁ。
何か気の訊いた事でも言ってあげられれば良かったんやけど」
余りにも純粋な目で言われたのだ。
今まで大人達に言われてきた事を信じ生きていた子供にそれは間違いだと言うべきか?
間違いだと言えばその間違いを信じ生きてきた子供はどう思う。
「あの青い瞳見とたら何も言えんくて・・・」
それはここにいる大人達も皆そうなのだろう。
誰もが深々と溜め息をつき、俯いている。
結局、間違いを正しても正さなくても彼等には後悔が生まれた。
こんな事ならその時に正しておけば良かったのか、考えれば考える程後悔が生まれる。
静か過ぎる食卓に子供達も思わず俯く。
「あほ臭いわ」
そう言って立ち上がったのは竜士だった。
立ち上がり竜士が向かったのは隣の部屋で、綺麗な姿勢で本を読む碧に近付くと腕を上げ、
叩いた。
子供が叩いたにしては良い音が聴こえた。
その音に竜士が何をしたのか察した虎子は慌てて隣の部屋に駆け込む。
「このど阿呆」
「ど阿呆はお前や!」
竜士が碧の頭を叩いた時より遥かに痛々しい音がした。
「自分より小さい女の子にあんたは何しとんのや!」
「こいつがど阿呆やから叩いたんや」
「そんなの理由になっとらんやろ」
この子は何考えとんのや、と我が子ながら信じられないと竜士を捕まえ碧から離す虎子。
その横をすり抜けて達磨は叩かれてぼうっとした碧に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
子供の力とは言え、叩かれても動じない碧に達磨は苦笑いを浮かべ彼女の頭を撫でた。
やはり撫でられるがまま身を委ねる碧は子猫っぽい。
「なあ、もう竜士を離したり」
「やけど!」
「普段は手より口からの子や、その竜士が叩いた位なんやから何か口より手が出てしまう程言いたい事あるんやろ」
諭すかのような達磨の口調に虎子は渋々ながら竜士を捕まえる手を離す。
達磨も碧の頭に乗せていた手を下ろし此方を見る竜士と向かい合わせる。
「何で皆と飯食わんのや」
「悪魔と人は同じ場所でご飯を食べちゃいけないから」
一緒に食べたら汚れるよ?と虎子の話と同様にブレのない回答だった。
「誰がそんな事を言ったんや」
「黒い服と白い服の人達」
「・・・お前は皆と一緒に食べたくないんか」
「私は、」
それまで坦々と答えていた碧が止まった。
何度かその大きな瞳を瞬かせて口元をおさえる。
「・・・でも、あの人達は」
「奴等は奴等や、俺はお前がどうしたいんか訊いとる」
長い前髪から覗く青い瞳は混乱しているかの様に見えた。
口元をおさえ、挙動不信にあっちを見たりこっちを見たり、とうとう俯いてしまった碧の肩を達磨が優しく叩く。
「竜士はそんな難しい事訊いとるわけやないねん。
私等は碧ちゃんと一緒にご飯食べたい、碧ちゃんは私等とご飯を食べたいか食べたないか」
「私は・・・」
気付けば皆の視線が碧に集まっていた。
その視線から思わず逃げたくなり顔を上げれば優しげな笑みを浮かべる達磨の表情。
「・・・私は、
私も、
皆と一緒にご飯が食べたい」