幻影少女
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ある麗らかな日の午後である。
ミコト特製の昼食を食べて、ヨミとイタチは縁側に座ってただ空を眺めていた。
ナルトもサスケも食事を終えて、仲良く向き合いながら眠っている。
蒼い空に漂う白い雲。
長閑だね、とヨミは呟く。
「・・・そうでもないようだ」
塀の外から聞こえる沢山のざわめきにイタチは眉を寄せている。
だんだんと近づくざわめきにサスケがまず反応した。
不穏ともいえる外の雰囲気を感じ取ったのかぐずりだすサスケ。
そんなサスケを「心配するな」と横になっていた体を抱き上げあやす。
その様子を眺めていたヨミはナルトに視線を移した。
周りの雰囲気にいち早く反応したサスケに対し、ナルトは今だ夢の中。
しかも涎まで垂らしている。
「ナルト、あんたは大物になれるよ」
苦笑いを浮かべながらヨミはナルトの頬をつついた。
「こんな事しても起きないし」
誰に似たんだろ何て考えていれば、急に体が浮き上がる。
別に体が浮くような術を使った訳でもないし、使った覚えもない。
誰かに持ち上げられている感覚に気付いたヨミは顔を上げた。
すると動物を模した面を被り、黒いマントを着た怪しげな者が立っている。
自分を持ち上げた者の名前は知らないが、その者の役職位ならヨミでも、側にいたイタチでさえも知っていた。
「・・・暗部がヨミに何の用だ」
「イタチ、それは私のセリフだよ」
台詞を盗られたヨミは苦笑いを浮かべていたが、イタチは家に突然現れた暗部に不信感を抱いていた。
その不信感は無意識に懐に隠したクナイをイタチに握らせている。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ?イタチ
すぐ終わるから」
そう言ってヨミはあの九尾の事件以来、久し振りに"命令"をした。
"放して"、"消えて"と言葉を口にすれば暗部の者は動作を操り人形の様にしてヨミを下ろし、瞬身の術で消える。
一体何が起こったのか理解する間もなく暗部の者は消えて、クナイを構えていたイタチはそのまま固まっていた。
又もぐずりだしたサスケにイタチは気が付いて動きだす。
サスケをあやしながらヨミに視線を向けると笑って返される。
質問は受付ないと言わんばかりな極上の笑みにイタチは何も言えず見つめていた。
笑みを浮かべたヨミの後ろを取り囲むかのように不気味な動物の面が現れる。
「ヨミ!」
後ろ、とイタチが言った時にはヨミは床に押さえつけられていた。
腕を背中で固定され、口を布の様な物で塞がれる。
ヨミは声を上げたが口を塞ぐ布が邪魔をして言葉にならない。
「ん゛っ~~!!」
何とか逃れ様と足をばたつかせるが効果はなく床がヨミの足で叩かれる音だけが響く。
その音を聞き付けてミコトが台所から現れた。
家に上げた覚えのない暗部がいる事にミコトは驚いていたが、すぐにナルトを抱え、イタチとサスケを庇うように立つ。
「ヨミを離して下さい」
「それは出来ません」
「ヨミとうずまきナルトを連れて行くよう命令が入っています」
ナルトを預かろうと出された手にミコトは体の向きを変えてそっぽを向くのだが、肩を掴まれる。
「三代目火影の命令です」
その言葉に誰もが抵抗も反抗も出来なくなった。
ヨミは口を塞がれ、ナルトと共に運ばれたのは火影室ではなくヨミも見知らぬ真っ暗な部屋。
腕を後ろに回され、椅子に縛られたヨミ。
ヨミをそこに置いて暗部の者達は闇へ溶け込んでしまう。
気配もなく真っ暗な部屋に一人となってしまったヨミは天を見上げた。
どうしてこうなったのか
それはヨミにも分からない。
目まぐるしく変わる状況に対応してきたヨミだったが今回の事は堪えていた。
今までどんな状況になろうと隣にはミナトがいた。
彼が死んでもヨミの腕にはナルトがいた。
そのナルトはこの真っ暗な部屋に入る前に暗部の一人によって別室に運ばれたのだ。
今から何が起こるのか分からないこの状況でヨミは一人だった。
いっそ泣き叫んでしまおうか。
まだ十といかぬ子供が泣いていれば誰か情をくれるかもしれない。
ヨミにはここに連れてこられた時点で悪い事しか想像していなかった。
それもそうだ、情けをかけようと言うのならこんな真っ暗な部屋に子供を連れてくるだろうか?
答えは否だ。
そういえば、とヨミは今だ誰にも九尾の事や四代目夫婦の死について誰からも聞かれてはいない。
事情聴取とか、そんなものならいいのにななんて小さな希望がヨミにはあった。
ヨミは誰もいない真っ暗な部屋でこの先の事を考える。
何時までもうちはの家にお世話になるわけにはいかない。
私とナルトがいることで迷惑がかかるのは嫌だ。
既に迷惑はかかっている。
ミコトさんは隠しているがうちはの家に私たちを中傷する紙と石が投げ込まれた。
今はまだその程度だけど、その内に事態はもっと酷くなるかもしれない。
そろそろ、大人にならなくちゃね
他人に甘えるのは今日まで、誰にも迷惑をかけないようナルトを育てなければ
今度こそ、決心したヨミは真っ暗な闇を見つめる。
後ろに縛られた手で印を組み、小さな雷を作って縄を切れば何処からかどよめきが聞こえた。