｢世話役とな？何の事じゃ｣

煙管をくわえ、三代目は白い煙を吐く。
その白い煙の向こうではミナトが｢え？｣という顔をしている。

｢あの方は世話役を嫌がる。もしかしたらお主ならあの方が引き留めるやも、と思ったが｣

また、一息。
溜め息混じりの白い息が部屋にたちこめる。

｢お前のその様子じゃ、無理だったようじゃな｣

｢三代目・・・｣

どうしたものかと、思案する三代目にミナトは声をかけると｢なんじゃ｣と返された。

おかしい、

何かがおかしくないか？

三代目との間には確かな食い違いが起きているのをミナトは気付いた。
自分から声をかけておりながらミナトは三代目が言った言葉を思い出している。


｢・・・三代目、アカリに世話役を用意していたじゃないですか？｣

｢だから何の事じゃ｣

わしは知らんとそんな顔をしていた。
嫌な予感をミナトは感じ、｢ご冗談を｣と苦笑いを浮かべみるが三代目は本当に何も知らない顔をしている。

｢ミナトよ。お主、大丈夫か？顔が真っ青だぞ｣

｢いえ、俺は大丈夫です。


・・・それよりも｣

ミナトが机を叩いたのと部屋の扉が開いたのは同時だった。
入って来たのはいつも任務の受け付けをしている中忍で顔色は酷く青ざめている。

｢大変です！任務の委任状が一枚消えていまして｣

｢委任状が消えておるじゃと？｣

｢はい！それも、そこにいるミナトさんに任せようとしていた物で｣

中忍の言葉に三代目も何か悟った様ですぐさまミナトへと視線を送る。


｢・・・やられた｣

煙管を机に置き、深い溜め息をついて三代目は俯いていた。

｢すぐに彼女の家に向かいます｣

｢頼む。すぐに暗部も送ろう｣

ミナトは消える。
中忍は｢自分はどうすれば｣と言う目で立っていた。

｢今の会話を聞いたらする事は一つじゃろう。暗部に緊急要請じゃ｣

慌てて中忍は返事をし、駆け出して退出する。
三代目はごそごそと水晶玉をどこからか取り出し、手を翳すと水晶玉に里を駆け抜ける怪しげな三人組が映った。







体に伝う揺れにアカリは目を覚ます。
遠くなる里の景色に誘拐されたのか、とアカリは冷静に考えていた。
アカリが目覚めたのを運んでいる者も気付いた様で、聞き覚えのある声で｢御加減はいかが？｣と尋ねられる。

｢まあまあ、ですね。ところで私を何処に連れて行くつもりですか？｣

｢誘拐される事になれているって感じね。行き先は内緒よクライアントの約束があるから｣

他国の忍では無いのか、とアカリは少し安心した。
そして自分の状況、周りの景色を確認し、笑った。

｢貴女達が他国の忍じゃなくて良かったわ

もしそうだったら戦争が始まっていたのかもしれないんだもの｣

バチバチとアカリの体が電気が発生し、抱えていた女は思わず手を離す。


｢しまった！｣という女の声にアカリはほくそ笑んだ。