幻影少女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お父さん、お母さん
・・・っ!!」
暗闇でも目立つ黄色と赤を見付けたヨミは隼から飛び降りてそこへと駆けた。
のだが、駆つけたのは遅く、二人とも胸に大穴を開けて倒れている。
「嘘っ・・・」
としか言えなかった。
命絶えた二人の姿にヨミはただそこに立ち竦む。
「お父さん、お母さん」
視界が霞む。
ぼたぼたと涙が落ちる。
「私、まだ二人に言いたい事があったのに」
腕で涙を拭うのだが涙は止まらない。
嗚咽を漏らしヨミは地面へと膝をつく。
「お前がヨミか?」
「・・・ふえ?」
突如、名前を呼ばれてヨミは間抜けな声を出す。
顔を上げれば腹に巻物を巻いた蛙が側にいる。
「四代目とその奥さんから伝言をあずかっとる」
「二人から?」
思わず正座をして、残っていた涙も全部拭いた。
「おお、二人から
愛してる
だと」
「!」
「後、ナルトを頼むと」
「ナルト・・・」
ヨミはそこでやっと台座に乗せられたナルトに気付く。
ミナトとクシナの間に産まれた、ヨミの弟。
眠るナルトをヨミは抱き締めた。
「守るよ、絶対守るよ。
私の命に変えてもナルトは守る」
涙を浮かべてナルトを抱いたヨミに蛙はため息をついて「じゃあ、帰るけんの!」と消えた。
「里に帰ろっか、ナルト」
着ていた上着を脱ぎ、ナルトに巻いた。
二人の体をそのままにしておくのは偲びないがこのまま産まれたばかりのナルトを抱えていてはナルトが風邪をひいてしまうかもしれない。
先ずは里に戻って、一旦病院にナルトを預けて、とヨミは頭の中でこれからしなくてはいけない事の段取りをたてる。
九尾は里で暴れていた。
病院は無事なのか、家は、知り合いは、と色々不安はあるが考えてばかりいてもしょうがないと、空を旋回していた隼を呼びつけた。
隼に乗ろうとした時、ヨミはナルトの様子がおかしいのに気付く。
呼吸が荒く、熱っぽい。
産まれてすぐ、こんな森の中にいたせいなのか?そんな事を考えていると、突然体が重くなるような感覚にヨミは陥った。
立っていられない程ではないが体に鉛でもぶら下げているかの様な重さ。
「・・・まさか九尾のチャクラ?」
ヨミの体を襲う重さは確かに九尾を抑えつける時に感じたものと同じだった。
ナルトの体に巻いた服を捲り、術式の書かれたお腹に触れれば、ビリビリと痺れる様なチャクラを感じる。
封印された九尾のチャクラは既に漏れ出し、腕に抱いたナルトは泣き声をあげることもなくぐったりしていた。
「人柱力としての器が小さ過ぎたんだ」
例えばグラスに容量を超える水を注ぎ続ければグラスに注がれた水はグラスから溢れ零れる。
それが今、ナルトの中で起こっているのだろう。
溢れるのが無色透明の水であればいいがナルトの中で溢れているのは害がないとはいえない九尾のチャクラ。
苦しい筈なのに泣かないのは我慢しているとかではなく、苦し過ぎて泣けないのかもしれない。
現にナルトは眉間に皺を寄せていて顔色は悪い。
「苦しいよね、一人じゃ辛いよね」
隼をそのまま待たせて、さっきまでナルトが寝ていた儀式用の台座にナルトを置いた。
「大丈夫、こういう時の姉弟だもん。
嬉しい事も辛い事も全部、半分こだよ」
九尾が外で暴れていた時に使おうとしていた巻物をヨミは取り出す。
その内容を知ってか知らずか止めたミナト。
結局、使う事になりせっかく止めてくれミナトには申し訳ない気持ちだった。
「だけど、ナルトの為なら許してくれるよね」
そう呟いてヨミは巻物を開く。
この世で尾獣を操る事が出来る一族は両の指で数え、指があまる程。
人間を含む生き物を声だけで操れる一族でも尾獣を扱えるのはほんの一握りしかいない。
と、本に書いてあった。
扱えなくてもいい。
少しでもナルトが楽になれば、その願いだけでヨミは一族の秘術を使う。
ナルトの体を囲む巻物が光りだすとそれに合わせて水泡の様なものがナルトの体を包んでいた。
巻物の光が強まると水泡は狐の形を型どり、瞳は苦し気でヨミを見つめている。
「私の体じゃ一匹丸々は無理だから、半分こ・・・九尾には悪いけど
その体、半分もらうね」
悲鳴でもあげているかのような狐の表情をヨミはただ傍観していた。
苦し気な表情の狐はその瞳でヨミを捉えると包んでいたナルトから千切れる様に離れ、ヨミに向かって飛んでくる。
「さあ、お出で
私が受け止めるから」
ヨミに向かって飛んだ狐は体にぶつかる事もなく、ヨミの体に吸収されていくかのように消えた。
「・・・これで、ナルトも少しは楽になるよね」
体が燃える様に熱い。
内側から焼け焦げてしまうような熱をヨミは感じていた。
身体中に回る重さと痺れに体勢を崩すとヨミは地面に膝をつく。
荒い呼吸をしながらヨミはナルトを見た。
顔色は良くなり呼吸は穏やか、すやすやと眠るナルトに安心してヨミは笑う。
「良かった」
と、そこでヨミの意識は暗い闇の中へと落ちていく。
『 』
沈んだ意識の水底で大人達の騒がしい声を聞いた様な気がした。