幻影少女
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小さな里とはいえ、長い同盟を結び続けていた里が滅んだ事には木ノ葉の者達にも動揺は隠せなかった。
戦争も終わったばかりだと言うのに滅んでしまった里。
しかも、その里は他の里には無いという不思議な術を使うらしい。
ああ、勿体ないなと誰かが言った。
勿体ないなと誰かが言う。
確かに木ノ葉には動揺が走ったが走っただけだった。
沢山いる同盟の内、一つが無くなっただけで五大国に数えられる木ノ葉の里ではすぐにその里の話しは後から入った話題に流される。
ただ、一つだけ流されない話題はあった。
その話題は既に信憑性のない噂へと成り代わっていたが、木ノ葉の者達は密かに囁きあう。
「木ノ葉の里にあの里の生き残りがいるんですって」
あの里のかい?と八百屋の店主が尋ねると、買い物客は噂だけどねと笑った。
「流石に生き残りはいないだろう。あの里はあそこが有する術を狙われて襲われたんだ」
「里総出で抵抗した挙げ句焼き討ちに」
ああ、恐ろしいと話す。
「おじさん!この林檎ちょうだい」
話を遮る幼い声に嫌な顔もせず店主ははいよ、と返事する。
「ヨミちゃんか、今日はいくつ林檎を買っていくんだい?」
「半分個!
・・・するから一個!」
元気な声に店主はにっこりと笑ってじゃあ、オマケだと林檎とは違う赤い物を袋に入れた。
その赤い物を見るなり、ヨミはぎゃーと悲鳴を上げる。
「トマト嫌い!!」
「何だ、ヨミちゃんはトマトが嫌いなのか」
「うん、粒々するから」
「そりゃあ種のせいだな」
渋い顔をするヨミを笑いながら店主は袋に二個目のトマトを入れた。
また、悲鳴を上げるヨミに店主は「はいよ」と白い袋を渡す。
「うぅ・・・っ」
「そろそろ好き嫌いは無くさないとな」
代金を渡すと店主は頭を撫でる。
涙が出るほどトマトが嫌いなのか、目の端に涙を浮かべたヨミはお礼を言って店を出た。
「半分個!はんぶんこ」
歌にならない呟きを続けながら里の中を駆ける。
「あら、ヨミちゃん」
と、声をかけられ振り向けば赤ん坊を抱いたミコトと彼女の息子で赤ん坊の兄であるイタチが立っていた。
「おばさん!こんにちは」
「こんにちは」
「イタチもこんにちは」
自分より年下のイタチに近付き抱き締める。
子供ゆえ、加減なしのきつい抱き締めに悲鳴は上がらなかったがイタチはじっとミコトを見つめて助けを求めていた。
「ヨミちゃん、そういえばサスケとはまだ会った事はなかったわよね」
話しかけられ、ヨミの意識がイタチからミコトへと移る。
自然と力の抜けたヨミの腕からイタチはするりと抜け出した。
イタチが自分の腕から逃れたのにも気付かない程、ヨミの意識は"サスケ"へと向いていた。
サスケとは何ぞと言いたそうなヨミに向かってミコトは微笑む。
「サスケはね。私達の子供でね。イタチの弟なの」
「・・・弟!」
「母さん、サスケを」
ん、と伸ばし広げられたイタチの腕にミコトはサスケを預ける。
優しく、壊れ物を扱うかの様なイタチの動作にヨミは見入っていた。
「それがサスケ?」
「ああ、俺の弟だ」
「ぷにぷにでふわふわで不思議な生き物ね」
『可愛い』何て言葉では言い表せない。
同じ人間とは思えない程小さくて愛しく、守りたくなる存在感にヨミは感動にも似た声を漏らす。
「触っても」
「良い。だがそっとだ」
そっとだぞ、と何度も言うイタチにヨミは「分かってる」と笑った。
サスケに触れようと伸ばされた手は手前で止まる。
後、一センチ程で止まり動こうとしないヨミの手にイタチは「ヨミさん?」と頭を傾げた。
「ヨミちゃん、触ってもいいのよ」
ヨミが遠慮しているのではと気にしたミコトがそう言うのだがヨミの手は動かない。
「駄目なの」
突然の言葉に親子は何が?と顔を見合せる。
「駄目なの、凄く小さくて触るのが怖い」
ふるふると首を振るヨミ。
そんなヨミの指を何かが掴んだ。
ぎゅっと強くなく、引けば簡単に逃れられそうな弱々しい力。
振り向けば、髪色と同じ黒い瞳がヨミを見つめていた。