三代目の命で彼女の世話役になった、と女は説明した。


それでもまだ警戒を解いてないミナトに女は溜め息をつき一枚の紙を前に出す。

｢ミナトさんが信用なさらないのならどうぞこれを｣

出されたそれは任務の委任状だった。
委任状には確かにそれらしい任務の内容、目の前に座る彼女の写真、三代目火影の署名迄もある。

｢・・・本物だ。確かに三代目の署名ですね｣

何度も署名と書類を確認し、やっとそこでミナトの警戒は解けた。


｢疑ったりしてすみません｣

｢疑うのも忍の仕事、仕方ありませんよ｣

女はにこり、と笑う。

｢では、彼女の事をよろしくお願いします｣

日傘を抱き締める娘はミナトの背後から女を見据え少しだけ頭を下げた。
人見知りをしてはいない様でミナトは何故か安堵の息をつく。

｢じゃあ俺は行くね。・・・えっと｣

そういえば名前を訊いていない事に気付いた。

｢今更何だけど君の名前を訊いて良いかな？俺は波風ミナト｣

本当、今更だと自分でも思いながらミナトが尋ねると娘はじっとその蒼い瞳でミナトを見つめる。

｢・・・アカリ。私の名前はアカリ｣

｢アカリ、か。うん、良い名前だね｣

立ち上がったミナトは｢もう帰るの？｣と尋ねられ、彼はアカリの頭を優しく撫でた。

｢うん、三代目に任務完了の報告をしに行かないといけないから｣

アカリが自分の服を握ったのを見て苦笑いすると、屈み、彼女の掴む手を包みほどかせる。

｢また遊びに来るから今日は、ね？｣

｢・・・・・・｣

俯いたアカリにミナトは困った。
明らかにご機嫌をそこねてしまった事にどうしたものか、と考える。

ちょうどその時に机を挟み女と目があった。

『この後は私がどうにかしておきますから』

何て小声で言われ、ミナトは彼女に全て任せる事にする。


｢じゃあ、またね。アカリ｣

再度、アカリの頭を撫でてミナトは消えた。
彼の気配が外に、そして遠くへとなった時に女は笑い出す。

｢またね、ですって・・・もう"また"何て無いのに｣

ひぃ、可笑しいと腹を抱えて笑う女をただアカリは見つめていた。
自分を見る視線に気付き女は目を細める。

｢なぁに、その目・・・まあ良いわ。行きましょうか

アカリ様？｣


何処へ？何てアカリが思った時、その意識は頭に走った衝撃と激痛により途切れた。