寂しがり屋な娘の話
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「え~っと
あれ、何処だったかな・・・」
解任の話を聞き、自宅に戻ったアカリは家に着くなり押し入れの中を漁る。
埃っぽい押し入れに頭から突っ込んで、幾つも並ぶ葛籠開けては閉めてを繰り返していた。
「・・・あった」
押し入れの中を漁り出して数十分、漸くお目当ての物を見付けたアカリはそれが入った葛籠を手に移動する。
移動の途中に裁縫箱と宝石箱も抱え、居間で着席したアカリは葛籠に入っていた白い着物を取り出す。
その着物はアカリが昔の昔
それこそ半世紀程昔に遡った頃に初めて人から好意に貰った物で、幾つかある彼女の宝物の一つでもある。
その宝物の着物を机に広げたアカリは裁縫箱から出した鋏を握り、着物にその刃をいれた。
「外に出られなくなっても」
じゃきじゃきと宝物は無惨に布の切れ端へと変わっていく。
「せめて、
大切な人達を護れます様に」
必要なサイズに切られた着物に針を刺し、一針一針に渡す相手の事を思って布と布とを縫い合わせる。
一つ小さな袋が出来る度、紐を通し今まで集め貯めていたビー玉の中から一粒選んではその小さな袋に入れた。
一つ
二つ
たまに指に針を刺し、赤い玉粒の血を溢しながらもアカリは 只ひたすら縫い続ける。
三つ
四つ
五つと作り、最後の一個。
アカリは頭に彼の柔らかな金色の髪を頭に浮かべ布に針を入れた。
「痛っ」
もう何度目か、指先に走る鈍い痛みにアカリの涙腺は緩む。
指先の血と同様に目尻に溜まった涙の粒は溜まる所まで溜まると頬を伝い、雫となり縫い途中の布に落ちた。
始めこそ指先を刺した痛みに零れた涙はすぐに止まるかと思いきや止まる事を知らず瞳から頬、頬から布へと粒の涙を溢し続ける。
袖で涙を拭っても殆ど意味はなく零れ続ける涙にアカリはとうとう堪えていた嗚咽を漏らした。
「嫌、だよ
せっかく皆と仲良くなれたのに」
針を刺し、血が垂れていた指はもう血が止まり針を刺した痕も綺麗に無くなっている。
「会えない何て嫌だよ」
「だったらあのくそじじい共にそう言えばいいだろう」
自分以外、誰もいない筈の部屋から聞こえた声にアカリは瞳を丸くさせ俯いていた顔を上げた。
何処から声が聞こえたのか出所を探していれば開けっ放しの窓から突然生える腕。
その突然生えた手が窓枠を掴むと今度は足が生える。
あまりに突然過ぎる状況に呆然としていたアカリは途中、はっとなり「幽霊!?」と慌て後ろへと下がった。
「あれ、でも幽霊って足あったっけ?」
アカリがそんな些細な疑問に頭を傾げる間にも窓から生えた足は二本に増えている。
「こんな綺麗な足を見て幽霊だなんて相変わらず失礼な奴だね」
するりと家の中に入って来たのは酒瓶を携えた綱手だった。