寂しがり屋な娘の話
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それはすぐそこ迄近付いていて
「あら、」
何て声を溢したアカリの視線の先には野菜が並ぶ商品棚。
「また少なくなってる?」
並ぶ野菜の少なさは商品棚の底が見える程。
見るからに少ない商品の数をアカリは不思議に思いながら目当ての物を買い物篭にいれた。
商品が少なくなったのは今日に限った事ではない。
昨日も一昨日も、その前から少しずつ商品の品数が減っていた。
何時もなら商店街で買い物を済ますのだがその商店街もシャッターや営業停止の貼り紙が目立ち始め、困ったアカリは少し離れたスーパーに足を運んでいたのだ。
しかしスーパーも日が経つに連れて品揃えが悪くなっている気がする。
何故だろうと頭を傾げるアカリの目についたスーパーの閉店を知らせる貼り紙。
その貼り紙には後一ヶ月程でスーパーが閉店する事が書かれていた。
「嘘~・・・」
持っていた篭の中身がさっきより重くなった気がする。
今通っているスーパーが閉店したら今度は今より遠くのスーパーに通わなくてはならない。
その現実にアカリは貼り紙の前で打ち拉がれた。
商品の代金を払い、袋を両手に店を出た。
「こんな事なら暗部さんについて来てもらえば良かった」
買いすぎた袋の重さにアカリの両の腕も足も生まれたての小鹿のようにふるふるする。
アカリの外出はミナト又は暗部の同行が必須条件なのだが、ミナトは任務で不在。
暗部の二人は監視が厳しいので影分身を置いて一人出てきたのだ。
「う~・・・」
荷物にばかり意識が向いていてアカリは足元に意識を少しも向けていなかった。
「あ!」
その結果、足元の小石にも気付かずアカリは道端に転けてしまう。
重力に体をひっぱられるまま、受け身も取れず顔から地面に転けるアカリ。
鼻や額を擦りむき泣きたくなるのだがそれを我慢してアカリは素早く立ち上がった。
が、擦りむいた痛さに転けた恥かしさに泣き出したい所をアカリは我慢したというのに更なる追い討ち。
持っていた買い物袋が破けて買った物が道に散らばり落ちたのだ。
それを慌てて拾おうとする彼女を笑う周りの声。
その声にアカリの喉が「ひゅっ」と音をたてる。
涙のかわりに手から額から背中から汗が垂れて着ていた服を湿らせる。
汗を含んだ服が外気に触れて冷たく、下がりだす自身の体温にアカリは体を振るわせた。
「早く、拾わなくちゃ」
もう誰も笑っていない筈なのに耳には誰かの笑い声が残っていてアカリの身を苛む。
震える手で拾っては落としてを繰り返し、再度拾おうとした手より先にジャガイモを拐う手。
「・・・ミナトさん?」
何故ミナトの名が自分の口から出たのかアカリには分からなかった。
だが自身の身に何かあると毎回助けに来てくれる彼である。
また彼が来てくれたのかと、手の震えも治まり顔を上げれば
「自来也のとこの坊やじゃなくてごめんなさいね」
任務帰りであろう。
少し汚れた忍のベストを着た大蛇丸が其処に立っていた。
「大蛇丸、」
予想した人物ではなかった。
しかし彼は彼でアカリをとても安心させてくれる。
「私が拾うから」
転げて付いた砂埃を払い、大蛇丸はアカリが落とした物を全て拾い上げる。
「袋の予備とかあるかしら?」
「う、うん。ちょっと待ってね」
定員さんが少し多目にくれて余った袋を出せば、大蛇丸は拾った物をその袋の中に入れてその袋と残りの袋をアカリから奪い取った。
「貴女じゃこんなに持って帰れないでしょ?私が家まで運んであげるわ」
「でも、大蛇丸。さっき任務から帰ってきたばかりじゃ」
荷物を運んでもらう事を遠慮するアカリの言葉を彼は「平気」の一言で蹴り飛ばす。
「服とか切れてる所もあるし何処か怪我とかしてるんじゃないの?!」
それでも引き下がらないアカリに構わず歩き出す大蛇丸。
「だから平気だって言ってるでしょ・・・それは貴女がよく知ってるんじゃないかしら」
「そう、だけど」
大蛇丸の背中を追っていち足を止めて俯くアカリ。
その彼女の様子に気付いた大蛇丸はしまったと思い、慌てて会話を変える。
「私は本当に大丈夫だから
それに今回の任務だって里に近付いてきた他国の里の動向を調べる事だったから」
「他国の里?
何で他国の里が木ノ葉に近付いてるの」
先程とはまた態度を変えたアカリに大蛇丸は自分の口を押さえた。
「まだ何も聞いていないのね。
これで私はまた先生のお説教だわ」
長いのよね、先生のお説教と溢す大蛇丸の服をアカリは掴む。
「話を逸らさないで!木ノ葉で、木ノ葉の周りで何が起きてるの?!」
「それは、「それは火影様が直々に説明なさいます」」
一瞬にしてアカリの後ろに立ったのは家に置いてきた筈の暗部二人であった。
「・・・先生が?」
「はい。ですので」
「我々とご同行を願います」
差し出される手にアカリは一歩後退する。
その彼女の肩を掴んだのは大蛇丸で暗部について行くか悩むアカリの背中を彼は軽く押す。
「荷物は私が家に運んでおいてあげるから、貴女はこの二人について行きなさい」
「大蛇丸、」
「貴女が知りたい事は先生が全部説明してくれるから」
さあ、と推されたアカリは暗部が差し出す手を掴む。
「先生の所までお願いします」
手を掴んだアカリの体を抱えて暗部の二人はその場から消える。
残された大蛇丸は何時の間にか雲が立ち込めた空を見上げて
「・・・あの子から雨が降らなきゃ良いんだけど」
一人、曇天の空に呟いた。