寂しがり屋な娘の話
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「ただいま」
彼女の家なのに、何時の間にか訪れる度に「ただいま」と言うのがミナトの癖になってしまった。
その「ただいま」に「おかえりなさい」と笑顔でミナトを出迎えるアカリはこの間の騒ぎを少しも覚えていない。
「今日の夕飯は何だと思いますか」
フライ返しを片手に尋ねてきたアカリにミナトは何だろうと返しながらも自身の鼻を使い夕飯の献立を探った。
「ヒントは黄色です」
ほんの僅かとはいえ記憶を失ったアカリに動揺したミナトであったが自来也の話ではよくある事らしい。
特に生死をさ迷う様な怪我をした後等はその怪我の顛末をすっかり忘れてしまうのだとか。
「ワシの推測だが、大きな怪我をするとその経緯を忘れる事で怪我も無かった事にしとるのかもしれん」
と自来也はそんな事を言っていた。
それは推測等でなくその通りなのかもしれない。
現にアカリはカカシやミナトの確認の元心臓も呼吸も停止していたにも関わらず、停止から一時間後には目を覚ました。
翌日には元気になっていて、その回復の代償とでも言うのか彼女は記憶の一部を失っている。
つまり彼女は一部の記憶を代償に体の回復を行っているのか、と其処まで考えてミナトは思考を止めた。
自分でアカリの秘密は暴かないと言った筈なのに、気になる余り何時の間にか暴くとはいかなくても彼女の秘密を探ろうとしていたのだ。
「・・・職業病かな」
「何がですか?」
まさか自分の呟きをアカリに拾われる等とは思ってもみなくて、ミナトは話の話題を夕飯に逸らせた。
「いや、今日はオムライスかなと思って」
台所から廊下に甘い卵とケチャップの匂いが漂っていていた。
その二つの匂いから推理しただけだったので自信は無かったがアカリの表情を見る限り正解の様だ。
「正解です!」
驚きから笑顔に表情を変えたアカリはミナトの腕を引っ張った。
連れて来られた先は居間で、そこにはもう見慣れた犬と猿の面を被った暗部が二人と
「カカシ君?」
予想もしていなかったカカシの姿がそこにはあった。
「先生。先程ぶりです」
スプーンをくわえてオムライスにケチャップをかけるカカシは先程、リンやオビト達と共に解散したばかりだった。
そのさっき別れただけの彼が何故この家に、しかも暗部と共に夕飯のオムライスを食べているのかミナトには皆目見当がつかない。
「先生達と別れた後、この人と会って夕飯に誘われたんです」
ミナトの表情で彼の考えていた事を察したのか、カカシは誰かに聞かれたわけでもなく説明を始めた。
「丁度、夕飯作るのがめんどくさいと思ってた時だったんで誘いに乗りました。
特に他意は無いです」
「カカシ君は今からが成長期何だから確り栄養を摂らなくちゃ!
私の料理で良かったら何時でも食べに来てね」
「ありがとうございます」
止まっていたスプーンの動きを再開させるカカシ。
アカリはミナトを他の三人が食事する机に座らせて台所の奥に消える。
「カカシ君ってあんなにアカリちゃんになついてたっけ?」
「なついてるってなんですか。
俺はあの人のご飯が美味しいのは知ってるからお言葉に甘えただけです」
「ふーんあのカカシ君が他人に甘えるって珍しいね」
そう言えばカカシはばつが悪そうに食べ掛けのオムライスの皿を持ってミナトに背を向けた。
照れているのか恥ずかしがっているのか表情は分からないが珍しい一面を見せたカカシに微笑みを浮かべていれば、そっぽを向いたままの彼から思わぬ反撃。
「先生こそ任務とは言えこの家に入る時はただいま、夕飯は毎日相伴をしてって明らかにあの人の事を気に入ってますね」
「気に入ってるって、そんなカカシ君。僕達の関係はあくまで任務あってのものだよ」
と必死に弁解するのだが、内心ミナトは何故自分はこんな言い訳がましい事を必死に言っているのか不思議にも思う。
「そこの暗部の人達から聞きましたけど此処には頻繁に来てるんだとか」
「それが俺の任務だから」
「任務と言っても先生のこの生活、まるで同棲しているみたいじゃないですか」
「だからこれは「誰が同棲?」」
聞こえた声の主は両手にオムライスの乗った皿を持ち、台所の入り口に立っていた。
何でもないと言うミナトの前にアカリは頭を傾げながらオムライスを置く。
「私には話せない事なんですか?」
そう言って悲し気な表情を浮かべたアカリにミナトは胸に少しの違和感を感じた。
何だ今の違和感はと、自身の胸に手を当てても先程の様な違和感はなくてミナトは気のせいかと自己完結をする。
「話せないというか言えないですよね」
「カカシ君・・・」
先程の会話の仕返しか、スプーン片手に意地の悪い笑みを浮かべた教え子の反撃にミナトは大人気無いと分かりながらも彼にはいつか反反撃する事を心に決めた。
「もしかして、ミナトさん。
何方かと同棲なさるんですか?」
「え、」と声を上げたにも関わらずアカリの憶測は進みに進む。
「実はもう結婚間近のお相手がいらして・・・ああ、だったら私知らないながらにお二人の時間を邪魔してたんですね!」
「アカリ・・・ちゃん?」
ミナトの声は届かず憶測は妄想に変わり、一人俯いて何やらぶつぶつと言っていたアカリは顔は上げて
「挙式は何時のご予定で?」
と笑って尋ねる。
同棲という単語からかなり飛躍したアカリの問いにミナトもカカシも傍観していた暗部も驚いていた。
「結婚式の際は私も呼んで下さいね」
「あのね、アカリちゃん」
「そう言えば、自来也君はこの話知ってるんですか?」
「アカリちゃん、」
「ミナトさんと結婚する方ですからきっと素敵な人何でしょう」
「俺の話を聞いて・・・」
結局、アカリの勘違いを解くのにまる三日かかったとかかかってないとか。