寂しがり屋な娘の話
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私は普通の人間じゃない。
長く生きてる内に納得した。
普通の人間には長すぎる寿命何てないし怪我を負えば死んでしまう事があって、私とは真逆だった。
「ミナトさんって楽しい人だね」
アカリの溢した言葉を隣にいた自来也は鼻で笑う。
「あいつは只のお調子者だろ」
「でも、何時も私の事を気にしてくれるし心配してくれる」
「・・・それがあいつの仕事だからの」
自来也は少しキツい事を言ってしまったか、アカリの横顔をちらりと見れば彼女は湯呑みを手に微笑みまた「でも」と続ける。
「何時も普通の人間みたいに、普通の女の子みたいに扱ってくれて嬉しいの」
いくら事情を知らなくても"普通"の扱いは初めてだった。
普通の人間として接せられ、気にしてもらえてアカリは自分が彼の扱いの通り普通の人間なのではと錯覚を起こす程。
「私が、
普通の女の子なら良かったのに」
アカリの言葉に自来也は目を丸くさせる。
「アカリ、お主、まさかミナトの事を」
彼女との付き合いがそれなりにある自来也でも今まで彼女の口から"普通の女の子"だったらなんて言葉を聞くのは初めてだった。
普通の人間に憧れていても普通の女の子に憧れを抱いた事も無かった彼女が
「とうとう、春が来たのかも知れんのぉ」
「何で春?」
少し切なく、それ以上に感慨深く一人頷く自来也にアカリは頭を傾げる。
「何時か、
何時かミナトさんに本当の事を話せる日が来るかな?」
その時は恐がらず怖れず
何時もの様に"普通の女の子"として接してくれるだろうか。
きっと何時か、
「アカリはワシと二人の時に自分の秘密を何時かお主に話す事を考えておった。
只、アカリも今まで色々な事があって自分の秘密を他人に話すのにはかなりの恐怖を感じとるようでな。
けっしてお前を信用してる訳ではないんだ。
しかし、どうしてもお前やそのちっこいのがアカリの秘密全てを知りたいと言うのならワシがアカリの代わりに知ってる事全てを話そう」
知りたいかと尋ねられ、俯いていたミナトは顔を上げて
「先生とは前に居酒屋で話しましたよね」
笑った。
「俺はアカリのちゃんが持つ秘密を暴こう何て思っていません。
確かに今回の事で驚く事は沢山ありましたけどアカリちゃんが自分から俺に話してくれるまで待ち続けます。
彼女が話してくれる迄に沢山の時間がかかっても」
扉が軋み開く音が聞こえる。
その方を見れば白衣を着た綱手の白い背中が廊下の闇に消えかけていた。
「師が馬鹿なら弟子も馬鹿だね」
心底呆れた綱手の声。
今に廊下の闇に消えてしまいそうな綱手を自来也は彼女の名を呼んで引き留めた。
「アカリはお前にも会いたがっておったぞ」
部屋の扉が閉められる。
「今更どんな顔をしてあの子に会うっていうのさ。
私はあの子を傷付けた一人何だよ」
閉まる扉の隙間から綱手の悲しそうな顔が見えて、扉は閉まった。
自来也はため息にも似た深い息を吐き出す。
「馬鹿はどっちだ。あんな昔の事を今も引き摺りよって
んで、お前達はどうする。
三代目から聞いたがかなり大変だったんだろ」
「俺はまだ少し此処にいます。
カカシ君もまだ此処にいたいみたいだし」
カカシはアカリの眠るベッドの側で彼女を見つめていた。
死んだ筈のアカリが起きた時はミナトよりも動揺を見せたカカシだが今は落ち着いていて、病院に入った時よりも顔色はよくなっている。
「そうか、ならワシはお前等の椅子を持ってきてやろう」
「わ、先生珍しく優しいですね。
男には優しくしないんじゃないんでしたっけ」
「今回だけだ!」
息を巻いて病室を出た自来也。
部屋に残ったのはミナトとカカシと眠るアカリだけ。
「先生、この人生き返ったんですよね?」
「うん。俺も詳しくは分からないけどさっき一度、起きたしね」
「・・・良かった」
小さく溢したカカシの言葉にミナトは彼の頭を優しく撫でる。
「生き返った時は驚いたけど、生き返ってくれて本当に
良かった」