あ、そうだ。

道を行き交い人達を見てミナトは思いつく。

団子を気に入ったのか、ゆっくりと食べている娘に｢ちょっと待ってて｣と言って店を出た。

人混みに紛れるミナトを娘は見送る。

｢あら、ミナトさんは？｣

店の女将に話かけられ、娘はわたわたと焦りだす。

｢えっと、あの、すぐに帰って来るって｣

｢そうなの。こんな可愛い子置いてく何てまた呼び出されたのかしらね｣

ふふ、と女将は笑い店の奥に入ったかと思うとまたすぐに戻って着て娘の前にお団子をだした。

｢あんた美味しそうに団子を食べるからおまけだよ｣

お食べ、と渡され娘は嬉しそうに団子を受け取った。



｢ごめん！待たせたかい｣

本当にすぐだった。
帰ってきたミナトに女将は｢女の子を待たすもんじゃないよ｣と背中を叩いた。
その痛そうな音が店に響くと娘は苦笑いを浮かべる。

｢痛っ・・・｣

｢・・・・・・｣

ミナトは苦笑いを浮かべた娘と目が合い笑う。


｢女将さん、お勘定｣


店を出て眩しく照り付ける太陽に目を細めた娘にミナトはそれを広げ差し出す。
真っ黒な日傘を娘は何だと言わんばかりに見詰めている。

｢この時季の太陽は女の子の肌に大敵だってリンが言ってたから｣

どうぞ、と笑顔で渡され娘は何も言わず受け取った。

｢目的地はもうすぐだから｣

行こう、とミナトは歩き出し、娘もその後をついた。
そしてまた娘の質問が始まる。

｢あれは、なに？｣

｢あれは公園だよ｣

｢あれは？｣

｢あれも忍具屋だね｣


あれは、これは、と話している間に目的地に二人はついた。
二人の前に現れたのは木造の一軒家。

｢荷物は三代目が用意してくれてるらしいから
足りない物があれば三代目が言って下さいって｣

話を聞いた時はどうして三代目がこんなにも世話を焼くのか疑問に思ったミナトだが、ここに着くまでの道のりでその疑問は納得した。


本当にお姫さまなのかも


何て事を考えながら、ミナトは｢入ろうかと｣家へ一歩足を進めるのだが、そこで足は止まった。
ミナトが急に止まったせいでまたも鼻をぶつける娘。
彼は家に厳しい視線を送りながら娘を庇うように立つ。

｢・・・今から絶対に俺から離れないで

いいね｣

穏やかでないミナトの表情に娘はただ頷く。
娘を見てミナトは一瞬だけ先程と同じ優しげな表情を見せた。

｢大丈夫。何があっても俺が君を守るから｣

家に入るから傘を閉じてという指示に娘は手こずりながらも傘を閉じる。
ミナトはクナイを片手に玄関の扉を開けた。


｢お帰りなさいませ｣

｢｢へ？｣｣

玄関で三つ指付けて二人を迎えた女性に間抜けた二人の声が重なった。