｢で、そのアカリ殿が日向の宗家に何用か｣

そう言ったヒアシの言葉には警戒が滲み出ていた。
それもそうか、とアカリの後ろに控えていた大蛇丸は思う。

こんな夜中に、屋敷の裏口から忍び込まれたら誰でも警戒するわ。

この状況をどう打開するのかアカリを見上げれば、アカリは素直に

｢落とし物を探しにきました｣

と答えていた。
そして、｢えいっ｣何て掛け声が聴こえて大蛇丸はまさかと声を上げる。


｢？！ちょっと待ちなさいアカリ。貴女、着地何て｢きゃっ｣出来るわけないわよね｣

茂みが揺れる音とアカリの悲鳴に大蛇丸も屋根から降りた。
アカリを見れば見事に茂みにキャッチされていて、軽く目を回している。

｢大蛇丸・・・私、やっぱり忍には向いてないみたい｣

｢知ってるわよ。そんな事

ほら、手を出して｣

出された手を掴み、アカリを立ち上がらせ様としていれば

｢危ない｣

とアカリが呟き、背後ではクナイが刺さる音が聴こえた。

振り向けば背後には木の壁。


立ち上がったアカリが木の壁に手を添えればそこから腐りだし、人一人が通れるどあろう穴があく。

｢そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか｣

アカリは一体どんな顔をしているのか後ろに立つ大蛇丸には分からなかい。
だが、日向ヒアシの表情を見る限り"恐ろしい"表情をしているのだろう、と大蛇丸は思う。

彼の表情が恐怖に染まっていた。

｢怖がらなくても・・・あ、もしかして術が使えない事に驚いているのかしら｣

アカリはのんびりした声で呟く。
大蛇丸もアカリの言葉には驚いて試しにチャクラを練ってみたが上手く練れず、チャクラは途中で消えてしまう。

｢そういう結界を張ったから｣

｢・・・だから一人で大丈夫って言ったのね｣


｢こんな事をして何が目的だ｣

｢さっきも言った通り、忘れ物を

昼間に見ませんでした？｣


アカリは尋ねる。
指で小さな穴を作って

｢これ位の透明なビー玉｣

覚えがあったのだろう、ヒアシは確かに知ってるという顔をした。
彼は踵を返し、屋敷の中へ戻るとすぐに何かをつかんで戻ってくる。

｢これの事でしょうか？｣

警戒しながらも前に出されたのは紙に包まれた透明なビー玉で、これだと叫んだアカリは目を輝かせた。

｢やっぱり日向に落としてたのね！良かった～｣

ビー玉を手に取り、くるくると周り喜ぶアカリ。
ビー玉一つで此処まで喜べるのは彼女ぐらいだろうと大蛇丸は思った。
呆然とアカリを見るヒアシも同じ様に思っているだろう。

未だ喜んでいるアカリは回るのを止めてヒアシに近付くと、彼の手を握った。

｢見付けて拾ってもらったし、何かお礼しなくちゃ

何が良い？ヒアシ君？｣

木ノ葉の名門とも言われた一族の長を『君』付け。
それにヒアシは顔を歪め、大蛇丸は盛大に吹き出し笑う。

｢え、何で大蛇丸は笑うの？

え、え？｣

ヒアシと大蛇丸の顔を見比べてアカリはそんなに変な事を言ったのかと頭を傾げる。
笑って満足した大蛇丸は目に溜まった涙を払い自分が笑った訳を困惑するアカリに説明した。

｢アカリからすれば確かに子供に見えるかもしれないけれど彼はちゃんと成人した大人よ。
それを『君』付けするのはちょっと・・・ねぇ｣

大蛇丸が分かる？と尋ねれば分かった、と返ってくるのだが

絶対に分かってないわね

と、アカリの表情を見て大蛇丸は思った。
いくら言ってもアカリにはヒアシの様な大人でも子供にしか見えないのだ。



｢そ、そんな事よりも、

お願い何が良い？ビー玉のお礼に何でも叶えて上げる！｣