目が覚めて体を起こした。

何故か頭が痛い。

喉は渇いていて声は出にくくて、
何故か昨日の記憶がない。


｢昨日は確か大蛇丸と家々を回ってた・・・よね？｣

多分、そうだと思うのだがそれを確信に変える記憶がないのだ。
どうしてだろうと考えるながら冷蔵庫を開けて、作り置きしておいた麦茶をグラスに注ぎ一気に飲み干す。

｢さて、朝食を作らなくちゃ｣

卵を掴み、｢オムレツと目玉焼きどっちが良いですか？｣なんて振り向き尋ねたのだが返事はない。

｢あ、そう言えば今は誰もいないんだった・・・｣

そう呟くとアカリは思わず自分の口元を押さえる。








　誰　も　い　な　い








｢誰も・・・｣





　い な い





そう自覚した途端に息苦しさを感じる。
動悸が早まった気がするし、手が震えていた。

ぐしゃり

という音と共に右手が気色悪さを感じ、見れば右の手で持っていた卵が手の中で潰れている。

それを見て、アカリは｢あはっ｣と笑いを漏らす。

｢あは、あははは

ははは・・・｣

笑い声を上げたアカリは床に膝をつくと潰れた卵も気にせず床へと寝転んだ。


駄目だ。体が動かない


辛うじで手先や目、首なんかは動くのだが立ち上がる動作迄は出来ない。

｢自覚した途端これか、

弱いなぁ私｣

卵を潰してしまった手が気持ち悪い。
手を洗いたいと思うのだが起き上がれない。

｢もう良いや。

二度寝しちゃお｣

考えるのが面倒臭くなり、アカリはゆっくりと瞼を閉じる。

｢　　　｣


ここから出してと叫んだ。

お願いだからと何度も何度も

暗い部屋で見世物小屋の様な檻に入れられて

片足を鎖で繋がれて



見世物小屋ならまだマシだと思った。
見世物には人が集まる。

だけど私は一人で誰もいない


一人は嫌、


一人は怖い、


一人は寂しい。


誰か、誰か


お願いだから、
私を一人にしないで




｢アカリ、｣

誰かが私を揺さぶる。
うっすら開いた視界はぼやけていて右手が何故かべとべとしていた。

｢アカリ！｣

気付けさせようと自分の頬を軽く叩く彼を見てアカリは思わず笑みが溢す。

｢大蛇｢良かったわアカリ｣丸・・・｣

少し苦しくなる位抱き締められてアカリは何事かと思った。
ふと、べとべとする右手を見れば乾きかけた卵の黄身と白身で汚れていて寝る前の事を思い出す。

｢迎えに来たのに返事はないし家に入ったら眠っているし

凄く驚いたのよ｣

｢うん、ごめん｣

何とか動かせる手先で大蛇丸を撫でようかと思ったアカリだが左手は体に挟まれて動かせないし右手は卵まみれで諦めた。
そう言えば家が埃っぽい気がするなと大蛇丸の言葉に適当な返事をしながら辺りを見渡せば、勝手口のあった場所にぽったかりと空いた穴。


｢・・・大蛇丸、あの穴は貴方が空けたの？｣

｢ええ、そうよ。結界を解くのが煩わしくてマンダで

、ね｣

｢・・・・・・｣


大蛇丸の言葉に色々突っ込みをいれたくなるアカリであったが体はだるく、目覚めた今も体はほとんど動かない。
もう、どうでも良くなって大蛇丸に眠る事を伝えるとアカリは本日三度目となる眠りに入った。

眠りに落ちる際で大蛇丸が何か言っている気はしたが気にしない。

こういう日は眠るに限るのだ。