｢何が愛だ


くだらない｣

部屋の物影から出てきたカカシはリンの隣に迄来ると、ミナトがいた場所を見つめる。

｢くだらないって・・・カカシ。先生にやっと春がきたのに｣

｢春でも何でもない。先生はああ見えて真面目だから様子を見に行っただけだろ｣

そんなわけないと言い切ったカカシにリンは小さく｢分かってないなぁ｣と呟いた。














｢先生、あれほど玄関にって言ったのに｣

下り立った場所はアカリが眠る場所のすぐでミナトは慌てて靴を脱いだ。
ぐっすりと眠るアカリにミナトは｢良かった｣と安心する。


ミナトは自分の変わりであるアカリな護衛を誰が勤めているのかは三代目から聞いてはいないが見れば分かる程、厳重に結界が張られているようで安堵した。
結界を張った術者に勘違いされる前に戻ろうとした時、確かに


｢ミナトさん｣


と呼ばれた。
まさか、起こしてしまったのかと声の主であろうアカリを見るのだが寝返りを打っただけで起きているようには見えない。

｢何だ、寝言か｣

｢ミナトさん｣

呼ばれて、返事をして思わず振り向いた。
そこにあったのは先程迄はなかったアカリの顔で、頭を掴まれたと思うとそのまま力強く引かれて




｢え？｣




唇に何かが触れた。



柔らかく



熱くて




甘い香りのする



咄嗟に何が起きたのか分からないミナトはアカリが凭れた勢いで後ろへと倒れる。
自分の胸には何事も無かったかの様に眠るアカリがいて、唇にはあの熱い感触。

一体、今。何が起こったのか考えようとするだけで体が熱くなる。

｢あ、え？｣

体に溜まった熱が頭に昇ってきてミナトは目が回るかのような感覚を感じた。

｢先生、｣



｢先生！｣

ガクガクと揺さぶられてミナトははっと気付く。
前には何やら怒っているリンと呆れ顔のカカシが立っている。

｢あれ、リンにカカシ君｣

どうして此処に？何て尋ねればリンは青筋を浮かべてカカシはため息をついていた。

｢先生！何時まで寝惚けているんですか
此処は任務先の大名の家、私達がいるのは当たり前です！！！｣

リンの言葉にミナトは辺りを見渡すと確かに草むしりの大変な大名の屋敷。

｢本当だ。いつのまに｣

｢・・・・・・はぁ｣

怒鳴られてもまだ何処か上の空なミナトにリンは大きなため息をついて｢私達、もう終わったので移動しますね｣と二人を連れて草の生えている場所へと移動した。
歩きながらちらりとミナトの様子を伺えば、声をかける前と同じように雑草の先だけをむしっている。


｢先生、一体どうしたのかしら
昨日帰ってきてからずっとあの調子なのよ｣

｢正に心ここに有らず、だな｣


｢先生ってば誰かにフラれたんじゃねぇの｣

可哀想に、何て言いながらも笑うオビトの言葉にリンとカカシは顔を見合わせた。
多分、二人とも考えている事は同じだ。

まさか、そんな

｢｢まさかね/な｣｣