｢アカリはおるかーっ

ミナトからアカリが一人だと聞いてのぅ｣

戸のノックは軽くすまし、開いていないと分かった自来也は玄関から庭へと回った。
寝とるのかのぅ、なんて返事のない理由を考えながら庭へと回っていれば見慣れた長い黒髪が見えた。

｢なんだ。やっぱりいたか

おい、アカリ！土産を持って・・・｣

そこで自来也は固まる。
アカリと大蛇丸のキスシーンを見てしまった自来也は驚いて土産を落としてしまったがそれを気にせずアカリへと近付いた。
二人を引き剥がしアカリを見れば緩みきった赤い顔、明らかに酔っている。

自来也はため息をつき、大蛇丸を睨んだ。

｢大蛇丸、どういうつもりだ｣

｢どうもこうも酔っぱらったアカリにキスされただけよ｣

｢こうなると分かっておって酒を飲ませたのか｣

そう問えば大蛇丸は｢そうかもしれないわ｣と答え、自嘲にも似た笑みを浮かべていた。
だがその表情はすぐに消えて大蛇丸は自来也を見据える。

｢忍が感情を表に出すなんて、忍失格よ｣

｢おかしいのぅ。これでも抑えておるつもりだが｣

笑おうと思っても笑えない。
怒りが沸騰した水の様に沸き上がってきて握った拳が今にも大蛇丸を殴りそうだった。

そんな自来也を見て大蛇丸が呟く。


｢・・・本当に駄目ね｣

｢何が駄目だと言うんだ｣

｢私も貴方も、綱手もみんなアカリの事となると冷静でいられなくなる｣

いつの間にか床で寝息をたてるアカリの黒髪を大蛇丸は撫でた。

｢当たり前だ。アカリはワシらにとって大切な仲間だろ｣

自来也の言葉に大蛇丸は笑った。

｢仲間、ねぇ・・・そんな事言ってるのは貴方位よ？自来也｣

｢何だと｣

｢いつまでも子供みたいな事を言って、本当に成長しないわね｣

呆れた様な哀れむかの様な目をした大蛇丸は寝息をたてるアカリを抱き上げて部屋の奥へと入って行く。
それを慌てて止めようとした自来也を｢何よ｣と睨んだ。

｢何するつもりだ｣

｢何するつもりって、

布団に寝かせるだけよ｣

入った部屋には布団が既に用意されていて、大蛇丸はまるで母親の様な動作でアカリを布団に寝かせた。
布団に寝かされたアカリは寝返りを何度かうって落ち着く。
そんなアカリに大蛇丸はそっと掛け布団をかける。

先程のキス騒動もあり、思わず早とちりをした自来也は気まずそうに頭をかく。

｢・・・すまんのう。ワシの早とちりだった｣

｢本当ね。私は貴方と違ってアカリの寝込みを襲ったりしないわよ｣

｢！ワシは寝込みを襲ったりしとらん｣

｢言い切れるの？｣

｢・・・・・・｣

反論出来なかった。
自来也には既に一度だが前科があるのだ。
無言のまま部屋を出ていく大蛇丸の後を何となく付いて行けば先程迄いた縁側に戻ってきた。

飲んでいた酒瓶や杯を片付ける大蛇丸を見て自来也は｢帰るのか？｣と尋ねる。

｢ええ、この家にはもう結界を張ってあるから大丈夫だと思うのそれに｣

と大蛇丸は空を指差す。

自来也は庭に出て空を見上げれば梟だろうか、それが何処かへ飛んでいく様子もなく家の上で旋回している。

｢さっきのが先生にも見られていたみたいなのよね｣

さっきのとはキス騒動の事だろう。
それを見られたという事は

｢きっとお説教だわ｣


大蛇丸はめんどくさそうに言った。