掴まれた足が自由になって体が浮く。
部屋の外で待っていた筈の大蛇丸の顔がすぐ近くにあって、アカリは自分が大蛇丸に抱き上げられている事に気が付く。

｢その汚ない手でアカリに触らないでくれる？アカリが汚れるわ｣

大蛇丸の鋭い眼に睨まれた婦人はまるで蛇に睨まれた蛙の如く固まっていた。

｢大蛇丸どうして・・・｣

｢あまりに長いものだからさっきみたいに絡まれているのかと思って見に来たのよ。

見に来て正解だったわ｣

帰りましょう、と大蛇丸が言えば辺りが煙りに包まれる。
視界が煙りで包まれるる瞬間に婦人と目があった。

何かを叫んでいる。

だが何も聞こえない。
煙りに噎せて目を思わず閉じた一瞬で景色は薄暗い部屋から目映い光が射す外へと変わっていた。


｢日射しが強いわね。日で焼ける前に何処かお店に入りましょう｣
視線を空からアカリへと移した大蛇丸はアカリが持つ日傘に気付いた。

｢大蛇丸何か言った？｣

｢・・・何でもないわ。それよりもその日傘、どうしたの？｣

｢あ、この日傘？ミナトさんがくれたの『この時季の太陽は女の子の肌に大敵だ』って言って｣

可愛いでしょと、アカリは日傘がお気に入りの様でくるくると回す。
嬉しそうに笑ったアカリを眩しいものでも見るかの様に目を細め大蛇丸は見ていた。

｢自来也の所の坊やがねぇ｣

｢さあ、大蛇丸。次の家に行きましょ！｣

｢休憩しなくて大丈夫なの？！｣

大蛇丸よりも一足先を歩いていたアカリは振り返り｢日傘があるから大丈夫｣と笑った。
















｢おい、カカシ。弁当全然食べてないじゃないか｣

｢欲しいならオビトに全部やるよ｣

｢まじで？！｣

減らないカカシのお弁当を狙っていたオビトには願ってもない申し出だった。
差し出された弁当を受け取ろうとするオビト、弁当が後少しで手に入るという所で弁当はカカシの手から消える。
オビトに渡す前に消えた弁当にはカカシも驚いた様で、二人して消えた弁当を探していると｢二人共～｣何ていつもよりも低い声が聞こえてくる。

声が聞こえた方を見れば弁当を片手笑みを浮かべたミナトの姿。

｢先生大人気ねぇよ！いくら食い足りないからって生徒の弁当まで取ることないだろ｣

｢おあいにく様、先生はもう十分お腹いっぱいだ。

寧ろその言葉はそのままそっくりオビトに返すよ｣

物足りないからカカシ君の迄食べる事ないだろ？と言われてちぇっと元いた場所に戻っていく。

｢カカシ君はちゃんと食事を取る！忍何だから食べれる時に食べとかないと、ね？｣

ミナトはカカシなら言っている事を理解してくれるだろう、そう思い優しく言ったのだが、返ってきた言葉は予想していたものとは違った。

｢大丈夫です。俺、いつも丸薬を持ってるから｣

｢・・・・・・｣

暫く無言が続き、ミナトは笑みを絶やさぬままカカシの手から丸薬の入った袋を奪うとそのまま遠くへと投げてしまう。
まさか、こんな事になるとは思いもよらなかったカカシは思わず｢何するんですか｣と立ち上がるのだが、ミナトに押し戻され再度地面に座らされてしまう。

そして弁当を押し付けられた。

｢先生・・・？｣

｢カカシ君は弁当を食べきる迄仕事はお休み。ここから一歩も動いちゃ駄目だよ｣

｢先生、｢動いちゃ駄目だよ？｣


よく笑う教師だとは思っていた。
でも笑顔は嫌いじゃないと思っていたのだが、



恐い



笑顔なのに、笑顔の筈なのに良いようのない重圧と恐怖を感じる。

｢・・・分かりました｣

震える体を抑えて何とか答えた。
すると今まで感じていた重圧も恐怖も感じなくなる。

｢じゃあ、食べ終わったら一応弁当箱を見せてね｣

へにょりと効果音の聴こえて来そうな笑みにカカシは安堵した。


何時もの先生だと、