｢長期任務ですか？｣

どうぞ、とアカリはミナトにご飯を盛った茶碗を手渡す。
茶碗を受けとり軽く礼を言ったミナトは頷いた。

｢そう、大名の屋敷の草むしりなんだけど敷地がが広大でね｣

ははっ、と苦笑いを浮かべたミナトにアカリはそうですかとだけ言って漬物を咀嚼する。

｢多分四～五日は帰ってこれないと思うからその間は彼等に護衛してもらうと良いよ｣

同じ机で夕食を食べる彼等を二人は見た。
するとガツガツ、ガチャガチャ何て聞こえていた茶碗の音が止まる。
最近、やっとアカリが適当に掛けた術が解けて自由に歩き回れるようになった暗部二人。
その内の片方、犬の面を軽く顔にかけていた男は申し訳なさそうに口を開く。

｢あの、大変申し訳ないのですが俺達もミナトさんの仕事と被る形で任務が入っているんですよ｣

｢しかも一週間はかかる任務でして｣

そう言った猿の面の男は味噌汁を啜る。

｢そんな・・・その任務の日をずらす事は｣

｢無理ですねぇ、この間迄この家から出られなかったから任務が溜まってるんですよ｣

｢ねえ｣｢なあ｣と面の二人は顔を見合わせた。
そのやり取りを見たミナトは辛そうに顔を歪ませて眉間を押さえている。

｢この忙しい時期、腕の良い忍びは皆出払ってるのに｣

｢困りましたね～｣

ミナトの様子を見かねて声をかけたアカリだがアカリ自身は一人の方が都合は良いと心の中で笑っていた。

｢あ、猿さん。お味噌汁のお代わりは如何ですか｣

｢すみません、じゃあ頂きます｣

差し出された味噌汁の椀を受けとり立ち上がる。

｢・・・猿さん？｣

｢名前がないと不便だからってアカリさんがつけたんですよ。ちなみにこいつは犬さんです｣

｢どうも、犬さんです｣

話を突然振られたにも関わらず即、対応した犬の面の男。
アカリがまだ台所にいるのを確認したミナトは小さな声で話した。

｢つけて貰ったって、確か暗部でも名前はあったよね？｣

素性がバレてはいけないとはいえ、名前がないのは不便なので暗部所属でも何かしら名前が付けられる。

のだが、

｢いやぁ、つい流れで｣

｢あんな可愛い顔で見つめられちゃあ何も言えないよな｣

お互いに顔を見合わせて頷き合う仮面の男達。

｢え、どういう事？｣

｢何がですか？｣

三人は一斉に声の方へと顔を向けた。
味噌汁を手に頭に『？』を浮かべたアカリは自分の席へと腰を下ろし猿へと味噌汁の椀を渡す。

｢で、どうしたんですか？｣

笑みを浮かべて尋ねてくるアカリに男達は言葉をつまらせた。
微妙とも言える雰囲気と沈黙にただ俯く男三人。
そんな三人を見てもアカリは問いの答えを待っていた。

食卓の雰囲気に耐えきれず犬は口を開く。


｢今度の任務、昼食が必要でして｣

周りからえ？とかはぁ？と声が上がるが犬は気にせず続ける。

｢でも俺達って自炊出来ないからミナトさんに相談してたんですよ。

ね、｣

無理に振られてミナトは曖昧な返事をする。

｢そうそう、朝早いらしくてお店も開いていないらしくて｣

｢そうなんですか・・・あ、じゃあ！｣


｢｢｢？｣｣｣