｢で、先生。昨日の女性とはどういう関係なんですか？｣


任務の帰りである。
いつも通り報告書を提出し、挨拶を済まして帰ろうとした所を教え子に引き止められた。

｢女性・・・かい？｣

覚えがないな、とミナトは首を傾げていればオビトが｢黒髪で白い服を着てた！｣と言い、そこで彼らが言っているのがアカリの事だと気付く。

｢ああ、アカリちゃんの事か｣

｢｢｢アカリちゃん？｣｣｣

｢何だかんだ言って三人って仲良いよね｣

傍観していた筈のカカシまでも声を揃えた事にミナトは微笑む。
和んでいるミナトにリンが｢そんな事よりも｣と迫る。

｢先生とそのアカリさんって恋人なの？！｣

｢いや、アカリちゃんは｢私がどうしたんですか？｣

え、と今度は四人の声が重なり、四人は同時に声の方へと顔を向けた。
向いた先には黒い日傘を差したアカリと、ミナトも知らない男が一人。

｢こんにちは、ミナトさん

と、そちらの可愛いらしい子達は｣

そこでアカリの言葉が止まった。
リン達、三人をじっと見つめていたかと思うと視線をミナトへ移し、また三人へと戻す。
そして｢ああ！｣と何か分かったのか笑顔で尋ねてきた。

｢お子さんです？｣

冗談なのか、本気で言っているのか、アカリの言葉に｢どうしてそうなる｣と誰もが思う。

｢この子達は俺の生徒で部下だよ。こちらは今、俺が任務で護衛をしているアカリちゃん｣

｢アカリです。よろしく｣

突然の自己紹介だが、取り敢えず笑い、済ましたアカリにリンが近付く。

｢私はリンです。よろしくアカリさん｣

｢俺はうちはオビト！よろしくな｣

アカリと同様に挨拶を済ました二人。

二人と握手をしたり二～三言話したアカリは先程から自分に視線を送るだけの"銀色"に声をかけた。

｢えっと・・・君の、

貴方の名前は｣

君、と言った瞬間に無表情だった顔で眉だけが微かに上がり慌てて貴方、と訂正する。
子供扱いが嫌だったのか、尋ねても解答はない。

無言となってしまった二人の間に入り、ミナトは苦笑いを浮かべて｢この子ははたけカカシって言うんだ｣と言った。

｢カカシ君もよろしくね｣

手を握り、上下に振る。
カカシはアカリを一目見て視線を逸らした。


｢ごらぁ！カカシ、何だよその態度は！
アカリさんに失礼だろっ｣

｢オビト落ち着いて

カカシもアカリさんに失礼だよ｣

｢・・・・・・｣

リンに注意されるも、オビトの怒りは冷めずカカシは何も言わなかった。
ただもう一度アカリを見るだけで、そのまま歩いてしまう。

｢あれ、カカシ君。何処に行くんだい？｣

｢家に帰ります｣



｢・・・私、嫌われちゃいましたね｣

一人、帰るカカシの背中を見つめながらアカリは小さく呟く。
そんなアカリをフォローするかの様に初めてアカリの隣に立っていた男は口を開いた。

｢そんな事ないですよ。きっと彼は人見知りか何かなんじゃないですか？

ね、ミナトさん｣

｢え？あ、うん・・・カカシ君は少しだけどそういうのはあったからアカリちゃんが気にする程の事でもないよ｣

見知らぬ相手だけに警戒していたのだが話を突然振られ、ミナトはいつもの調子を崩しかける。

｢そうそう、俺なんて初対面で『お前、嫌いだ』なんて言われたし｣

｢それはオビトがカカシに絡んだからでしょ！｣

その時の事を思い出したのかリンは腰に手をあてて｢もう！｣と怒っていた。

｢だいたいオビトはいつも｣

｢先生！俺も帰るな

じゃあ、また明日！！｣

リンの説教が始まった途端にオビトは苦笑いを浮かべて駆け出す。
説教の相手が逃げた事にまた怒るリンだったが、自分も用事があったのか慌てだし挨拶を済まして帰っていった。

｢アカリさんもさよなら！また、お話を聞かせて下さいね｣

｢うん、お話ね


お話、・・・何のお話しでしょう？｣

聞かせるような話なんてあったかな？と思ったアカリはミナトに尋ねる。

｢・・・うーん、何の話だろうね｣

何となくだがリンが聞こうとしている事が分かったミナトはただ笑うしかなかった。