血相を変えて見付けた彼女は死体が折り重なる芝生の真ん中で何事も無かったかの様に切り株に座り休んでいた。

俺を見付けて｢ミナトさん！｣と駆け寄ってくる彼女。

｢もう、任務は終わったんですか｣

｢うん、今日は草むしりの仕事だったから｣

｢任務って草むしりもするんですね｣

へー、何て不思議そうな顔をしているのは俺が知っているアカリちゃんだ。
じゃあ、この惨状を作ったのは


｢私も任務の依頼してみようかな｣

｢してみようって家の庭、綺麗な状態じゃないか｣

｢あ、本当ですね｣

一体、誰？





早く帰ろうと言うアカリにミナトは少し待ってねと宥めて無線機を取り出す。
無線機で三代目に繋ぎ、暗部を呼んでもらうよう頼む。

｢後、五分位で暗部がくるらしいからもう少し待ってね｣

そう言って自分の服を掴み見上げるアカリの頭を撫でた。


｢暗部・・・そうだ！アカリちゃん、暗部の人達に術をかけたでしょ｣

｢あ、そう言えば｣

そうだった、とアカリは顔を青ざめさせて術を解こうと何やらぶつぶつと呟いている。
暫くその状態が続き、やっと顔を上げた時は顔色が悪いままだった。


｢駄目です｣

｢え？｣

｢解き方が分かりません｣

｢え、えっと、アカリちゃんが暗部の人達に術をかけたんじゃないの？｣

｢そう、何ですけど慌ててたから自分でもした事のない術をかけたみたいで・・・｣

そこで二人の会話が止まった。
ご愁傷さま、と家であまり動けずにいる暗部二人に心の中で合掌するミナト。
ミナトの隣ではアカリが術の解き方を考えている。

そんな二人の所に暗部が数名やって来た。

｢いやーお待たせしました。なんせ急に任務が入ったものですから｣

｢この仏さん、雲隠れですね｣

｢上忍クラスを一人で殺るとは流石、木の葉の黄色い閃光・・・

あら？閃光は｣

嫌味が言いたいのか、おだてたいのか、部隊長が話している間にミナトとアカリはその場からいなくなっていた。
二人の姿を探す部隊長に部下がおずおずと｢お二人はもう帰られました｣と伝える。

｢なんだそりゃ

せめて状況の説明位していってくれよな｣

部隊長は深々と死体の数を見て溜め息をついた。




｢うぅっ、こんな事なら水牢とか既存の術をかけとくんだった｣

｢アカリちゃんの中では術をかけないって選択肢はないんだね｣

自分の行いを後悔するアカリを抱き上げて家々の屋根を移り移動するミナトは苦笑いを浮かべていた。

｢取り敢えず家に戻ったらもう一度試してみよう｣

｢駄目だったら？｣

｢そうだね・・・駄目だったら｣

がさごそと何処から取り出したのか、ほんのりと暖かい紙袋をアカリに渡す。

｢丁度、たい焼きが四つあるんだ。それを食べてまた考えよう。

俺も一緒に考えるから｣

渡された紙袋をアカリは抱き締めて、小さく頷いた。



｢ねえ、二人共。さっきの先生じゃない？｣

リンの言葉に一緒に歩いていた二人は空を見上げる。

｢あー確かに気配は感じたけど｣

｢俺は見たぞ！女の人を抱いてた｣

｢だよね！｣

そう言ってリンとオビトは顔を見合わせると、憶測を始めた。
恋人かしらとリンが言えばそりゃないだろとオビトが否定する。
オビトが大国のお姫様かもななんて言えば何でお姫様が木ノ葉にいるのよ、とリンが否定した。

浮かび上がる沢山の憶測。

師の姿を見てから暫く経つというのに未だ憶測を続ける彼等にカカシはわざとらしく大きな溜め息をつく。

｢・・・何だよカカシ｣

｢いや、憶測を立てるのは良いんだけどさ

いいの？｣

いいの？等と尋ねられて頭を傾げるオビト。
カカシの問いに気付いたのはリンの方だった。

｢いっけなーい！ケーキバイキング人数制限があるんだった｣

一歩前に出ていたカカシの隣にくるようにリンは前に踏み出す。

｢先生の事でうっかり忘れる所だったわ。気付かせてくれてありがとう、カカシ｣

｢どういたしまして｣


歩き出した二人を追って｢待てよ！｣とオビトも慌てて駆け出した。