寂しがり屋な娘の話
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「あ、これ美味しい。アカリちゃんも食べてみる?」
「良いんですか」
はいっと差し出された焼き鳥を受け取ろうとすると手から逃れる焼き鳥。
アカリは頭を傾げて再度手を伸ばすがやはり焼き鳥は逃げてしまう。
「ミナト・・・さん?」
「違うよアカリちゃん。こういうとき『あーん』って食べさせてもらうんだよ」
そうなのか?
ミナトの言葉に疑問を感じるアカリだが言った本人は至って真面目な顔で焼き鳥を持っている。
そういうものなのかと納得してしまい、アカリは「あーん」と口を開けて焼き鳥を受けとった。
タレが溢れていないか気をつけながらも焼き鳥を咀嚼する。
「どう?」
「美味しいです」
そう言って串に残った鶏肉も食べていればやっと自来也が戻ってきた。
「何じゃお主ら、ワシがいない間に随分仲良くなっとるのぅ」
どっこいしょ、と自来也は当たり前の様にアカリの隣に座ると空のグラスを掴む。
その動作に反応するかの様にアカリは酒が入った瓶を手に取り空のグラスに酒を注いだ。
「おっと、すまん」
「ふふ、自来也君にお酒を注いでる何て変な感じ」
「まだワシに老けたというのか?」
「うん」
「はっきり言うのぅ」
流石にグサリと来たわ、と自来也は胸の辺りを撫でて言う。
「でも、自来也君。
男前になったね」
えへへ、と照れ笑いをして暫くするとアカリは静かになった。
自来也はアカリの名前を呼ぶも反応がない。
「・・・先生、アカリちゃん寝てますよ」
「何?どれ」
アカリが眠っているのに気付いたのは向かい側に座っていたミナトだった。
本当に眠っているのか確かめ様と顔を近付けると自来也は「こいつ酒臭いぞ」と呟いた。
机を二人が見ればアカリ用にと頼んだジュースのグラスは既に空になっている。
その近くにあったグラスを掴み、くんっと匂いを嗅げば酒独特の匂いが鼻をつく。
「アカリの奴、ワシの酒を水だと思って飲んでいたようじゃのぅ」
「みたいですね」
酒のせいか、アカリは頬をほんのりと赤く染めて寝息をたてている。
そんなアカリを眺めていたミナトは麦酒を一口含むと、今まで聴きたかった話を切り出した。
「先生は、アカリちゃんと長い付き合い何ですか?」
「・・・そうだのぅ、お前よりも付き合いが長いな」
自来也の視線は机に置かれたホッケの干物に向かっていた。
真面目に話を聞く様子のない自来也に小さく溜め息をつくも、ミナトは話を続ける。
「俺、ずっとアカリちゃんは何処かの国のお姫様じゃないのかなって思ってたんです」
「お姫様ねぇ・・・確かにアカリはある意味お姫様かもしれんのぅ」
「"ある意味"という事はアカリちゃんはお姫様じゃ無いんですね」
そう言ったミナトに酒に酔っていた自来也の目が厳しくなって向けられた。
殺気ではない、肩にのし掛かる重圧はアカリに対する自来也の思いなのか、それは重くミナトにのし掛かる。
「アカリの正体を知ってお前はどうするつもりだ」
自来也が握っていた箸は音をたてて形を変えていく。
「先生、俺は別にアカリちゃんの正体を無理矢理知ろう何て思ってませんよ?」
「はぁ??」
カランと『く』の字になった箸が自来也の手から机の上に落ちた。
だが、自来也は箸を落とした事も気にせずただミナトを見て瞬きしている。
「他人の、況してや女性の秘密を無理に知ろうなんてそんな事、俺がする筈が無いじゃないですか」
ははは、とミナトは笑っているが今だ自来也は固まっていた。
そんな自来也に笑みを浮かべてミナトは立ち上がる。
立ち上がって向かうのはアカリの隣で、そこで膝を落とすとアカリの脇と膝裏に腕を入れて抱き上げた。
「正直言うとアカリちゃんの正体は気になるけど、本人が話してくれるまで俺は待ってみます」
「・・・話してくれるまでに時間がかかるかもしれんぞ」
「時間がかかるのはそれだけ俺が信用出来ないと言うこと、なら俺は信用されるよう努力するだけです」
「相変わらず真面目な奴だ」
つまらんわ、と自来也はグラスに酒を注いで一気に煽った。
その様子を眺めながらミナトは口を開く。
「アカリちゃん眠っちゃったし。俺、帰りますね」
「あーお前はどうでも良いがアカリはちゃんと家に送り届けるんだぞ」
「その言い方酷いですよー」
ミナトの言葉を無視して自来也は部屋にある唯一の窓を見つめる。
「4~5人って所だのぅ
内、2人は上忍クラスと見た」
今か今かと待ち構える敵の気配に自来也は目を細める。
「大丈夫ですよ。ちゃんともう、彼女の部屋に目印してありますから」
「そうか、じゃあアカリを頼んだぞ」
「はい」
という声が何処かに吸い込まれるかのように語尾が小さく聴こえる。
見ればアカリを抱えたミナトは部屋からいなくなっていた。
自来也は懐から煙管を取り出すと火をつけ、それを吹かして一息つく。
「・・・速いのぅ。流石"木の葉の黄色い閃光"だ」