twst短編
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嘆きの島から帰ってきた一行は仲間達との再会を喜んだり、マレウスの機転でヴィルが若々しさを取り戻したりという事があった。
そしてもうそろそろ寮に戻って休もうというところでユウは声を上げた。
「どうしたんだユウ」
その声に反応したデュースにユウは至極困ったという表情で尋ねる。
「オンボロ寮、やっぱり壊れたままだよね?」
ユウの問いに幾人か、主にオンボロ寮で武装したステュークスの職員達と対峙した面々は声を漏らす。
あの時の戦闘によりオンボロ寮が屋根を失い半壊した事を思い出したのだ。
「壊れたまんまだわ」
「だよね。これからどうしよう」
流石に屋根無しでの生活は避けたいユウ。
早くベッドで休みたいが先ずは学園長に相談するべきか悩んでいるとエペルがその腕に自身の腕を絡ませた。
「オンボロ寮が直るまでポムフィオーレで生活するのはどう、かな?」
「良いの?」
エペルの提案にユウは俯かせていた顔を上げた。
「良いですよねヴィルサン!」
頷いてからエペルはヴィルの方を向いて了承を求めた。
「そうね。本来だったら面倒事はお断りだけど今はうちの寮生みたいなものだし」
そう言ってヴィルが見たユウの格好といえば嘆きの島から変わらずポムフィオーレの寮服である。
「オンボロ寮が修復するまでの滞在を許可してあげる」
「君達なら歓迎だよ」
ヴィルに続いてルークの言葉にユウは表情を輝かせる。
「やったよグリム!屋根のあるお家で過ごせるよ」
正直、屋根無しのオンボロ寮で半ば野宿を覚悟していたユウ。
「美味い飯も食えるのか?!」
「勿論。うちの寮生でいる間は彼等と同じ物を食べてもらうわよ」
対して野宿は良いとしてご飯の事が気になっていたグリムはポムフィオーレ寮生と同じ物、つまり美味しいご飯が食べれると聞いて一人と一匹はその場で小躍りする。
「なーんか面白くねぇの」
ユウとグリムは約束されたは住と食に喜んでいるのだが周りはそうは思えない。
まるでユウ達がポムフィオーレ生になる事を喜んでいる様に見えて面白くないのだ。
「あーっと手が滑った」
見事な棒読みと共にユウとグリム目掛けて光の粒が飛んで来た。
光がユウとグリムを包み込み、消えた頃にはユウはオクタヴィネルの寮服を、グリムはオクタヴィネルカラーのリボンを首に、頭には寮服の内の一つである帽子を被っていた。
「小エビちゃんもアザラシちゃんもうちの寮服になっちゃったね」
フロイドは自身と揃いの格好をしたユウとグリムを見下ろして満足げに笑う。
「でかしたフロイド!」
思わず飛び出た本音に慌てて咳払いをして誤魔化すアズール。
「いえ、これではポムフィオーレ寮に入るのも難しいでしょうしユウさん達は我がオクタヴィネル寮で面倒を見ましょう」
一瞬ともいえる早着替えにユウが感動を覚える一方、イソギンチャクの件が未だトラウマのグリムはオクタヴィネルは嫌だと言わんばかりに帽子を脱ぎ、何とかリボンを外そうとしていた。
が、爪がリボンに食い込んで上手くいかない。
もたつくグリムにジェイドはそっと近付くと屈み、囁く。
「実は今、新メニューの開発を行っておりまして、グリムさんにはオクタヴィネル寮に滞在している間に試食を頼みたいのですが」
「本当か?!仕方ねぇなーオレ様がしっかり味見してやるんだゾ」
ジェイドの言葉により一転してオクタヴィネルでお世話になる気満々のグリム。
しかし再び光の粒が一人と一匹を包み込む。
「馬鹿をお言いよ。ユウとグリムは我がハーツラビュル寮で面倒を見る」
腕を組み仁王立ちの姿勢で宣言するリドル。
ユウはエース達と同様の寮服が、グリムには大振りのリボンが巻かれていた。
「エースとデュースとお揃いだ」
マブと揃いの寮服にユウは心なしか胸が弾み、無意識に兎の如くその場で跳ねていた。
「ユウもグリムも意外に似合うじゃん」
「こうしていると本当にうちの寮生みたいだな」
「ユウ達は授業の遅れを取り戻さなくてはならないからね。明日から勉強会を行う」
「えっ」
「ふなっ」
「勿論、エースとデュース、君達もだ」
「げっ」
「そんな」
楽しい雰囲気から打って変わり、お通夜状態の三人と一匹。
「まあまあ、リドル君。勉強の話はこれぐらいにしておこうよ」
「リドル達は帰ってきたばかりだしエース達は病み上がりだ。少しぐらい休息を取っても良いだろう」
「しかしだねトレイ。僕も彼等も授業を休んでた分の遅れを取り戻さなくてはならない」
「大丈夫だよリドル君。学園はこの騒動で休校になってたから」
「そうなのかい?」
ケイトの言葉に嘆きの島にいた面々も真相を確認すべく仲間達を見た。
すると彼等もケイトの言葉を肯定する様に頷く。
学園長は不在、複数名の生徒が行方不明となり、残された教職員は事態の対応に追われて学園は授業どころではなかったのだ。
「だから勉強会は止めてお茶会はどうだ?」
「だがしかし」
「はーい!オレもトレイ先輩の提案に賛成!!」
「僕も!寮長やユウ達に何があったのか詳しく聞きたいですし」
「オレ様も勉強会よりお茶会の方が良いんだゾ!」
自分が不在の間、学園が休校だった事、お茶会を推すエース達の勢いにリドルは当惑する。
「休講だったとはいえ勉強をするに越した事はない。お茶会も良いがやはり勉強会もするべきだ」
「折角帰ってきたんだし先ずは宴なんてどうだ?」
二度ある事は三度ある。
またしても光の粒に包まれたユウとグリム。
ユウはスカラビアの寮服を、グリムはリボンを変え、頭にはターバンが巻かれていた。
「ジャミルやユウ達のお帰り会!みんなも来いよ!」
ユウ達の格好がハーツラビュルからスカラビアの寮服に変えられて眉を吊り上げたリドルであるがカリムのその無邪気で、皆の帰還を心の底から喜んでいる様に毒気を抜かれた。
美味しい料理に催し物、宴の内容を楽しげに話すカリムの横でジャミルは深々と溜息を吐く。
「その宴の準備をするのは一体誰だと思っているんだ?」
「頼むよジャミ、」
何時もの様に急な宴の開催に準備を頼もうとしたカリムであるがその宴のメインにジャミル自身が含まれている事を思い出す。
「準備はオレと寮生達で頑張るから任せてくれ!!」
ふんっと、鼻息荒く意気込むカリムであるが寮生は問題は無いとしてカリムにはただただ心配でしかないジャミル。
宴をすると決めた以上、滅多な事が無い限り撤回されない事に慣れているジャミルは溜息を吐きながらも手伝うと申し出るのだが
「駄目だ。ジャミルも疲れているんだから休んでいてくれ」
「主人に宴の準備をさせて休む従者が何処にいる!」
「大丈夫だ!ジャミルの手を借りずともオレはやり切ってみせる!」
「それでお前の身に何かあったらどうするんだ!」
大丈夫、大丈夫じゃないと繰り広げられる主従の言い合いに置いてきぼりにされたユウ達。
ユウが口を開け、その様子を眺めていると三度目に続いて再び光の粒がユウとグリムを覆った。
今度はディアソムニアの寮服に身を包んだユウ。
グリムはリボンがディアソムニアの色に変わり、耳の間には小さな帽子が乗っている。
「次は僕の番だと思ってな」
「ツノ太郎」
ディアソムニアの寮服に身を包んだユウを前にマレウスは満足気であった。
「なかなか様になっておるぞ」
マレウスの横でリリアも何度も頷く。
二人から似合っていると言われてユウは照れて見せ、グリムは誇らし気に胸を張った。
「オレ様、格好よくなってるか」
「それはもうバッチリ決まっておる。のう、マレウス」
「ああ、せっかくこれほどに似合っているのだ。このままディアソムニアに転寮してはどうだ?」
何処からともなく転寮届を出したマレウスはにっこりと笑みを浮かべたままにユウへとサインを迫る。
まさかそれが本気の催促とは思わずマレウスなりの冗談だと思っているユウはただただ笑って署名に迫られるのを流すだけであった。
そうしてここまで来たら次の衣装替えもお約束である。
何度目かになる光の粒に包まれてユウはサバナクローの寮服に、グリムはバンダナを首に巻いていた。
「何のつもりだ。キングスカラー」
「何のつもりって、人助けだよ。そこの草食動物がしつこい勧誘に捕まっていたもんでな」
「しつこくもないし、勧誘でもない。ユウも望んでの事だ」
「転寮は考えてないかな」
「兎に角、ユウ達の面倒はディアソムニアが見る」
ユウの返答に一度はユウを見たマレウスであるが再びレオナへと視線を戻して言い争いを続けた。
ユウ達をディアソムニアに連れて帰りたいマレウスとそれを邪魔したいレオナ。
犬猿の仲である二人の言い争いを眺めながらユウは学園に帰ってきた事を実感する。
「いやー漸く何時もの学園らしくなってきたっスね」
そう感じたのはユウだけではなかったらしい。
しみじみと隣から聞こえてきた声はラギーである。
「マレウスさんに嫌がらせしたいからってユウくん達の格好をサバナクローの寮服に変えるなんてレオナさんも大人気ないっスねぇ」
「という事は、今度はジャックとお揃いだね」
忙しないが各寮の寮服、友人達とお揃いの格好が出来てユウはご機嫌である。
グリムと共に似合っているかとジャックに感想を求めるも、ジャックだけでなくラギーまでも感想に言い淀む。
「もしかして似合ってない?」
「似合ってる似合ってない以前の問題というか」
「サバナクローの寮服を着ても草食動物感が抜けないっていうのは大したもんっスよ」
それはつまり似合っていないという事なのでは?そう頭を傾げたユウ。
その時、爆発音が響いた。
口論していたマレウスとレオナがとうとう魔法まで使い出したのだ。
「これ、止めよマレウス!」
「もう、何をしてんスか!レオナさん」
行方不明の次は謹慎かとリリアにラギーが二人を宥めに入るが止まらない。
周りも静止を求める一方、中には煽る者もいて、この騒ぎに教師が駆け付けるのも時間の問題である。
そんな騒ぎに間抜けな表情で見ていたユウを光の粒が包む。
嘆きの島での騒動で着慣れたポムフィオーレの寮服にまたも戻っていた。
「着替えてみて分かったでしょ。アンタは一番ウチの寮服が似合うの」
寮服に合わせて髪型も整えられたユウ。
グリムにもポムフィオーレカラーのリボンが巻かれている。
「騒がしいヤツらは放っておいて私達は寮に戻るわよ」
ヴィルに指を絡み取られ、引かれるがまま学園へと歩かされるユウは何度も背後、揉めるマレウス達とヴィルを見比べた。
「でも、向こうは大変な事になってますよ」
緑の炎と砂を巻き込んだ竜巻がせめぎ合っている。
「そんなのアタシの知った事じゃないわよ。アタシは疲れたの。早く寮に戻ってベッドで休みたいわ」
「僕も流石に疲れたな」
いつのまにかグリムを片腕で抱え、余った腕をやはりユウの余った腕に絡めたエペルが小さく欠伸を零す。
「では、私が特製のハーブティーを淹れよう」
「あの、後ろから爆音が聞こえて」
音と共に熱を含んだ風がユウ達の横を通り過ぎたが寮服のおかげか暖かい風が通り過ぎた程度しか感じられなかった。
「小ジャガ。アンタは今、ウチの寮服を着ている。それはつまり今のアンタはポムフィオーレ生という事。分かってる?」
足を止めたヴィルがユウを見下ろす。
よく手入れされたヴィルの指に顎ごと口を掴まれ、強制的に視線を合わせてられたユウ。
「う、うい」
その力強い目力に圧され思わずルークの様な返事をしてしまう。
「だったら寮生は寮長の言葉になんて返すか分かってるわよね?」
「はい。寮長」
「お利口ね」
ヴィルはユウの返事に満足したのか微笑みを浮かべると指を使って顎を一撫でした。
そうしてポムフィオーレ寮に連行、もとい迎えられたユウ達はオンボロ寮が修復されるまでの数日をポムフィオーレで過ごすのであった。