twst短編
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選択授業の一つであるマスターシェフ。
その授業では二人一組とならなければならない。
その相手がマレウスと聞いてラギーは内心、ガッツポーズをした。
料理どころか調理場に入った事すらあるのか怪しいマレウスと共に料理を習うだなんて面倒でしかない。
が、あのマレウス・ドラコニアの作った料理を酷評できる奴はいるのか。
いや、いない。
教師はどうあれ、生徒ならば採点に多少の色を付ける事が難なく想像出来た。
これは楽に単位をゲットできると喜ぶラギーであったがなぜか周りは憐れむ様にラギーを見ていた。
「まあ、頑張れよ」
憐れむというよりはおかしそうに笑ったのはレオナ。
「ラギー先輩、気をしっかり持って下さいね!」
何だかおかしな応援をしてきたのはジャック。
「ラギーサン。これ、使いかけですけど良かったら使って下さい」
胸焼けにも効きますよ!と胃薬を差し出すエペル。
自分は調理する側の筈なのに何故か胃薬を渡されたラギーは困惑した。
しかも渡して来たのはまだ学園に染まりきっていない一年生のエペルである。
揶揄いなどではなく真剣に部活の先輩を心配するエペルにラギーは今回のマスターシェフに何があるのだと大いに戸惑う。
その後もラギーがマレウスと共にマスターシェフに参加すると聞いた者達からは散々心配され
「え、何スかその反応?え?え?」
結局、誰に理由を聞いても教えてもらないラギーはマスターシェフが始まる日を迎える。
ああ、こういう事か
不安と共に迎えたマスターシェフ。
ラギーは何故周りが自分を憐れんでいたのかを嫌という程知らされた。
「ユウよ。どうしてそんなにも離れた所にいるんだ。ここまで来るがいい」
マスターシェフでマレウスと組んでから知ったのだがこのマレウス、ユウが様子を見に来るたびに、なんならわざわざ呼びつけてはいちゃいちゃするのである。
同学年で、マレウスの従者をする者の話によると二人は最近付き合い出したばかりで少し浮かれているらしい。
「これで少し?」
目の前で繰り広げられる二人のやりとりについていけないラギーは少しの定義について頭を傾げる。
ところで、コック帽にツノが収まらないマレウスはラギーや他の生徒達と比べて小さな帽子をツノの間に乗せているのだが、なぜかその帽子はユウがいる時に限っていつもずれていた。
「ツノ太郎、またコック帽がズレてるよ」
「直してくれるか?」
「しょうがないな。少し屈んで」
それに気付いたユウに帽子を直させるのはまだ良い。
しかしマレウスが少し屈んだ所でズレた帽子は遠く、ユウは懸命に手を伸ばし、背伸びをしてマレウスの帽子を直そうとする。
そんな真剣で無防備なユウに周りの、というかラギーがいるにも関わらずマレウスはユウの唇や頬にちゅっちゅ、ちゅっちゅ
「ツノ太郎!ラギー先輩もいるんだからそういう事は止めて!!」
「そういう事とはどういう事だ?」
ユウが抵抗しようが文句を言おうが関係なく、何なら砂糖よりもくどい言葉を囁いては再びちゅっちゅ、ちゅっちゅ、ちゅっちゅ
連日続く二人のいちゃつき様に耐えきれなくなったラギーはその日、胸焼けを理由に人生で初めて胃薬を飲んだ。
あくる日、ユウがいない時である。
ラギーはマレウスの帽子がずれているのに気が付いた。
「帽子、ズレてますよ」
「ああ、すまないなブッチ。ユウは今日、来ないのにうっかりしていた」
指摘するとマレウスは軽く礼を告げ、そして彼が指を振れば帽子は正しい位置へと勝手に収まる。
そしてその後、全くズレるどころか微動だにすらしないマレウスの帽子にラギーは気付いた。
これまで行われていたユウとのやりとりは全てマレウスが意図的に起こしていたんだな、と
その事に気付いたラギーは暫く虚無の表情で、一人佇んでいた。