twst短編
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「ロマンチックなシーンで、知らない人の話をべらべらするあなたのほうが失礼でしょう!」
「あのゴーストはそんな事を言っていたが貴様は初対面で同じ事をされて怒りもしなかったな」
「だってあの時はプロポーズの場でもなかったし、正直驚きはしたけど若様の事を話すセベクは楽しそうだから嫌じゃないよ」
傍迷惑な上に人命も掛かっていた花嫁ゴースト騒ぎ。
結末はまさか、結婚を迫られていたイデアが婚約を破棄されるという展開で終わりを迎えた。
花嫁ゴーストのビンタにより金縛り状態となっていた面々はゴースト達があの世へと旅立った事で漸く動ける様になった。
皆が各々に凝り固まった身体の筋を伸ばしたり雑談したりする中、セベクとユウは並んで談笑していた。
実はユウは以前よりセベクに恋しているのだがその気持ちを伝えるどころか隠している。
隠しているのだが当人達以外には視線や態度でバレバレである為、仲良さげに話す二人と周りとで微妙な距離が保たれていた。
「嫌じゃないどころかセベクの事が好きなんだろ」
素直に告白でもなんでもしてさっさとお付き合いしろと念を送るのはエースを筆頭とした一年生である。
「ワニちゃんを見る小エビちゃんの表情、完全に恋してるじゃん」
披露宴用に設けられた椅子に凭れたフロイドは今日の騒動で恋愛のいざこざについて食傷気味である為、げんなりした様子で二人を眺めていた。
「側から見ている僕達でも気付くのにどうしてセベクさんはユウさんの思いに気付かれないのでしょうね」
呆れも交えながら頬に手を当て、不思議そうに呟いたジェイドにその場にいた皆が頷く。
「茨の谷は一体どういう教育をしてるのよ」
エレメンタリースクールに通う今時の子供でもしない様な、見ていて焦ったい恋模様にヴィルは思わず溢し、リリアに視線を送った。
「来る日も来る日も剣の稽古であったからのう。わしも反省しておる」
「リリア。アンタ、セベクとは二歳違いでしょ?」
まるで保護者の様な口振りで項垂れるリリアにヴィルは思わず突っ込みを入れた。
「そしてセベク氏、懲りずにまたマレウス氏の話をしてる」
それはそれは、頬に手形がくっきり残る程の平手打ちを花嫁ゴーストから受けたばかりにも関わらずである。
一体どういう流れで、そもそも流れも脈絡もなにもないのだろう。
我が事の様に、鼻高々とマレウスの話をするセベクをレオナは眉を寄せて見た。
「ありゃあ、最早病気だな」
「では、ユウさんは恋の病と言ったところでしょうか?」
恋の為せる技なのかセベクの話をキラキラとした瞳で聞き続けるユウにアズールはある意味お似合いだと肩を竦ませ言った。
「あれ、そういえばリドル先輩達は?」
今回の騒動において功労者の一人であるリドルの姿が見えない事にジャックは気付いた。
「寮長ならダイヤモンド先輩とクローバー先輩を連れて慌てて寮に帰ってしまった」
「何か大切な用事でもあったのかな?」
こんな騒ぎの後だというのに慌てて帰るとは余程の事があるのかと首を傾げたエペルであるがエースが即座に否定する。
帰った理由がハーツラビュル寮独特の決まり事を守る為と聞いてそのリドルの真面目さに皆が呆気に取られた。
「真面目さは薔薇の君の美徳の一つだよ」
どんな時でもルールを守るリドルの姿勢をルークは素晴らしいと褒め讃えるがそれ以外の者達は苦笑いを浮かべていた。
「貴様はどうして何時も僕の話を聞いてくれるのだ?」
若様武勇伝を一通り話し終えたセベクはふと、そんな疑問を抱いてユウに尋ねた。
今はロマンチックなシーンでもなんでもないがユウにとってセベクのする若様の話は知らない人の話なのである。
若様の話を他人にして平手打ちを食らったのは今回が初めてであるが苦笑いや困惑、話に付き合っていられないと逃げられた経験はこれまで多々あった。
だと言うのにユウは何時もセベクの話に嫌な顔一つせず付き合ってくれる。
「さっきも言ったけど若様の話をするセベクが楽しそうだからかな」
いつまでも聞いていられるのだと微笑み言ったユウ。
そんなユウと相対していたセベクの頬が赤らむ。
突如、顔色が変わったセベクにユウは具合が悪いのかと慌て、セベクもそれが移ったかのように慌てた。
風邪かも知れないとユウは何とかセベクを屈ませるとその額に己の額を重ね合わせる。
「熱はないみたいだけど?」
確かに温かくはあるものの熱があるとは思えない、至って普通な体温にユウは頭を傾げた。
何か自身で感じる体調の変化はないか尋ねようとしたユウであったが突如伸びてきらセベクの手がユウの肩を掴み、人一人分の距離を取らされる。
「セベク?」
「近いぞ人間」
顔どころか耳や首までも赤く染め上げ、ユウから顔を逸らしたセベク。
そこで漸く己の行動を振り返りセベクが赤くなっている理由に気付いたユウも顔を赤くした。
「ご、ごめん。セベクが調子悪いと思って、それで」
「ああ、勿論分かっている」
分かっていると言いながら二人は互いの顔を直視出来ないのか揃って明後日の方向を見ていた。
「・・・ねえ、何で互いに意識出来てるのに気付かない訳?」
意味が分からないと目の前で繰り広げられる茶番劇にフロイドが無気力に溢した。
「何故なのでしょうね?」
そう答えるジェイドにも、周りも二人の甘酸っぱい雰囲気を囃し立てる程の元気はない。
花嫁ゴーストの結婚騒動に彼等の疲労は一部を除きピークを迎えようとしていた。
「わしが、わしがセベクの奴に訓練ばかりを課すから!」
「リリア、それはもう良いから」
拳を握り口惜しげの後悔の言葉を漏らすリリアをヴィルは投げやりに宥める。
そんな上級生に対して一年生は元気である。
折角の甘酸っぱい雰囲気を壊さないよう、二人の様子を固唾を飲みながらも心の中では猛烈に、ラッパを吹き、太鼓を鳴らして応援をしている。
その無言の応援が通じたのか、はたまた仲間の念でも届いたのか、それまでセベクから顔を逸らしていたユウは何やら覚悟を決めた面持ちで向き直った。
「セベク、私ね「皆さん!まだ此処にいたのですか!」」
何処からともなく飛び込んできたのは学園長であった。
「何やら怪しげな空気を察して来てみれば、何故まだ此処に皆さんがいるのです」
消灯の時間はとうに過ぎている。
だと言うのに寮長を含めた多数の生徒が食堂に残っている事に学園長は眉を顰めた。
学園長の登場により言葉を遮られてしまったユウは何も無かったかの様に俯いてしまう。
セベクはユウの言いかけた言葉の続きが気になったが無理矢理聞き出すのを躊躇った為、二人の会話は此処で途切れてしまった。
そんな二人を見守っていた者達はあからさまに溜息を吐く。
「学園長空気読めなさすぎー」
「正に最悪のタイミングですね」
「ですが学園長先生の言う事も最もですし私達は寮に帰るとしましょうか」
折角のいい雰囲気も学園長に壊された為、これ以上の展開は望めないだろうと察した彼等は最悪だ、最低だと、学園長をちらりと見てはそんな言葉を零しながら一人、また一人と食堂を出て行く。
「な、なんなのですか皆さん!」
これまでにない程の冷たい視線を生徒達から浴びせられた学園長は理由を求め声を上げたが険しい表情の一年生達からすれ違い様に強烈な睨みと舌打ちを受けると小さな悲鳴を上げてその身を縮こまらせた。
そうしている間にもセベクやユウを含めた残りの生徒達も食堂を出て行き、最後まで残っていたリリアが学園長の肩を叩いた。
「学園長よ。この落とし前はいずれきっちりと返してもらう故、覚悟しておれ」
落とし前も何も全く身に覚えのない学園長であったがリリアの表情がとても恐ろしかった。
どんな恐ろしい魔獣であっても泣いて逃げ出すレベルである。
そんなリリアに睨まれた学園長はもはや蛇に睨まれた蛙状態であり、逃げる事も出来ない学園長は何が何だか分からぬまま恐怖に声を振るわせ返事をするしかなかった。
この後、リリアから話を聞いたセベ監強火担のマレウスに凸され、学園長室が半壊するのは別のお話。