お題SS
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この度、晴れてラギーとお付き合いする事になったユウは何時もの手伝いの折に学園長へとその事を報告した。
特に報告を義務とされていた訳ではないのだが学園長はユウの身元保証人、いわば保護者の様な立場である為、なんとなく報告してみた。
以前から片想いしていたラギーと恋人になれた事で多少浮かれていたのも影響しての事である。
しかし報告してから本当に言って良かったのかとユウは内心思う。
学生、しかもお情けで学園に入学させてもらった身であるというのに異性とお付き合いなど、そんな事をしている暇などあるのかと学園長からお叱りを受けるのではとユウは今更に危惧する。
「それはおめでとうございます」
しかしそれは杞憂であった。
ユウの想像に反し祝いの言葉を述べた学園長。
「折角ですしユウくんには私からお祝いの品を差し上げましょう」
「え、え??」
祝いの言葉どころか祝いの品迄くれると言う学園長にユウは大いに困惑した。
そこまでしてもらう訳にはいかない。
そう固辞する前に学園長の魔法により祝いの品が煙を伴いユウの目の前に現れた。
祝いの品らしく前面のみ透明な綺麗な箱に収められたそれはプリーツスカートであった。
どことなく制服のスラックスと雰囲気が似ている。
「何だか制服と親和性が高そうなスカートですね」
「それはそうですよ。学園の制服なんですから」
「でも、ここって男子校なんじゃ」
「今は多様性の時代ですからねぇ」
詳しく聞けば選択出来る制服の内の一つらしい。
幾ら男子校といえどスカートが選択の内にないのはナンセンスだからと数年前に今の制服に加えられたらしく、ユウは今まで気付かなかったが今年の新入生の中にもスカートを選択した者は少なからずいるとの事。
「実を言うとこれは本来、貴方入学した際に渡す筈だった物なのですよ」
しかしスカートは今の今までユウに渡される事はなかった。
何故渡されなかったかというとユウが心だけでなく身も女で、魔法も使えない非力な存在であったから。
自身で対処出来ない以上、あまり周りを煽る様な格好は良くないと教師陣で話し合い、決まった。
それを何故今渡されたのか。
「これからは何があってもブッチくんが貴方を守ってくれるでしょうから」
身内を大切にするラギーがいるのだろうから大丈夫だと考えた学園長の判断だという。ユウはお礼を伝えて頭を下げた。
スカートを貰ったユウは寮でさっそく着替えるとラギーの元へと向かった。
「ラギー先輩!」
この世界に来て初めてする女の子らしい格好にラギーはどんな反応をするのだろうか。
胸に期待を秘めたユウは部活が終わり、部員に片付けの指示を飛ばしていたラギーに声を掛ける。
ラギーは振り向き、目を見開くと無言でユウの背中を押した。
その物を言わせぬ迫力で強制的に移動させられるユウは想像していなかったラギーの反応に混乱する。
「なんなんスかその格好は」
人気のない建物の影に来た二人。
ご機嫌とは言い難いラギーの反応にユウは戸惑いながらもかくかくしかじかと此処までの事を話した。
話を一通り聞き終えたラギーは頭を押さえるのでユウはそれ程スカートが似合わなかったのかと尋ねる。
「そんなことないっスよ!!!」
全力で否定されてユウは安堵するも、ならばラギーの不機嫌な理由はなんなのか尋ねる。
「その、」
「うん」
「スカートの丈が短かすぎるんっスよ」
それ、と気恥ずかしげにスカートを指差すラギー。
ラギーの指摘の通りユウのスカートの丈はミニスカートと呼ばれる丈であった。
ユウ自身、あまり足を出すのは好まぬ質なのだがジャケットが男子用と、丈が長い為スカートをそのままの長さで履くとどうしても無格好になってしまう。
折角の異世界初のスカート。
恋人に可愛いと言われたくてユウは覚悟を決めて足を出したのだ。
「ここは男子校なんスよ?!襲われたりしたらどうするつもりなんです」
「ラギー先輩に可愛いって言ってもらいたくて」
そういった事は考えていなかったと顔を俯かせたユウは素直に白状する。
「そりゃあ可愛いですよ」
ほんのりと頬を染め、顔を逸らしたラギーは呟く。
それにユウは反応して顔を上げる。
「ただ、他のヤツ等に見られたら減りそうで、オレ以外にも人がいる前ではそういう格好はして欲しくないっス」
「だったらもう、ラギー先輩の前以外でスカートは履きません!」
手を上げたユウは前のめりになりながら宣言した。
「そうして貰えたらオレは嬉しいっスけど」
流石にそれは良いのかと気にするラギーであるがユウは可愛いと言ってもらえただけで十分なのだと言う。
ラギーに可愛いと言ってもらい目的を達成したユウは誰かに見られる前に寮へと戻ると言って走り去っていった。
ユウと入れ替わる様にやって来たエペルに声をかけられたラギーであるが、ラギーは応えるどころか声を上げながらその場にしゃがみ込む。
「ラギーサン?」
声をかけたエペルはラギーのその様子に調子でも悪いのだろうかと戸惑いの隠せない。
しかし戸惑うエペルに構うどころかいる事すら気付いていないラギーは先程の己の発言を振り返り、己の狭量さに情けない声を上げて自己嫌悪するのであった。