お題SS
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机の上に並ぶケーキにクッキー、チョコレート、お菓子と共に出されたお茶までも青く、その寒々しい色合いのお菓子達を前に寮生達は表情を痙攣らせた。
近頃青い物ばかりを好んで食べるトレイ。
そんな彼が作るお菓子もやはり青色ばかりで、彼のお菓子を楽しみにしている寮生達は辟易していた。
「トレイ先輩、たまには青色以外のお菓子も作ってくださいよ!」
青は食欲を減退させる色の一つである。
飴やグミが青い位は彼等もどうと言うこともないがケーキはスポンジ生地からクリームに至るまで、チョコレートは表面が青いのは勿論の事、中に閉じ込められたフィリングも青く、クッキーに関しては青一色。
いくらトレイのお菓子といえど限度というものがある。
こうも青色尽くしでは流石に食欲が失せるからどうにかしてほしいとトレイは寮生達に訴えられた。
「あいつら食欲が失せるから青色は止めてくれって言うんだ。こんなに美味しそうな色なのにな」
トレイは寮生に配っても余った鮮やかな青色のお菓子を咀嚼しながら昼間のやりとりを思い出しておかしそうに笑った。
昼間に起こったという騒ぎのあらまし聞いたケイトは思わず呟く。
「いや、怖すぎでしょ」
ケイトの呟きに何の事かとトレイは頭を傾げる。
「トレイ君って欲求不満かあまり考えたくないけどそういう願望でもあるの?」
「おいおい、なんなんだ急に」
「自分の好きな子の色をしたお菓子をわざわざ作って食べるなんて正気か聞いてるの」
「好きな子の色?」
好きな子の色だからとお菓子を拵える迄は可愛いが出来上がったそれを誰より率先して消費するトレイが怖いとケイトは言う。
しかし欲求不満だの好きな子の色だとかトレイには訳が分からない。
「もしかしてトレイくんのそれって無意識なわけ?!」
いまいち話の通じないトレイにまさかとは思っていたがそのまさかだった事にケイトは驚いた。
「だからそれって何の事だ」
「トレイくんの異常な青色ブームだよ」
トレイは青色のお菓子を作る以外にも青色のノートやペン等、青色の物を買い集めたり目についた青色を見つめたりと普段の生活に於いても青色に侵されていた。
それらの行動にケイトは青色を通して片想いの相手であるユウの事を思い出しているのだろうと自己完結し、優しく見守っていたのだが当の本人はそれらの行動も無意識によるものだったらしい。
「そもそも俺に好きな奴なんて」
「ユウちゃんの事好きなんでしょ?」
ユウは髪こそ地味な色合いであったがその瞳だけは鮮やかな碧眼であった。
トレイの作るお菓子が青くなったのはユウの外見で一番特徴的である碧眼を模していたのではないのかとケイトに問われる。
そこまで言われてトレイは否定しようと口を開きかけるがそこで動きを止めて視線を彷徨わせた。
何か思い当たる事でもあったのか反論しないトレイ。
ケイトから見ればトレイがユウに片想いしている事はバレバレであったがトレイ本人はその気持ちに自覚すらしていなかったらしい。
ケイトに言われて漸く己の気持ちを自覚したトレイは話を途中ながら切り上げて、その日はいつもよりも早くに眠りへとついた。
ユウの事が好きだと自覚させられたトレイ。
自身も気付かなかった思いに気付かされたその日は酷く困惑していたがその後の行動は早かった。
一体どの様な手を使ったのかあっという間にユウと恋人関係になったのである。
そしてそれと同時にトレイの青色お菓子ブームは終わりを迎える。
お菓子の色合いが元に戻り寮生は勿論、リドルも心なしか喜んでいた。
「クローバー先輩のあの青色ブームはなんだったんでしょうか?」
思い返しても不思議で仕方がないデュース。
「何だったんだろうね」
尋ねられてケイトは笑い惚けた。
寮生はトレイの青色ブームが終わったと思っているがケイトは知っている。
ユウと恋人の関係になってからもトレイは変わらず青色のお菓子を作っていた。
ただ、そのお菓子を自分以外の誰にも食べさせないだけなのだ。
「そんなところまで独占欲を発揮しなくて良いのに」
独り言ちたケイトは天を仰ぎ溜息を吐いた。