お題SS
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「何だろこれ」
教室の床に落ちている白いそれをユウは拾いあげた。
てっきりそれは誰かのメモ書きか何かだろうと思っていたユウであるが感触からしてそれは紙等ではなく、拾い上げて漸くそれが何か分かった。
「ユウ、何見てんの」
拾い上げた何かを凝視するユウに声をかけたエースは一緒になってそれを覗き込む。
ユウが拾い上げたのは写真であった。
幼稚園か保育所のお遊戯会だろうか、ベレー帽に発表会用だろうか畏った服を着た幼い子供が似た歳の子供達と共に歌を歌っている。
それだけ見ればただの写真であるがユウには写真を凝視する理由があった。
「可愛い!」
まろやかな頬は淡く桃色に色付き、大きく鮮やかなグリーンの瞳に艶めく濃紺の髪。
メインであろうベレー帽を被った被写体の子供の愛らしさにユウはただただ震える。
「ねえ、エース。このベレー帽の子凄く可愛くない?!」
「ウン、ソウダネー」
「お遊戯会かな?凄く一生懸命に歌ってるのが写真から伝わって来る」
「ウン、エライネー」
「このベレー帽の子が可愛すぎて他の子が霞む。いや、他の子も十分可愛いんだけどこの子は別格というか」
「ウンウン、ワカルワカルー」
「この写真ってクラスの誰かの妹さんや親戚の子の写真かな?」
「ソウナンジャナイカナー」
「もう、さっきから何?!」
最早こちら揶揄っているとしか思えないエースの片言な応答にユウは腹を立てて振り向く。
そこには必死に笑いに堪えるエースと、そのエースに口と身動きを封じられたデュースがいた。
何事かと、目の前の光景に呆然となるユウ。
その時、エースの拘束が外れたデュースは顔を真っ赤にして叫んだ。
「僕は誰かの妹じゃない。正真正銘、男だ!!!!」
「つまりこの写真の美少女は幼い時のデュースなの?」
ユウの口から出た美少女という言葉に漸く笑いが収まりかけていたエースが噴き出した。
対してデュースは恨めし気にユウを見つめ、その失言を責め立てる。
「ごめん。この写真の子供は幼い時のデュースなのね?」
言葉を改めたユウは確認の為に再度デュースへと尋ねた。
「ああ、この写真は僕がプリススクールに通っていた時のだ」
何故か仕送りの荷物と共に実家から送られてきたアルバム。
不思議に思いながらも懐かしさから暫く眺めていたのだがその内の一枚がどうやら剥がれてデュースと共に学園へとやって来ていた。
「こう見ると利発そうなのに何でこうなっちゃったかねぇ」
摘んだ写真と目の前のデュースとを見比べながらエースは不思議そうに零す。
「なんだと」
その言葉にデュースは額に青筋を浮かべ、覗き込む様にガンくれる。
「ほら、そうやってすぐキレる」
怯むどころかそういうとこが良くないのだと改めてエースから指摘されたデュースは風船が萎む様に先程迄の勢いを失うも、必死に弁解する。
「優等生を目指すならそう易々と挑発に乗るなよな」
「だが今のはエースが酷い事を言うから思わず!」
最早馴染みとなった二人の言い争いをBGMにユウは一人、夢想する。
幼いデュースがあれだけ可愛いのだからきっとデュースの子供も可愛いのだろうとユウは思った。
ユウの限りある想像力では思い浮かべるのにも限度があったが幼いデュースが可愛いかったのだからいずれ生まれてくる彼の子供が可愛くない筈がないだろうと信じて疑わない。
デュースやエース、友人達が子育てしている頃、自分はこの世界にいるかは分からないが彼らの子供達は一目見てみたいとユウは思った。
そんなユウにデュースが囁く。
「僕はユウに似た子供の方が可愛いと思う」
どうやら妄想が口から出ていたらしい。
しかしその事よりもユウは先程のデュースの言葉が気になっていた。
ユウに似た、と何とも思わせぶりなデュースの発言に驚いたユウはすかさずエースの後ろに隠れる。
「ユウ、どうして僕と距離を取ろうとするんだ」
ユウに近付こうにもエースと言う壁を使いつつ適度な距離を保つユウ。
どうやら先程の発言は無意識だったらしく、明らかに己を警戒するユウにデュースは見て分かる程に狼狽る。
「デュース君さぁ」
一連のやりとりを間近で見ていたエースは呆れていた。
何故ユウから警戒されているのか訳が分からないデュースは結局、翌日まであからさまに距離を取り続けられるのであった。