twst短編
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ユウは少しばかり不満を持っていた。
ほんの些細な事であるのだが、些細な事故に遭遇する頻度は高く、その度に感じる小さな不満がユウの中で積りに積もっていた。
「ふんっ」
片手で瓶を、もう片方の手で蓋を掴み互いを反対方向へと回そうとするのだがユウの力ではびくともしない。
一度手の力を抜いてユウは深々と溜息を吐く。
今、ユウが持つ瓶にしても食堂に置かれた調味料にしてもここが男子校だからなのかこうしてユウの力では如何にもならない程に固く閉じた物が多々ある。
そう言った物に遭遇する度にユウは小さな不満を感じていた。
学園内にある物はユウにしてみると大抵固い。
先述の瓶であったり共用の調味料であったり、果てには水道の蛇口等も固く締められている。
男子学生ならばほんの少しの力で何とかなるのだろうがユウの力では決して容易くはなく、開ける事が出来た頃には息が上がっているなんれ事は珍しくもない。
息が上がってでも何とか開けば良いが勢い余って瓶と蓋が双方飛んで行き、その中身を床にぶち撒けたり、突然蛇口が開いて少し水を飲むつもりが顔面びしょ濡れになる事もあるのでユウの不満は溜まる一方であった。
しかし今、ユウの手の中にある瓶はそんな勢い余って何処かに飛んでいく様子もなく、その蓋は固く閉じられている。
中が真空となり蓋の開かなくなった瓶は50℃程度に温めたお湯に漬ける事で開く事もあるらしいが生憎瓶の中身は授業で使う魔法薬の材料が入っているのでその様な事は出来ない。
自力でも駄目、裏技も無理ならば後は他人に頼るしかないのだがユウ以外の皆は難なく開ける事が出来るだけに彼等の作業の中断させて開けてもらうというのは気が引けた。
しかしどちらにせよこの材料がなくては何時迄も魔法薬を作れないのでユウは申し訳ないながらも誰かに声をかける決心をした。
「どうかされましたか?」
背後からかけられた声にユウは驚き、その場で飛び上がった。
飛び上がった反動で手に持っていた瓶が手から離れて床へと落ちていくのだが伸ばされた手により見事キャッチされる。
「急に手放しては危ないですよ」
瓶を受け止めたアズールは微笑みと共にユウの手へと瓶を戻した。
「アズール先輩。ありがとうございます」
今日の授業は二年生との合同授業で、ユウ達のクラスはアズールのクラスとであった。
「アズール先輩も材料を取りに?」
「ええ」
さすが上級生。
それともアズールだからなのか自作のメモを頼りに材料を探していたユウに対し、アズールは一切の躊躇もなく次から次へと材料を集めていく。
そして最後にアズールはユウの持つ瓶に視線を向けた。
その視線でアズールが瓶の中身を欲しがっている事に気付いたユウは慌てる。
「ちょっと待って下さいね」
何せ瓶が固過ぎて開かない為ユウも途方に暮れていた。
かなり固く締められているのでアズールでも瓶を開ける事は難しいだろうと勝手に判断して、ユウは誰か蓋を開けれそうな人はいないか辺りを見渡し探した。
「この蓋、凄く固いので誰かに開けてもら」
おうと思いますと、ユウが言い終える前に瓶はアズールにより抜き取られていた。
そして次の言葉も発する間もなく瓶の蓋はアズールにより開けられる。
「開きましたよ。どうぞ」
「ありがとう、ございます?」
ユウは今、何が起きたのか分からなかった。
瓶の蓋はとても固く閉じていた。
少し固い位で有れば何とか開けられるユウですら全く歯が立たなかった瓶があっさりアズールの手により開けられた。
「僕も一応男ですからね。貴女よりは多少の力があるんですよ」
にっこりと、まるでユウの心を読んだかの様にアズールが告げる。
「成る程」
そうは返したユウであるが未だ彼女の頭は目の前で起きた事の処理が終えられていない。
そんなユウの手にアズールはそっと触れた。
「先程の様に少し力のいる様な事が有れば是非、僕に仰って下さい。勿論、蓋がを開ける位の事で対価を要求したりしません」
最早ユウの返答は声にもならなかった。
懸命に首を縦に振るい応えるユウ。
そしてアズールはユウに瓶を握らせるとその中から必要な材料を抜き取り、己が陣取るテーブルへと戻っていった。
一人残されたユウはその立ち去るアズールの背中を呆然と見ていた。
「アズール先輩、何だか男の人みたいだった」
少し間抜けな顔で漏らしたユウ。
アズールはみたい、ではなく正真正銘、男である。
しかしユウの抱くアズールの印象は美人でインテリ、司令塔、某ちりめん問屋の隠居ポジションである。
やっておしまいなさいと、仲の良い双子を嗾けるイメージであるし実際嗾けられて恐い目をユウは見た。
兎に角ユウのイメージするアズールは力強さには程遠い。
というのにユウがいくら頑張っても開けられなかった瓶をいとも簡単に開けてしまい、その力の強さから普段は彼に抱かない男らしさを感じた。
急にアズールを異性として意識したユウは体温を上げ、顔を赤くさせる。
「おい、サボるな」
鍋を掻き混ぜていたジャミルは戻ってきたアズールを睨んだ。
今回の授業で作る魔法薬は難易度が高い為、渋々アズールと組んだというのに開始して暫く鍋から離れたアズールにジャミルは文句の一つや二つは言わずには気が済まなかった。
しかしジャミルがいくら言ってもアズールはご機嫌である。
その機嫌の良い顔に気味の悪さを感じて引いたジャミルはアズールが手に持つ物に気がつく。
「何でまた材料を持って来たんだ?」
既に材料の準備を済まして魔法薬の調合は始まっているというのにアズールの手には何故か用意した物と同じ物があった。
「ああ、警戒されてはいけないので材料を集めるふりをするつもりだったのですがついうっかり持って来てしまいました」
「俺が一人で懸命に薬を調合しているというのに君は彼女に現を抜かしていたのか」
「困っている女性がいたら手を差し伸べるのが紳士というものでしょう?」
酷い男だと漏らしたジャミルに対しアズールは反省する様子はない。
そんな開き直った態度のアズールと鍋を掻き混ぜるのを交代したジャミルは小さく笑った。
「そもそもユウが困っていたのはお前が固く閉めていた瓶だったと思うが」
「そうでしたかね」
アズールはジャミルの言葉に微笑み返し知らぬ存ぜぬを貫く。
「本当は何か目的があってユウに手を貸したんだろう?」
でなければおかしいと、アズールの行動をジャミルは否定する。
「こちらが勝手に手を出しただけで貸してはいないですよ。ただ、少し、下心はありますが」
「はぁ?」
ジャミルが呆れた声で返した。
その時少し離れた場所から小さな爆発音が聞こえた。
そして辺りに漂い出す焦げくささ。
見ればユウ達の使っていた鍋から黒煙が上がっている。
その見るからに分かる失敗に教室中の生徒が注目した。
ユウがペコペコと仲間に頭を下げている事から今回の失敗の原因はユウにあるらしい。
見れば顔色は平常であるが首や耳は未だ少し赤みが残っていた。
そんなユウを見てアズールはおやおやと、小さく零す。
「ユウさんには少しばかり僕の事を意識してもらいたかったのですがどうやらやり過ぎた様ですね」
申し訳なさそうに呟かれた言葉はクルーウェルの叱責の言葉にかき消され誰にも届かなかった。
ほんの些細な事であるのだが、些細な事故に遭遇する頻度は高く、その度に感じる小さな不満がユウの中で積りに積もっていた。
「ふんっ」
片手で瓶を、もう片方の手で蓋を掴み互いを反対方向へと回そうとするのだがユウの力ではびくともしない。
一度手の力を抜いてユウは深々と溜息を吐く。
今、ユウが持つ瓶にしても食堂に置かれた調味料にしてもここが男子校だからなのかこうしてユウの力では如何にもならない程に固く閉じた物が多々ある。
そう言った物に遭遇する度にユウは小さな不満を感じていた。
学園内にある物はユウにしてみると大抵固い。
先述の瓶であったり共用の調味料であったり、果てには水道の蛇口等も固く締められている。
男子学生ならばほんの少しの力で何とかなるのだろうがユウの力では決して容易くはなく、開ける事が出来た頃には息が上がっているなんれ事は珍しくもない。
息が上がってでも何とか開けば良いが勢い余って瓶と蓋が双方飛んで行き、その中身を床にぶち撒けたり、突然蛇口が開いて少し水を飲むつもりが顔面びしょ濡れになる事もあるのでユウの不満は溜まる一方であった。
しかし今、ユウの手の中にある瓶はそんな勢い余って何処かに飛んでいく様子もなく、その蓋は固く閉じられている。
中が真空となり蓋の開かなくなった瓶は50℃程度に温めたお湯に漬ける事で開く事もあるらしいが生憎瓶の中身は授業で使う魔法薬の材料が入っているのでその様な事は出来ない。
自力でも駄目、裏技も無理ならば後は他人に頼るしかないのだがユウ以外の皆は難なく開ける事が出来るだけに彼等の作業の中断させて開けてもらうというのは気が引けた。
しかしどちらにせよこの材料がなくては何時迄も魔法薬を作れないのでユウは申し訳ないながらも誰かに声をかける決心をした。
「どうかされましたか?」
背後からかけられた声にユウは驚き、その場で飛び上がった。
飛び上がった反動で手に持っていた瓶が手から離れて床へと落ちていくのだが伸ばされた手により見事キャッチされる。
「急に手放しては危ないですよ」
瓶を受け止めたアズールは微笑みと共にユウの手へと瓶を戻した。
「アズール先輩。ありがとうございます」
今日の授業は二年生との合同授業で、ユウ達のクラスはアズールのクラスとであった。
「アズール先輩も材料を取りに?」
「ええ」
さすが上級生。
それともアズールだからなのか自作のメモを頼りに材料を探していたユウに対し、アズールは一切の躊躇もなく次から次へと材料を集めていく。
そして最後にアズールはユウの持つ瓶に視線を向けた。
その視線でアズールが瓶の中身を欲しがっている事に気付いたユウは慌てる。
「ちょっと待って下さいね」
何せ瓶が固過ぎて開かない為ユウも途方に暮れていた。
かなり固く締められているのでアズールでも瓶を開ける事は難しいだろうと勝手に判断して、ユウは誰か蓋を開けれそうな人はいないか辺りを見渡し探した。
「この蓋、凄く固いので誰かに開けてもら」
おうと思いますと、ユウが言い終える前に瓶はアズールにより抜き取られていた。
そして次の言葉も発する間もなく瓶の蓋はアズールにより開けられる。
「開きましたよ。どうぞ」
「ありがとう、ございます?」
ユウは今、何が起きたのか分からなかった。
瓶の蓋はとても固く閉じていた。
少し固い位で有れば何とか開けられるユウですら全く歯が立たなかった瓶があっさりアズールの手により開けられた。
「僕も一応男ですからね。貴女よりは多少の力があるんですよ」
にっこりと、まるでユウの心を読んだかの様にアズールが告げる。
「成る程」
そうは返したユウであるが未だ彼女の頭は目の前で起きた事の処理が終えられていない。
そんなユウの手にアズールはそっと触れた。
「先程の様に少し力のいる様な事が有れば是非、僕に仰って下さい。勿論、蓋がを開ける位の事で対価を要求したりしません」
最早ユウの返答は声にもならなかった。
懸命に首を縦に振るい応えるユウ。
そしてアズールはユウに瓶を握らせるとその中から必要な材料を抜き取り、己が陣取るテーブルへと戻っていった。
一人残されたユウはその立ち去るアズールの背中を呆然と見ていた。
「アズール先輩、何だか男の人みたいだった」
少し間抜けな顔で漏らしたユウ。
アズールはみたい、ではなく正真正銘、男である。
しかしユウの抱くアズールの印象は美人でインテリ、司令塔、某ちりめん問屋の隠居ポジションである。
やっておしまいなさいと、仲の良い双子を嗾けるイメージであるし実際嗾けられて恐い目をユウは見た。
兎に角ユウのイメージするアズールは力強さには程遠い。
というのにユウがいくら頑張っても開けられなかった瓶をいとも簡単に開けてしまい、その力の強さから普段は彼に抱かない男らしさを感じた。
急にアズールを異性として意識したユウは体温を上げ、顔を赤くさせる。
「おい、サボるな」
鍋を掻き混ぜていたジャミルは戻ってきたアズールを睨んだ。
今回の授業で作る魔法薬は難易度が高い為、渋々アズールと組んだというのに開始して暫く鍋から離れたアズールにジャミルは文句の一つや二つは言わずには気が済まなかった。
しかしジャミルがいくら言ってもアズールはご機嫌である。
その機嫌の良い顔に気味の悪さを感じて引いたジャミルはアズールが手に持つ物に気がつく。
「何でまた材料を持って来たんだ?」
既に材料の準備を済まして魔法薬の調合は始まっているというのにアズールの手には何故か用意した物と同じ物があった。
「ああ、警戒されてはいけないので材料を集めるふりをするつもりだったのですがついうっかり持って来てしまいました」
「俺が一人で懸命に薬を調合しているというのに君は彼女に現を抜かしていたのか」
「困っている女性がいたら手を差し伸べるのが紳士というものでしょう?」
酷い男だと漏らしたジャミルに対しアズールは反省する様子はない。
そんな開き直った態度のアズールと鍋を掻き混ぜるのを交代したジャミルは小さく笑った。
「そもそもユウが困っていたのはお前が固く閉めていた瓶だったと思うが」
「そうでしたかね」
アズールはジャミルの言葉に微笑み返し知らぬ存ぜぬを貫く。
「本当は何か目的があってユウに手を貸したんだろう?」
でなければおかしいと、アズールの行動をジャミルは否定する。
「こちらが勝手に手を出しただけで貸してはいないですよ。ただ、少し、下心はありますが」
「はぁ?」
ジャミルが呆れた声で返した。
その時少し離れた場所から小さな爆発音が聞こえた。
そして辺りに漂い出す焦げくささ。
見ればユウ達の使っていた鍋から黒煙が上がっている。
その見るからに分かる失敗に教室中の生徒が注目した。
ユウがペコペコと仲間に頭を下げている事から今回の失敗の原因はユウにあるらしい。
見れば顔色は平常であるが首や耳は未だ少し赤みが残っていた。
そんなユウを見てアズールはおやおやと、小さく零す。
「ユウさんには少しばかり僕の事を意識してもらいたかったのですがどうやらやり過ぎた様ですね」
申し訳なさそうに呟かれた言葉はクルーウェルの叱責の言葉にかき消され誰にも届かなかった。