twst短編
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「こら!余所見しない!」
きっかけは合同であった錬金術の授業での一コマである。
ユウがグリムに声をかけられ、一瞬であるが視線を鍋から逸らした時にユウとペアであったラギーが言い放った言葉が始まりであった。
「ラギー先輩、お兄ちゃんみたい」
授業がひと段落したユウは先程のラギーを思い出し零す。
「オレの事をお兄ちゃんって呼んでくれても構わないっスよ」
それに対してほんの冗談のつもりでラギーは応えたのだがユウはそれを冗談と受け取らなかった。
ユウは一人っ子であった。
対して同級生は兄や姉を持つ者が多く、口では歳が上の兄や姉に文句を零しながらも事あるごとに仲良くする様がユウにはとても羨ましかった。
しかしいくら両親に強請ろうと、サンタへの手紙や七夕の短冊に書こうともユウに兄や姉が出来る筈もない。
成長してからは年上の兄弟が欲しいと言って両親を困らせる事を言わなくなったユウであるが、その気持ち迄は捨てきれていなかった為、ユウはラギーの言葉を冗談を鵜呑みにしてラギーをお兄ちゃんと呼ぶ様になった。
「お兄ちゃん」
登校時の挨拶から始まり廊下でのすれ違い、合同授業に昼食の際など、とにかくユウはラギーを見つける度に駆け寄り笑ってお兄ちゃんと声をかけた。
そんなユウにラギーはというと、始めこそは冗談を真に受けて戯れにくるユウに多少の面倒臭さを感じていたが今は打って変わりにこやかに対応していた。
というのもラギーをお兄ちゃんと呼ぶユウは甘えて来るどころかラギーの好物であるドーナッツをわざわざ揚げてきたり部活に差し入れを用意したりと献身的。
加えてユウに尽くされるラギーを羨ましがる者もおり、ラギーは空腹だけでなく優越感も満たされていた。
しかしあれこれされては流石のラギーも何か裏があるのではと訝しむのだがユウの本人にさりげなく尋ねてみるとユウのラギーに対するこれまでの行動は今迄自分に兄や姉がいたらしたかった事を実践しているに過ぎなかった。
「もしかして迷惑でしたか?」
「いやいや」
顔を青ざめさせるユウにラギーは手を振るい否定する。
「寧ろ出来た妹でありがたいっスよ」
ラギーにとっての妹とは庇護する存在であり与える存在であった。
かつての自分がそうであった様にラギーもこれまで血の繋がらない妹や弟の様な者達に与えてきた。
けれど成り行きで新しくラギーの妹となったユウは与えるどころかラギーを喜ばそうと色々な物を与えてくれるのである。
出来た妹だと感心する反面このままではいけないとラギーは思った。
地元では頼れる兄貴分として通ってきた自分が年下の、ましてや女の子であるユウに与えられてばかりではいけないと思った。
それからの二人はというと、それこそユウの頭に耳が生えていれば本当の兄妹と見紛う程に仲が良かった。
ラギーは年上である事を生かしてユウに勉強を教えたり絡まれる所を庇ったりと活躍した。
するとユウはますます頼れるお兄ちゃんであるラギーにべったりで、仲睦まじ気にラギーの腕にくっついて歩くユウの姿がよく学園内で見かけられた。
「お兄ちゃんに紹介したい人がいるの」
ユウの言葉にラギーはとうとう来たと思った。
何か物言いたげにユウがラギーを見つめる様になったのはいつの頃か。
何かお願いであったり相談であればすぐにラギーへと言うユウの随分慎重な様子にラギーは彼氏を紹介されるに違いないと確信めいたものを抱いていた。
というのもユウの物言いた気な視線がラギーを取り巻く以前、ユウはやたらと物思いに耽け、しきりに溜息を吐きくなど、まるで恋の病に罹ったかの様な症状を見せている。
やはりそれも勘ではあるがユウが恋をしているに違いないと確信を抱いていたラギーは敢えて何も触れず心の中で応援していた。
ラギーはユウという人物を信用しており、その彼女が選んだ人物ならば立派な人物であろうと思った。
そしてこの頃には少しばかりシスコンが入って来ていたラギーはうちの妹が告白したならば余程相手が既婚者でもない限り失敗しないだろうと根拠のない自信を抱いていた。
そしてそれから暫く、ユウに病の気はなくなり、失恋をしたという様子もなく、きっと上手くいったのだろうとラギーは勝手に判断していた所にユウの言葉である。
「実はこの間からお付き合いしてる人がいて、それで、お兄ちゃんにまず報告したくて」
ユウの話を聞きながらラギーは心の内で見事、恋を成就させた事を褒め称えた。
と、同時に相手は誰であるのか考える。
それなりにユウとは一緒にいた筈であるが相手が誰であるのかラギーにはさっぱり分からなかった。
何時も一緒にいるハーツラビュルの一年コンビのどちらかかと思ったががあれはまだ恋も分からぬお子ちゃまであるとラギーはすぐに断じる。
それでは彼等の次に仲良くしているポムフィオーレの一年やディアソムニアの一年にも言えた事である。
次にラギーは己の後輩であるジャックが頭に浮かんだ。
寮の後輩という欲目を抜いてもジャックがユウの相手ならば安心であった。
唯一、長男という事が気になるが家族とは円満であるようだし本人はいたって真面目。
何よりジャックならばユウを大切にしてくれそうである。
他にもユウと親しい双子のウツボだとか蛇の従者だとかその他諸々候補がラギーの頭に浮かんだがやはりイチオシはジャックであった。
「それで今から紹介してもいい?」
「えっ、今からっスか?!」
今からと言われてもラギーは今、レオナの夜食の準備をしておりエプロン姿であった。
唐突なユウの申し出に訳を聞けば早く報告がしたかったとの事である。
ならば仕方ないと、近頃ユウに対してのみ緩んでいる思考でラギーが了承するとユウは緊張を帯びた表情を明るいものに変えた。
「ちょっと待っててね!すぐに連れて来るから」
そう言って調理場をぱたぱたと出て行くユウ。
「すぐって事はやっぱりサバナクローの誰かっスよね?」
他寮からここへ連れて来るには時間がかかり過ぎる。
単にすぐというのがユウの誤りにしてもサバナクローにわざわざ相手を連れて来ると言う事は常に敵対するディアソムニアでも体育会系が苦手そうなイグニハイドの寮生ではないだろうな、とラギーは断定した。
やはりジャックだろうか、だったら良いな、何てラギーは考えながらレオナの夜食をちゃっちゃと仕上げるとエプロンを脱いで服の皺を伸ばした。
折角妹が大切な人を紹介してくれるのだからだらしない格好ではいけない。
「よお」
そんなラギーの元にレオナが顔を出した。
普段であれば調理場に近付きもしないレオナの登場に驚いたラギーであるがすぐにちょうど良いと思った。
「レオナさん。オレ、ちょっと今、手が離せないんで夜食を自分で持ってってもらえますか?」
ユウから彼氏の紹介を受けなければいけないラギーはレオナにそう言うが何故かレオナは動かない。
それどころか何故か意地の悪い笑みを浮かべていた。
その笑みにラギーが頭を傾げているとレオナの後ろからユウが出てくる。
「お兄ちゃん?」
「あーちょっと待って下さいね。レオナさんを此処から追い出すので」
「おい」
寮長であるレオナが此処にいてはユウの恋人である人物も迷惑だろうとラギーは笑ってレオナを調理場から追い出そうとした。
その強引さに文句を言うレオナ。
ユウは慌ててラギーの行動を止める。
「待ってお兄ちゃん」
「そういえば相手が見当たらないっスけどどこにいるんです」
ユウはラギーに紹介したい人物を連れて来ると言ったが肝心の人物は廊下を覗いても姿は見えなかった。
「ここにいるだろが」
遅れて来るのだろうかと考えたラギーの頭に降って来たレオナの声にラギーは目を大きく見開き瞬かせる。
「こんな時に冗談はよして下さいよレオナさん」
笑って再びレオナをこの場から追い出そうとするラギー。
「待って待って!お兄ちゃん!」
そんなラギーを止めたユウはレオナの隣りに立つと手を掲げて言った。
「こちら、この度お付き合いする事になったレオナ先輩です」
改めて紹介する事はないからと、ユウは続いてレオナに自分の大切な兄だとラギーを紹介した。
ユウから大切と言われてそれこそ始めは感動するラギーであったがいつまでも呑気でいられる事態ではなく、ラギーは酷く困惑して頭を押さえる。
「ちょっと待ってほしいっス。レオナさんがユウくんの彼氏?」
これは冗談か酷い夢だとラギーは思った。
出来ればそうであって欲しいと、そんな淡い期待を抱いてレオナを見る。
しかしレオナは酷く困惑するラギーを見下ろし意地の悪い笑みを浮かべて告げた。
「よろしくなお義兄ちゃん」
監督生
異世界に来て念願のお兄ちゃんが出来て嬉しい。続いてかっこいい彼氏も出来て今が一番幸せ。
ラギー
血が繋がっていないとはいえ近頃シスコンを拗らせてるお兄ちゃん。妹が彼氏を連れて来ても大概は認めるつもりであったがまさか「絶対に彼氏として紹介されたくない三銃士」が一人を連れて来られて困惑してる。
きっかけは合同であった錬金術の授業での一コマである。
ユウがグリムに声をかけられ、一瞬であるが視線を鍋から逸らした時にユウとペアであったラギーが言い放った言葉が始まりであった。
「ラギー先輩、お兄ちゃんみたい」
授業がひと段落したユウは先程のラギーを思い出し零す。
「オレの事をお兄ちゃんって呼んでくれても構わないっスよ」
それに対してほんの冗談のつもりでラギーは応えたのだがユウはそれを冗談と受け取らなかった。
ユウは一人っ子であった。
対して同級生は兄や姉を持つ者が多く、口では歳が上の兄や姉に文句を零しながらも事あるごとに仲良くする様がユウにはとても羨ましかった。
しかしいくら両親に強請ろうと、サンタへの手紙や七夕の短冊に書こうともユウに兄や姉が出来る筈もない。
成長してからは年上の兄弟が欲しいと言って両親を困らせる事を言わなくなったユウであるが、その気持ち迄は捨てきれていなかった為、ユウはラギーの言葉を冗談を鵜呑みにしてラギーをお兄ちゃんと呼ぶ様になった。
「お兄ちゃん」
登校時の挨拶から始まり廊下でのすれ違い、合同授業に昼食の際など、とにかくユウはラギーを見つける度に駆け寄り笑ってお兄ちゃんと声をかけた。
そんなユウにラギーはというと、始めこそは冗談を真に受けて戯れにくるユウに多少の面倒臭さを感じていたが今は打って変わりにこやかに対応していた。
というのもラギーをお兄ちゃんと呼ぶユウは甘えて来るどころかラギーの好物であるドーナッツをわざわざ揚げてきたり部活に差し入れを用意したりと献身的。
加えてユウに尽くされるラギーを羨ましがる者もおり、ラギーは空腹だけでなく優越感も満たされていた。
しかしあれこれされては流石のラギーも何か裏があるのではと訝しむのだがユウの本人にさりげなく尋ねてみるとユウのラギーに対するこれまでの行動は今迄自分に兄や姉がいたらしたかった事を実践しているに過ぎなかった。
「もしかして迷惑でしたか?」
「いやいや」
顔を青ざめさせるユウにラギーは手を振るい否定する。
「寧ろ出来た妹でありがたいっスよ」
ラギーにとっての妹とは庇護する存在であり与える存在であった。
かつての自分がそうであった様にラギーもこれまで血の繋がらない妹や弟の様な者達に与えてきた。
けれど成り行きで新しくラギーの妹となったユウは与えるどころかラギーを喜ばそうと色々な物を与えてくれるのである。
出来た妹だと感心する反面このままではいけないとラギーは思った。
地元では頼れる兄貴分として通ってきた自分が年下の、ましてや女の子であるユウに与えられてばかりではいけないと思った。
それからの二人はというと、それこそユウの頭に耳が生えていれば本当の兄妹と見紛う程に仲が良かった。
ラギーは年上である事を生かしてユウに勉強を教えたり絡まれる所を庇ったりと活躍した。
するとユウはますます頼れるお兄ちゃんであるラギーにべったりで、仲睦まじ気にラギーの腕にくっついて歩くユウの姿がよく学園内で見かけられた。
「お兄ちゃんに紹介したい人がいるの」
ユウの言葉にラギーはとうとう来たと思った。
何か物言いたげにユウがラギーを見つめる様になったのはいつの頃か。
何かお願いであったり相談であればすぐにラギーへと言うユウの随分慎重な様子にラギーは彼氏を紹介されるに違いないと確信めいたものを抱いていた。
というのもユウの物言いた気な視線がラギーを取り巻く以前、ユウはやたらと物思いに耽け、しきりに溜息を吐きくなど、まるで恋の病に罹ったかの様な症状を見せている。
やはりそれも勘ではあるがユウが恋をしているに違いないと確信を抱いていたラギーは敢えて何も触れず心の中で応援していた。
ラギーはユウという人物を信用しており、その彼女が選んだ人物ならば立派な人物であろうと思った。
そしてこの頃には少しばかりシスコンが入って来ていたラギーはうちの妹が告白したならば余程相手が既婚者でもない限り失敗しないだろうと根拠のない自信を抱いていた。
そしてそれから暫く、ユウに病の気はなくなり、失恋をしたという様子もなく、きっと上手くいったのだろうとラギーは勝手に判断していた所にユウの言葉である。
「実はこの間からお付き合いしてる人がいて、それで、お兄ちゃんにまず報告したくて」
ユウの話を聞きながらラギーは心の内で見事、恋を成就させた事を褒め称えた。
と、同時に相手は誰であるのか考える。
それなりにユウとは一緒にいた筈であるが相手が誰であるのかラギーにはさっぱり分からなかった。
何時も一緒にいるハーツラビュルの一年コンビのどちらかかと思ったががあれはまだ恋も分からぬお子ちゃまであるとラギーはすぐに断じる。
それでは彼等の次に仲良くしているポムフィオーレの一年やディアソムニアの一年にも言えた事である。
次にラギーは己の後輩であるジャックが頭に浮かんだ。
寮の後輩という欲目を抜いてもジャックがユウの相手ならば安心であった。
唯一、長男という事が気になるが家族とは円満であるようだし本人はいたって真面目。
何よりジャックならばユウを大切にしてくれそうである。
他にもユウと親しい双子のウツボだとか蛇の従者だとかその他諸々候補がラギーの頭に浮かんだがやはりイチオシはジャックであった。
「それで今から紹介してもいい?」
「えっ、今からっスか?!」
今からと言われてもラギーは今、レオナの夜食の準備をしておりエプロン姿であった。
唐突なユウの申し出に訳を聞けば早く報告がしたかったとの事である。
ならば仕方ないと、近頃ユウに対してのみ緩んでいる思考でラギーが了承するとユウは緊張を帯びた表情を明るいものに変えた。
「ちょっと待っててね!すぐに連れて来るから」
そう言って調理場をぱたぱたと出て行くユウ。
「すぐって事はやっぱりサバナクローの誰かっスよね?」
他寮からここへ連れて来るには時間がかかり過ぎる。
単にすぐというのがユウの誤りにしてもサバナクローにわざわざ相手を連れて来ると言う事は常に敵対するディアソムニアでも体育会系が苦手そうなイグニハイドの寮生ではないだろうな、とラギーは断定した。
やはりジャックだろうか、だったら良いな、何てラギーは考えながらレオナの夜食をちゃっちゃと仕上げるとエプロンを脱いで服の皺を伸ばした。
折角妹が大切な人を紹介してくれるのだからだらしない格好ではいけない。
「よお」
そんなラギーの元にレオナが顔を出した。
普段であれば調理場に近付きもしないレオナの登場に驚いたラギーであるがすぐにちょうど良いと思った。
「レオナさん。オレ、ちょっと今、手が離せないんで夜食を自分で持ってってもらえますか?」
ユウから彼氏の紹介を受けなければいけないラギーはレオナにそう言うが何故かレオナは動かない。
それどころか何故か意地の悪い笑みを浮かべていた。
その笑みにラギーが頭を傾げているとレオナの後ろからユウが出てくる。
「お兄ちゃん?」
「あーちょっと待って下さいね。レオナさんを此処から追い出すので」
「おい」
寮長であるレオナが此処にいてはユウの恋人である人物も迷惑だろうとラギーは笑ってレオナを調理場から追い出そうとした。
その強引さに文句を言うレオナ。
ユウは慌ててラギーの行動を止める。
「待ってお兄ちゃん」
「そういえば相手が見当たらないっスけどどこにいるんです」
ユウはラギーに紹介したい人物を連れて来ると言ったが肝心の人物は廊下を覗いても姿は見えなかった。
「ここにいるだろが」
遅れて来るのだろうかと考えたラギーの頭に降って来たレオナの声にラギーは目を大きく見開き瞬かせる。
「こんな時に冗談はよして下さいよレオナさん」
笑って再びレオナをこの場から追い出そうとするラギー。
「待って待って!お兄ちゃん!」
そんなラギーを止めたユウはレオナの隣りに立つと手を掲げて言った。
「こちら、この度お付き合いする事になったレオナ先輩です」
改めて紹介する事はないからと、ユウは続いてレオナに自分の大切な兄だとラギーを紹介した。
ユウから大切と言われてそれこそ始めは感動するラギーであったがいつまでも呑気でいられる事態ではなく、ラギーは酷く困惑して頭を押さえる。
「ちょっと待ってほしいっス。レオナさんがユウくんの彼氏?」
これは冗談か酷い夢だとラギーは思った。
出来ればそうであって欲しいと、そんな淡い期待を抱いてレオナを見る。
しかしレオナは酷く困惑するラギーを見下ろし意地の悪い笑みを浮かべて告げた。
「よろしくなお義兄ちゃん」
監督生
異世界に来て念願のお兄ちゃんが出来て嬉しい。続いてかっこいい彼氏も出来て今が一番幸せ。
ラギー
血が繋がっていないとはいえ近頃シスコンを拗らせてるお兄ちゃん。妹が彼氏を連れて来ても大概は認めるつもりであったがまさか「絶対に彼氏として紹介されたくない三銃士」が一人を連れて来られて困惑してる。