twst短編
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その日、1年A組と2年D組で行われる筈であった錬金術の授業は自習であった。
というのもこれより一つ前に授業を行なっていたクラスでやらかした者がおり、その後始末にクルーウェルが追われて来れないが為の自習であった。
元々今日の授業は次回行われる授業の予習の様なものであった為、生徒達は実験でペアを組む上級生と共に黙々と自習をしている。
「イシダイ先生ちょー怒ってる」
隣の実習室から聞こえるクルーウェルの声と鞭の音にフロイドはけらけらと笑い、隣に座るユウに話を振る。
「そうですね」
対してユウの返事はというと生返事でフロイドは唇を尖らせた。
が、何時もの様に絡む気にはならなかった。
ユウがここ暫くこんな調子だというのをフロイドは部活の後輩であるエースからは聞いていた。
体調が悪い訳ではないが様子がおかしいのだ、変なのだと言葉では茶化しながらも実は胸の内では心配しているエースにフロイドはその訳を知っている事を話さなかった。
フロイドはユウの不調の原因を知っていた。
正しくはそうなった事の起こりを見ていた。
事は数日前に迄遡る。
ユウと、その恋人であるアズールは喧嘩した。
「先輩、働き過ぎです」
喧嘩の始まりはユウが働き過ぎであるとアズールを諫めた事に始まる。
近頃のアズールは多忙であった。
モストロラウンジの経営に寮長の仕事、授業に手を抜く事もなく万全に予習と復習を済まし、明らかにそれだけでも一学生にしてはいつ過労で倒れてもおかしくない状況だというのにアズールは何時もの悪い癖で欲張り、恋人であるユウとの時間も確保しようとした。
この調子ではその内アズールが倒れてしまうと危惧するユウ。
既にその兆候も出ていた。
頻繁に頭に掛けた眼鏡がないと探し、眠気覚ましの珈琲は既に用意していたにも関わらず幾度も新しい物を淹れてしまい、その机に溢れかえる珈琲をインク壺と間違えてペン先を入れてしまい、と疲労と寝不足のアズールは散々であった。
そんなアズールを見兼ねてせめて自分との時間を控えて少しで眠って欲しいと訴えるユウ。
しかしその疲労により思考能力が格段に低下していたアズールはユウの真意に気付かずあろう事か責めた。
どうやらアズールはユウが自分と会いたくないのだと勘違いしていた。
アズールが忙しいのを理解している為に自分に割く時間を勿体ないと判断したユウと自分の体調をおしてでも恋人であるユウとの時間を少しでも得て大切にしたいアズール。
互いに思い合うが故に起こった喧嘩は平行線を辿った。
これが二人だけの喧嘩であれば言い合っている内に互いの気持ちに気付いて勝手に燃え上がり無事に解決していたのだが不運な事にその二人の喧嘩の場には当人達の他に傍観を決めるフロイドと、その片割れであるジェイドがいた。
このジェイドが曲者であった。
日頃はアズールに対して嫌味を呈すジェイドであるがそれはジェイドがアズールに対する感情を拗らせているが故だという事をフロイドはよく知っている。
ジェイドにとってアズールは生まれた時から側にいるフロイド以外に初めて気に入った存在で、普段の態度も結局はエレメンタリースクールに通う子供が好きな子に天邪鬼で嫌な言葉を投げかけてしまう、それと同じであった。
以前、アズールと恋人関係になって暫くユウはジェイドを姑と称した。
フロイドがどういう意味なのか尋ねればユウの言う姑とは息子を愛すが故にその妻のやる事為す事に口を出しダメ出しをしてしまう息子の母親を指し、実際ユウはジェイドから日々、ねちねちとあれこれ言われていた。
別にジェイドはアズールを産んだわけでも育てたわけでもないのだがジェイドのユウに対する行動はまさにユウの言う姑そのもので、そんな姑ジェイドがアズールを援護するものだから状況は泥沼となった。
そんな訳で仲直りする事もなく喧嘩をしたままのユウはそのせいか調子が悪い。
いつもならば自習とはいえグリムが寝てしまえば起こそうとするユウであるが今のユウは上の空で、グリムが膝の上ですぴすぴと寝息を立てて眠ろうとも起こそうともしない。
そんなユウがフロイドは面白くなく、どうにか二人が仲直り出来ないかと考えていたところ突然、勢いよく教室の扉が開かれた。
「ユウさん」
それは別の場所で授業を受けている筈のアズールであった。
突然のアズールの登場に教室中が騒めき、ユウも思わず立ち上がり驚いている。
「今更何ですか!」
しかしすぐに表情を改め、そっぽを向くユウ。
教室生徒達はこの状況が分からずただ二人のやりとりを見ていた。
「謝りに来ました。先日の事は全て僕が悪かった」
八割どころか全面的な己の非を認めたアズールにますます教室中は騒めく。
あれは誰だ、誰なんだと生徒達は口々に言い合いしまいには変身薬を飲みアズール化けた別人では?などと疑う者も現れる。
しかし二人は周りの生徒達に目もくれず完全に自分達の世界に入っていた。
「貴女はただ、僕の体調を気にして言ってくれたと言うのに僕はその思いを勘違いして酷い言葉を投げてしまった」
「そうですよ。私はただアズール先輩が倒れないか心配だったのに先輩は私の心配を他所に無理に私との時間を作ろうとする」
「だって愛しい貴女と少しも会えない何て寂しいではないですか」
「馬鹿っ」
アズールの愛しいと言う言葉にユウは頬をほんのりと染めて言った。
「私だって寂しかったんですから」
完全に他の者達など眼中にない二人。
ユウはアズールの元へと駆け寄り抱き付く。
自分達は今、一体何を見せられているのだと皆は訳も分からず呆然としていた。
ユウが急に立ち上がった事で床に転がされたグリムも寝起きという事を於いても訳が分からないという様子である。
「この泥棒猫」
「ジェイド先輩!?」
そこにますますこのおかしな状況を混乱に陥れる存在が現れた。
ジェイドである。
きっと授業をサボるアズールを見かけて何事かと後をつけていたのだろう。
そっと開けられてままの教室の扉の影でユウを見つめるジェイドの姿は少しばかりホラーであった。
何故お前迄出てくると、フロイドは内心片割れに対して思った。
アズールに関してはユウが関わるとIQが著しく低下する為この様な突発的な行動も理解出来るがジェイドの行動にはさすがのフロイドも理解が出来ない。
未だ授業中だというのに構わず言い争いを始める三人。
「いや、他所でしろよ」
誰かが小さく零した言葉であるが何故か妙に皆の耳に入った。
その言葉に対しそれな、とフロイドも含めた皆は静かに頷いた。
というのもこれより一つ前に授業を行なっていたクラスでやらかした者がおり、その後始末にクルーウェルが追われて来れないが為の自習であった。
元々今日の授業は次回行われる授業の予習の様なものであった為、生徒達は実験でペアを組む上級生と共に黙々と自習をしている。
「イシダイ先生ちょー怒ってる」
隣の実習室から聞こえるクルーウェルの声と鞭の音にフロイドはけらけらと笑い、隣に座るユウに話を振る。
「そうですね」
対してユウの返事はというと生返事でフロイドは唇を尖らせた。
が、何時もの様に絡む気にはならなかった。
ユウがここ暫くこんな調子だというのをフロイドは部活の後輩であるエースからは聞いていた。
体調が悪い訳ではないが様子がおかしいのだ、変なのだと言葉では茶化しながらも実は胸の内では心配しているエースにフロイドはその訳を知っている事を話さなかった。
フロイドはユウの不調の原因を知っていた。
正しくはそうなった事の起こりを見ていた。
事は数日前に迄遡る。
ユウと、その恋人であるアズールは喧嘩した。
「先輩、働き過ぎです」
喧嘩の始まりはユウが働き過ぎであるとアズールを諫めた事に始まる。
近頃のアズールは多忙であった。
モストロラウンジの経営に寮長の仕事、授業に手を抜く事もなく万全に予習と復習を済まし、明らかにそれだけでも一学生にしてはいつ過労で倒れてもおかしくない状況だというのにアズールは何時もの悪い癖で欲張り、恋人であるユウとの時間も確保しようとした。
この調子ではその内アズールが倒れてしまうと危惧するユウ。
既にその兆候も出ていた。
頻繁に頭に掛けた眼鏡がないと探し、眠気覚ましの珈琲は既に用意していたにも関わらず幾度も新しい物を淹れてしまい、その机に溢れかえる珈琲をインク壺と間違えてペン先を入れてしまい、と疲労と寝不足のアズールは散々であった。
そんなアズールを見兼ねてせめて自分との時間を控えて少しで眠って欲しいと訴えるユウ。
しかしその疲労により思考能力が格段に低下していたアズールはユウの真意に気付かずあろう事か責めた。
どうやらアズールはユウが自分と会いたくないのだと勘違いしていた。
アズールが忙しいのを理解している為に自分に割く時間を勿体ないと判断したユウと自分の体調をおしてでも恋人であるユウとの時間を少しでも得て大切にしたいアズール。
互いに思い合うが故に起こった喧嘩は平行線を辿った。
これが二人だけの喧嘩であれば言い合っている内に互いの気持ちに気付いて勝手に燃え上がり無事に解決していたのだが不運な事にその二人の喧嘩の場には当人達の他に傍観を決めるフロイドと、その片割れであるジェイドがいた。
このジェイドが曲者であった。
日頃はアズールに対して嫌味を呈すジェイドであるがそれはジェイドがアズールに対する感情を拗らせているが故だという事をフロイドはよく知っている。
ジェイドにとってアズールは生まれた時から側にいるフロイド以外に初めて気に入った存在で、普段の態度も結局はエレメンタリースクールに通う子供が好きな子に天邪鬼で嫌な言葉を投げかけてしまう、それと同じであった。
以前、アズールと恋人関係になって暫くユウはジェイドを姑と称した。
フロイドがどういう意味なのか尋ねればユウの言う姑とは息子を愛すが故にその妻のやる事為す事に口を出しダメ出しをしてしまう息子の母親を指し、実際ユウはジェイドから日々、ねちねちとあれこれ言われていた。
別にジェイドはアズールを産んだわけでも育てたわけでもないのだがジェイドのユウに対する行動はまさにユウの言う姑そのもので、そんな姑ジェイドがアズールを援護するものだから状況は泥沼となった。
そんな訳で仲直りする事もなく喧嘩をしたままのユウはそのせいか調子が悪い。
いつもならば自習とはいえグリムが寝てしまえば起こそうとするユウであるが今のユウは上の空で、グリムが膝の上ですぴすぴと寝息を立てて眠ろうとも起こそうともしない。
そんなユウがフロイドは面白くなく、どうにか二人が仲直り出来ないかと考えていたところ突然、勢いよく教室の扉が開かれた。
「ユウさん」
それは別の場所で授業を受けている筈のアズールであった。
突然のアズールの登場に教室中が騒めき、ユウも思わず立ち上がり驚いている。
「今更何ですか!」
しかしすぐに表情を改め、そっぽを向くユウ。
教室生徒達はこの状況が分からずただ二人のやりとりを見ていた。
「謝りに来ました。先日の事は全て僕が悪かった」
八割どころか全面的な己の非を認めたアズールにますます教室中は騒めく。
あれは誰だ、誰なんだと生徒達は口々に言い合いしまいには変身薬を飲みアズール化けた別人では?などと疑う者も現れる。
しかし二人は周りの生徒達に目もくれず完全に自分達の世界に入っていた。
「貴女はただ、僕の体調を気にして言ってくれたと言うのに僕はその思いを勘違いして酷い言葉を投げてしまった」
「そうですよ。私はただアズール先輩が倒れないか心配だったのに先輩は私の心配を他所に無理に私との時間を作ろうとする」
「だって愛しい貴女と少しも会えない何て寂しいではないですか」
「馬鹿っ」
アズールの愛しいと言う言葉にユウは頬をほんのりと染めて言った。
「私だって寂しかったんですから」
完全に他の者達など眼中にない二人。
ユウはアズールの元へと駆け寄り抱き付く。
自分達は今、一体何を見せられているのだと皆は訳も分からず呆然としていた。
ユウが急に立ち上がった事で床に転がされたグリムも寝起きという事を於いても訳が分からないという様子である。
「この泥棒猫」
「ジェイド先輩!?」
そこにますますこのおかしな状況を混乱に陥れる存在が現れた。
ジェイドである。
きっと授業をサボるアズールを見かけて何事かと後をつけていたのだろう。
そっと開けられてままの教室の扉の影でユウを見つめるジェイドの姿は少しばかりホラーであった。
何故お前迄出てくると、フロイドは内心片割れに対して思った。
アズールに関してはユウが関わるとIQが著しく低下する為この様な突発的な行動も理解出来るがジェイドの行動にはさすがのフロイドも理解が出来ない。
未だ授業中だというのに構わず言い争いを始める三人。
「いや、他所でしろよ」
誰かが小さく零した言葉であるが何故か妙に皆の耳に入った。
その言葉に対しそれな、とフロイドも含めた皆は静かに頷いた。