twst短編
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「ハロウィンミラー?」
「そう、ハロウィンの夜に鏡を覗くと将来の伴侶が見えるのさ」
そう言ったのはオンボロ寮に住むゴーストの内の一人であった。
彼がまだ人間であった頃、ハロウィンになるとユウと似た歳の女子は未来の旦那様見たさに挙って鏡を覗いたという。
「本来なら準備必要なんだけど今年のハロウィンは満月だからね。鏡を覗くだけで良いよ」
そこまでお膳立てされているとユウはハロウィンミラーなるものをやらなくてはいけない気がした。
その後は学園のハロウィーンの催しの手伝いにあちこちで騒ぎを起こすマジカメモンスターの対処であちこちを駆け回り、そして迎えたハロウィーンのパーティーでは沢山の料理に舌鼓を打ちつつラギーの指導の元、料理を包み持って帰り、とかなり充実したハロウィーンを終えた。
そしてさあ寝ようという所でユウはハロウィンミラーの事を思い出す。
先にベッドで丸くなり眠るグリムを起こさないようユウは静かにベッドを抜け出した。
寮の奥では未だゴースト達がハロウィーンの夜を楽しんでいるのか楽しげな声が聞こえる。
そんな楽しげな彼等の様子に頬を緩めながらユウは用意していた鏡を抱えてそっと寮を出た。
「こんな夜更けに何をしている」
せっかくだからと月や星が良く見える場所でしようと移動したユウはその先でツノ太郎に会った。
先程のパーティー振りであるツノ太郎と軽い挨拶を交わしてユウはこんな時間に外出している訳を話す。
「そんな古いまじないをよく知っていたな」
「オンボロ寮のゴーストに教えてもらったの」
ユウはいそいそと鏡を包んでいた布を取る。
「そんなにも未来の伴侶が気になるのか?」
「そりゃあ少しは気になるけど」
ユウがハロウィンミラーをしようと思ったのには別の目的があった。
ハロウィンミラーは未来の伴侶を映す。
つまり鏡にユウが元いた世界の住人が映ればユウは将来、元の世界に戻れるという証明になる。
ユウはいつか元の世界に戻れるという保証がほしかった。
その為ゴーストからハロウィンミラーを教えて貰った際にその本来の目的とは別の用途を閃いたユウは試してみようという気になった訳である。
しかしこの世界の住人であるツノ太郎にそれを言うのは失礼な気もして笑って誤魔化す。
「それでこの後はどうすれば良いんだっけ」
本来であればハロウィンの前の満月の夜、鏡に月を写し布をかけてハロウィン当日までしまっておくらしいのだが今年のハロウィンは満月という事でゴーストはその前準備は不要だと言っていた。
だが肝心のその後がユウは思い出せない。
「お前はただ鏡を覗いてみれば良い」
ツノ太郎が横からそう言うのでユウはそれに従い鏡を見つめた。
すると鏡には靄の様なものが現れて次第にそれは形ついていく。
輪郭がはっきりしだし後少しで顔が分かるという所で鏡が酷い音を立てて割れた。
「うわっ、わっ」
派手に真ん中からヒビが入った鏡はそのまあ四方へと亀裂を伸ばし、そして粉々になって地面へと落ちる。
その突然の事にユウが瞬きも忘れて驚いているとツノ太郎がそんなユウの手を取り、降りかかった鏡の小さな破片を払った。
「大丈夫か?」
「う、うん。びっくりした」
ユウは地面に落ちた鏡の破片を見つめる。
途端に破片は黄緑色の炎に焼かれた。
黄緑色の炎など自然に発生する筈がなく、ユウがツノ太郎を見上げれば何故か不機嫌な顔付きのツノ太郎と目が合う。
「そんなにも割れた鏡が惜しいか?」
鋭い破片をそのままにしておくのは危ないからと魔法で破片を燃やすツノ太郎にユウはそんな事はないと首を横へと振るい礼を言った。
「けど、どうして急に割れちゃったんだろう」
ユウは顎に手を添えて頭を傾げる。
オンボロ寮にあった比較的に綺麗で劣化していない物を選んだだけにユウは不思議であった。
「表に出ていなくとも劣化が進んでいたんだろう。古い物にはよくある事だ」
「そういうものか」
ツノ太郎の言葉にいまいち納得していないユウであったが実際に鏡は割れてしまったのでユウはそう思う事にした。
それからユウとツノ太郎は暫く大きな満月の下でたわいない話をした。
「これ以上は身体が冷えてしまう。もう戻れ」
「そうするね。ツノ太郎、おやすみ」
そして挨拶を終えて別れたユウが寮へと戻る迄ツノ太郎は見守った。
「鏡に写ったのが自分ではないからといって鏡を割るとは酷い奴じゃ」
目の前に逆さまで現れたリリアにマレウスは眉一つ動かさず見据えた。
「見ていたのか」
「見ておったぞ。お主が鏡に魔法をかけて割るところもバッチリな」
くるりと一回転をして地面へと着地したリリアはにまにと笑う。
「しかしあのマレウス・ドラコニアが鏡に写る恋敵に嫉妬とはのう」
愉快そうに話すリリアにマレウスは漸く表情を顰めさせる。
「ハロウィンミラーに写ったからといって必ず結ばれる訳でもあるまい。鏡を割る必要は無かったじゃろ」
「それでも」
「ん?」
「それでもユウの未来の伴侶が僕以外だというのは許せない」
あからさまに嫉妬して見せるマレウスにリリアは溜息を吐いた。
率直にマレウスのユウに対する感情が拗れていると感じ、やれやれとリリアは肩を竦める。
「あまりそういう感情は表に出すでないぞ」
「分かっている」
折角マレウス自身が見染めた嫁御である。
マレウスの嫉妬に怯えて逃げられては敵わんと釘を刺すリリアであるがマレウスの様子にリリアはマレウスがうっかりやらかさぬよう見張ろうと胸の内で誓った。