twst短編
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中庭の片隅で行われる逢瀬に道行く人の、主にポムフィオーレ寮の生徒が足を止めて悩ましげな息を吐く。
彼等の視線の先には他人に話を聞かれたくないのか身を寄せ合い、相手の耳に口元を近付けては内緒話をする一組の男女。
仲睦まじい彼等の姿は男子校という特性上なかなか拝めない光景である。
道行く者の中には表情を険しくして二人の親密な様子に舌打ちをする者もいたが当人達の人柄も相まり、小説や絵で描かれる様な恋人達の姿にうっとりとため息を吐く者が大多数であった。
そんな二人を良い良いと頷き、笑顔で遠目からを見守るのはリリアである。
リリアは自分の息子であるシルバーがこの男子校で奇跡的に春を迎えた事に大変ご機嫌であった。
目に入れても痛くはないと断言出来る程に可愛がる我が子が勇気とガッツに溢れ、加えて優しいとリリアも気にいるユウと良い仲になっているのだからご機嫌にならない筈がない。
以前から二人が恋人であると噂に聞いていたリリアは何度もシルバーに事実確認をしていたのだが本人からは否定されるばかり。
噂を聞くだけで実際にシルバーとユウが二人っきりでいる姿を見ていないリリアは噂が本当になればと常々思っていたのだがついにその姿を見る事が叶った。
噂の通り見るからに親密な二人にリリアはシルバーのあの否定は照れ隠しだったんじゃなと自己解釈した。
そしてよくよく考えてみれば年頃の息子の恋愛事情を根掘り葉掘り聞こうとするのは酷であったとリリアは猛省する。
「マレウスよ。妬ましいからといってシルバーに呪詛をかけるでないぞ」
大きく目を開き、リリアの言う通り今にもシルバーに向かって呪いをかけそうなマレウスをリリアは諫めた。
「いやーしかしすまんなマレウスよ。わしの息子がかっこ良くて出来た子なばかりにお主の思い人の心を射止めてしまったようじゃ」
全くすまなそうにない声でマレウスに謝るリリア。
リリアの横で顔を俯かせたマレウス、実はユウを一目見た時から惚の字であった。
それこそ名前を知られる事でマレウスの正体を知り、恐れられては心が折れて立ち直れないからと暫く名乗らず彼女が付けた渾名で過ごしていたぐらいである。
結局その後、本名はバレてしまうのだがマレウスの正体を知ってなお恐れを見せない所か、本名が知れて良かったと笑ったユウにマレウスはますます惚れた。
それこそ卒業後はユウを自分の番として故郷である茨の谷に迎え入れるつもりでいた程である。
マレウスはこれまでシルバーとユウの噂を度々聞いていたがあくまで噂、とユウの身持ちの固さを信じていたのだが実際に自分の家臣と親しくするユウの姿を目にしてマレウスは愕然としていた。
「これは僕に対する裏切り以外の何物でもない」
「そもそもユウは始めからお主のものでないだろうに」
鬱々とした声で呟くマレウスにリリアは冷静な声で突っ込んだ。
何ならその声には余裕すらあった。
それもそうだ。
自分の可愛い息子が目をかけていた娘と出来ていたのだからリリアに多少の余裕があってもおかしくはない。
リリアには野望があった。
可愛い息子とその嫁と、その二人の間に生まれた子供、リリアにとっては孫。
それからその孫の子である曾孫達に囲まれて楽しく暮らすという野望があった。
その野望が今、叶えられようとしている。
そんなリリアの表情はまさに勝利者の顔であった。
その表情に苛つきを覚えたマレウスであるがすぐに表情を平静へと戻す。
そのマレウスの素振りにリリアはおや?と思った。
てっきりもっと悔しがると思っていただけに拍子抜けしたリリアであるがその後のマレウスの言葉は聞き捨てならなかった。
「この世には略奪愛なる物が存在するらしい」
「よしマレウス。ちょっと表に出よ」
何やら周りが騒がしい、と思ったシルバーであるが意識はすぐに楽しそうに話すユウへと戻った。
ユウは今日もセベクがかっこよかったと表情をきらきらさせて話している。
ユウはセベクに惚れていた。
それこそ始めは何かにつけて大きな声で人の事を人間と呼び口を出すセベクにうんざりしていたユウであるがある日、階段で人にぶつかられて落ちかけたユウを助けてくれた上にユウに代わって相手に注意をしたセベク。
実は彼なりに魔力を持たないただの人間であるユウの身を事あるごとに案じてくれていたのだとその短時間に理解したユウはセベクに惚れた。
始めはその抱いた恋心が何か分からず戸惑っていたユウはどうしたものか仲の良いグリムとエース、デュースに相談していたのだがグリムとエースは早々に話に飽きて逃げ出し、デュースは親身になって聞いてくれたが所々アドバイスが物騒であった。
ユウが恋心を自覚し、受け入れると話題はセベクの何処が格好良かっただとか今日のセベクは、という話が増えて彼等はあからさまに辟易して見せた。
そんな彼等の姿を見て暫くセベクの話題は控えていたユウであるがそれも限界があった。
胸の内にセベクへの思いを溜めに溜め込んだ結果、誰でもいいから格好いいセベクの話を聞いてもらいたいという欲望がユウに芽生える。
そしてその欲望を発散すべく白羽の矢が立ったのはセベクと同寮であり同郷のシルバーであった。
シルバー自身、ユウに声を掛けられた当初は理由が分からず困惑していたが、わざわざ学年の違うシルバーを選んだ理由がセベクと実の兄弟の様に仲が良く見えたから、とシルバーは聞かされて喜んだ。
それからユウとシルバーは時折、時間を作っては集まり、学園の隅で身を寄せ合いセベクの話をしている。
もっぱらユウは授業の合間に見かけたセベクの格好良いという話で、シルバーはセベクの幼い時の話が主な話題である。
「シルバー先輩、いつもすみません。私の話に付き合ってもらって」
「俺は構わないのだが」
そこで一度黙ったシルバーは自身とユウの仲が噂になっている事を話した。
「このままではセベクにもあらぬ誤解を持たれて告白に支障を来たすんじゃないのか俺は心配だ」
「告白、告白。うーん」
「何だ。セベクに告白をしないのか?」
唸り声を上げながら自身の膝に顔を埋め、俯いてしまったユウにシルバーは頭を傾げ尋ねた。
「セベクの事は好きなのですが」
再び唸り声上げてああでもないこうでもないと一人呟くユウ。
よくよく詳しく聞けばセベクと両思いになれる確率は低いから告白をする気は無いのだと言うユウにそうだろうかとシルバーは思った。
思い出されるのは昨晩のセベクとの会話である。
珍しく思いつめた様子でセベクからシルバーへ話しかけて来たかと思えば件の噂の事であった。
「シルバーはあの人間と、その、恋人なのだろうか」
「人間?ああ、ユウとは」
シルバーはユウとはそういう仲ではないと否定するつもりであったがどうしてセベクがそんな事を聞いてくるのかふと気になる。
「どうしてそんな事を尋ねる」
そう尋ねたところセベクは顔を真っ赤にして質問を撤回し、慌てて部屋を出て行った。
そんなセベクの様子からシルバーは推測するに決してユウの恋が成就する見込みは低くはないと思うのだが残念ながらシルバーにはそれを上手く伝える能力はなかった。
「俺は叶わぬ恋ではないと思う」
「シルバー先輩は優しいからすぐそういう事を言う」
膝から顔を上げたユウは困った様に笑った。
社交辞令ではないとユウに伝えたいシルバーであるが上手く言葉が纏まらず詰まってしまう。
「叶わなくても良いんです。私自身いつ元の世界に帰れるかも分かりませんから」
それまでは好きな人の姿を見ていたいと零したユウの頭をシルバーは優しく撫でた。
ユウ
セベクに片思い中であるが既に見込み無しと諦めてる模様。シルバーは良き相談相手でありセベトーク仲間
ツノ太郎
ユウガチ恋勢。卒業したらユウを嫁に迎え入れるんだ。
リリア
将来の楽しい老後の為ならばマレウスも平気で蹴り落とす覚悟でいる。この後墓穴を掘る。
シルバー
セベクの事は弟の様に思っているしユウも妹の様に思っている。まさか主人と義理の父が自分達の関係にまつわる噂を信じて揉めているなんて気付いてない。
セベク
ユウが近頃、シルバーと仲が良さげでもやもやしている。まさか自分がユウに惚れられているなんて気づいていない。今回出番がない人。