twst短編
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オンボロ寮監督生、ユウはリリア・ヴァンルージュとお付き合いしている。
きっかけはツノ太郎事マレウスで、彼と親交を深める内にリリアとの親交も増えて気付いたら惚れていた。
そして己の恋心に気付いたユウは暫く悩み、当たって砕けろ精神で告白した所まさかのリリアの返事は了承だった。
その時のユウの気持ちといえば両思いだった事への喜びというよりは完全に振られる覚悟でいた為状況が暫く理解出来ず、最早これは夢なのかとさえ疑った。
恋人となったリリアに己の頬を摘んでもらい痛みの有無で夢か現か判断しようとしたユウであるがリリアはそのまま引き寄せられてキスをした。
軽い挨拶の様なキスではなく恋愛偏差値の低いユウにはハードルが高く容赦のないキスにユウはすぐに酸欠になって目を回す。
「どうじゃ?夢ではなかろう」
何て腰を砕けたユウを抱き抱え見下ろすリリアにちょっと告白を早まったかもしれないと思ったのはユウだけの内緒の話である。
そんな告白と共にファーストキスを失ったユウであるがその後は特に進展もなく健全にお付き合いしていた。
二人がいる場所が男子校という事であまり人目を憚らずイチャつくのは風紀の乱れは勿論、周りへの当て付けになり無用な敵が増えるからやめておきなさいというのはユウの恋を応援してくれたエースのありがたいお言葉である。
この助言から二人が付き合っているのはごく一部を除き秘密となっており、偶に内緒で手を繋いだり図書館デートという名のリリアによる歴史講座を受けて過ごしていたユウであるがある日雷が落とされた。
「お袋殿」
麗かな日のお昼時であった。
エースとデュース、グリムと共に食堂へやって来たユウはお昼に食べるランチでお肉と魚のどちらを食べようか悩んでいた。
切れば肉汁が溢れるハンバーグも美味しそうであるがサーモンのムニエルも魅力的で暫く云々と悩んだ挙句にサーモンのムニエルに決めたユウ。
さあ、注文という所で覚えのある声に声掛けられる。
時が止まったかと思った。
ユウもエースにデュース、グリムも、食堂のゴーストも周りの生徒達も無言だった。
「お袋殿」
もう一度呼ばれてゆっくり、ゆっくりと振り向くとそこにはシルバーが立っていた。
ユウにとってシルバーは先輩であり恋人の息子でもある。
ユウは二度三度、目を瞬かせて己を指差し尋ねる。
「シルバー先輩、そのお袋殿って私の事ですか?」
「そうだが?」
シルバーは至極当然という顔で、寧ろ何故そんな当たり前な事を聞くのか不思議がる顔であった。
周りの生徒もゴースト達もユウを凝視している。
「先輩、面白いっすね」
「わ、笑っては先輩に失礼だろエース」
突如腹を抱えて笑い出すエースとそれを嗜めるデュース。
その二人に何事かと思ったユウであったが二人の目は話を合わせろと言っている。
「年上の女の人を間違えて母親呼びする事は確かにまあ、ありますけどユウにその間違いは無茶がありますよ!」
「止めないかエース、誰にだって間違いはあるんだ」
二人がシルバーの発言をうっかり言い間違えたという事で済まそうとしている事に気づき、ユウは二人の機転に感激した。
三人の視線は交じり合い、
「俺達マブダチだろ?」
「困った時はお互い様だ!」
「エース!デュース!」
みたいな会話を視線のみで行なっている。
このまま周りを誤魔化そうとするが再び雷は落とされる。
「なにも間違いではない。ユウは親父殿の嫁、つまり俺にとってはお袋殿だ」
ピシャリと突き落とされたそれに食堂はまたしても静寂に包まれる。
「はー?!クラゲちゃんそれどういう事だよ」
周りを囲む野次馬をその長い足を使って掻き分けてフロイドがやって来た。
「今、ユウくんを嫁とか言いました?!」
そして別方向からはレオナの昼食であろうパンを抱えたラギーが野次馬の間を縫ってやって来る。
二人の声に静寂は破られて食堂は騒がしくなった。
誰もがユウを見る。
シルバーの言う親父殿って誰?という生徒に三年生のリリア・ヴァンルージュの事だろうと情報通の生徒が話す。
その親父殿の嫁がユウという事は、と誰もがそこで一旦思考を止め、そして叫んだ。
「わー」とか「ぎゃー」とか絶望交じりの悲鳴に食堂は阿鼻叫喚である。
ユウはナイトレイブンカレッジで唯一の女子生徒であった。
学園内にはユウより美少女染みた生徒は複数いたが結局彼等は美少女の皮を被った野郎共で、純粋な女の子と言えばユウだけである。
そんなユウを学園の生徒達は大切にしていた。
喩えるなら枯れて荒れた大地に咲く一輪の花、そんな花が踏みにじられたり枯れたりしないよう彼等は互いに牽制し、見守り、と要は誰も抜け駆けをしない様にと暗黙の不可侵条約を結んでいた。
そんな学園の花がいつの間にか手折られ誰か一人の物になっていたというのだから彼等の絶望は最もだった。
「お袋殿、失礼する」
「え、シルバー先輩?え、ええっ??!」
周りから漂う唯ならぬ気配に眉を顰めたシルバーは突然ユウの前に立つとユウを肩に担いだ。
ユウの頭に乗っていたグリムはその突然の事にころりと頭から落ちて、それをデュースが慌ててキャッチする。
「此処は良からぬ空気を感じるから外に出よう」
それはお前の所為だろう!!!と誰かが叫んでいたがその頃にはフロイドの足止めもラギーのユニーク魔法も躱したシルバーが食堂を出る所だった。
ユウはシルバーの肩に担がれながら突然の展開に頭を抱えた。
どうしてこうなった。
思うはそればかりである。
食堂の騒ぎ声は食堂を離れてもユウの耳に聴こえている。
ユウが最後に見たのはリドル達ハーツラビュルの三人とアズールとジェイドに挟まれて説明を求められているエースとデュースの姿であった。
エースとデュース、グリム以外にもリリアと付き合っている事を話すべきだったとユウは猛省した。
リリアとのお付き合いを黙っていた上に食堂での騒ぎ、きっと彼等は怒っているに違いないとユウは考える。
しかし、そもそもそんな事で他の生徒達も騒ぐ事なのだろうか、ともユウは思った。
そして思い当たるはリア充爆発しろという言葉。
他に、きっと生徒の中には遠距離恋愛をする生徒もいるだろうからそういう生徒達からすれば特例で入学した女子生徒と男子生徒が学園内で付き合っているのは腹立たしい事この上ないだろうとユウは彼等の騒ぎ様をそう解釈した。
ユウは男子生徒の気持ちが分からない。
「ユウすまない」
「シルバー先輩?」
「何だかよく分からないがこの様な騒ぎになってしまった」
シルバーは廊下の真ん中で立ち止まるとユウを床へと下ろした。
ユウがシルバーの顔を覗き込めば普段は何処か茫洋としているシルバーの表情が落ち込んで見える。
「先輩は悪くないですよ。きっと私が誰にも説明してなかった末の結果ですから」
全寮制の学園など個人の秘密はあるようでない様なものである。
いくら秘密にしていてもいつかは露見していた。
それが少し早まってしまっただけである。
「ところで先程から呼ばれるお袋殿と言うのは」
「先程の説明に通りだ。親父殿は常日頃からユウの事を嫁や妻と呼んでいる。つまり、義理とはいえ親父殿の息子の俺からするとユウはお袋殿になるのだが」
こんな大きな息子は嫌かと尋ねられてユウは胸を押さえた。
見て明らかにしょんぼり顔のシルバーにユウの中の母性本能は最大限に擽られる。
「こんなに大きくて立派な息子が嫌な母親何ていませんよ」
此処で注釈入れると別にユウとリリアは学生らしいお付き合いをしているだけでリリアの婚約者になった訳でも籍を入れた訳でもない。
それどころかユウは未だ元の世界に帰る事も諦めていないので学園長頼みであるが元の世界へ帰る方法は現在進行形で捜索中である。
けれどシルバーの可愛いさにやられたユウは思わず母親が子にする様に自分より大きなシルバーを己の胸に引き寄せ抱き締めてしまう。
「先輩、良い子良い子」
「今だけは名前で」
「シルバー君良い子」
側から見れば何だこれ、と誰もが二度見をする光景であったが幸運な事に生徒も教師も食堂の騒ぎを聞きつけそちらに集まっており、廊下にはユウとシルバー以外は誰もいなかった。
「息子と恋人の仲が良いのは微笑ましい事じゃが些か妬いてしまうの」
突然降って来る様に聴こえた声にシルバーを抱きしめて目を閉じていたユウは目を開く。
と同時に紅玉と見紛う瞳と目が合い、それは色気の無い悲鳴を上げたユウはシルバーを抱きしめるのを止めて後方へと飛び跳ねた。
それは呼ばれて飛び出て神出鬼没のリリアであった。
どういう理屈か高い天井から逆さ吊りの様にになっていたリリアはくるりと見事一回転をして床に着地をするとユウを連れて来たシルバーを褒める。
「ご苦労だったぞシルバー」
そしてシルバーに先に行く様に指示するとシルバーは頷き、ユウにも会釈をして廊下を駆けて行った。
「しかし食堂は今も大騒ぎの様じゃな」
くふふと愉快そうに笑うリリアにユウは先程の事を思い出して脱力する。
別の場所にいたであろうリリアにすら聴こえたのだからきっと放課後には学園長に呼び出され小言を言われるのだろうと、己の未来が安易に想像ついたユウは少しばかりげんなりした。
「すまなかった。わしが日頃から彼奴の前でお主の事を話しておったから彼奴も柄にもなく母親が出来たと浮かれてしまったようじゃ」
リリアの言葉に思わず浮かれたシルバーを想像したユウはまたもや疼く母性本能に胸を押さえた。
「その結果がこの騒ぎじゃからな。学園長に呼び出しされた時はわしも共に行くから安心せい」
そっとさりげなく手を握り取り、微笑みかけるリリアに顔を真っ赤にさせたユウは何度も頷いた。
「そういえばどうして私を呼んだんですか?」
「そりゃあ、たまにはお主と昼食をと思ってな」
そんな会話をしながらリリアに連れられた先は学園の一角にある庭であった。
そこには昼食が用意されたテーブルとセベクとシルバー、それにマレウスが着席している。
セベクはユウの顔を見るなり眉を吊り上げて厳しい表情をした。
「人間、何だこの騒ぎは」
セベクがユウに見せたのは彼のスマートフォンで、メッセージアプリと思わしき画面にはひっきり無しにメッセージが届いている。
その内容は主に食堂での騒ぎを問い詰めるもので、知らぬ名が殆どの中、その中にジャックやエペルの名もあった。
「セベク、お袋殿を人間と呼ぶのは止めろ」
「僕に指図をするなシルバー!そもそもこの騒ぎの発端は貴様と言うではないか!」
主にセベクが一方的に、であるが言い争う二人を尻目に慣れているのかリリアは構わず椅子を引くとそこへユウを座らせた。
ユウの隣、それまで本を読んでいたマレウスは本を閉じるとそれを机に置いてユウへと顔を向ける。
ユウはマレウスと今日初めて会った為、まずは挨拶をと口を開いたが発言権を得たのはそれより先に口を開いたマレウスであった。
「それで僕はお前を何と呼んだら良いんだ」
「え?」
「僕もリリアに育てられた様なものだからな。母上、母君、それとも母様が良いか?」
と悪戯な笑みを浮かべたマレウスに言われてユウは宇宙猫と化した。
ユウ
リリアと恋人。だが、学生なので結婚とかそこまでは考えていないしお家にも帰りたい。
リリア
実は一目惚れ。捕まえたからには絶対逃がさないし離さない。この騒ぎも計画の内であり、じわじわとユウの退路を塞いでいく。
シルバー
父親であるリリアの見た目が見た目なのでユウが母親でも違和感を感じない。仲睦まじい二人に実は浮かれてた。
セベク
このメンバーの中では一番話掛けやすいのでこの後方々から説明を求められてその都度答える羽目になる。
マレウス
リリアの思惑を察してる愉快犯。ユウが茨の谷へ嫁いでくる日が楽しみで仕方無い。
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