リュウグウノツカイの人魚
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毎年開催の寮対抗マジフト大会の開催が近付き、生徒達は何処か浮足立っていた。
代表選手も選手でない者も皆一様にそわそわしている。
そんな中でため息をつく者達がいた。
イグニハイドの寮生達である。
彼等はマジフト大会を陽キャ達の祭典と呼び敬遠していた。
寮生の中には楽しみにしている者達もいたがあくまで観客としてであり、自分達が出場となれば話は別である。
オンラインを使って寮内会議を行っていた彼等の議題は如何にして体力も消費せずに試合を終わらせるかであった。
なんなら不戦敗でも良くない?と寮長にあるまじき発言をしたイデアであるが寮生達は軒並み賛成であった。
「流石、寮長」
「陰キャの鏡!」
「どうせ真面目に出ても陽キャ共に真面目にやれよって怒られるしな」
「さっさと負けてさっさと寮に引きこもりましょう!」
会議は決議へと向かおうとした所でイデアが素っ頓狂な声を上げた。
「ラセル氏何?え?え?!」
長老という渾名に違わず今時の最新機器やパソコンといったものを扱うのが苦手なラセルはいつもイデアの部屋でこのオンライン会議に参加している。
と言っても大体彼はいつも年寄りぶって他の寮生達の議論をにこにこ見守るだけであるのだが今日は珍しくイデアに何か言っているらしい。
余程の事なのかスピーカー越しに聞こえるイデアの声は何処か焦って困惑していた。
「あ、あー・・・」
「寮長?」
「寮長の霊圧が消えた」
無言になったイデアに寮生達は騒つく。
しかしそれから暫くイデアの声が聞こえる事はなかった。
「悲報」
皆が戸惑い、誰かがイデアの様子を見て来ようか話していたところに沈んだイデアの声が届く。
「ラセル氏がマネージャー業を頑張る気でいるので不戦敗案は棄却でつ」
「え、」
「は?」
「「「えーーーーーーっ!!!!?」」」
寮生達は自分達がインカムマイクを付けている事も忘れて叫んだ。
事の起こりは少し前迄遡る。
ラセルは同じ寮の二年生から漫画を借りた。
内容は弱小のマジフト部が転校生の入部をきっかけに部員一同、マネージャー達のサポートにより大会に勝ち上がっていくという典型的な物であった。
ラセルはその漫画を読んで初めてマネージャーという存在を知る。
何時も入院していたり身体の脆さだったりでマジフト大会は応援しか出来ず歯噛みしていたラセルであるがスポーツに対しこういう関わり方もあるのかと目から鱗であった。
ラセルはマジフト大会に向けて寮内会議をするイデアにマネージャーをしたい事を告げた。
すると途端、振り向くと驚き唸り声を上げて頭を押さえるイデア。
やはり男である自分ではマネージャー業は駄目なのか。
ラセルが読んだ漫画もマネージャーをしていたのは可愛らしい女の子達であった。
それでも、無理だと分かってもラセルは諦めきれない。
「僕もマジフトの大会を頑張るみんなの役にたちたいんだ」
やっぱり僕がマネージャーなんて無理なのかな?と首を傾げたラセルにイデアは胸を押さえて苦しげな声を上げる。
イデアもラセルがいつも寮の為にマジフト大会に出ようか悩んでいるのを知っていた。
しかし出場して頭にディスクでも受ければ頭蓋骨の骨折は免れないので諦めるようイデアも寮生達も必死に説得をしたし、バルガス達教師もラセルの出場を絶対に認めなかった。
「蜂蜜レモンも頑張って作るから!」
「マジですか」
スポーツ漫画定番の差し入れであるが実際本当にこんな事ありえるのかな、と差し入れの内容も含めて思った事がある。
暫くインカムを外して悩む様子を見せていたイデアは再度インカムを装着するとパソコンに向き直り何やら寮生達と音声会話を再開させた。
「そういう訳でマジフト大会は皆で真面目に頑張りましょう」
「圧倒的棒読み」
「蜂蜜レモンに釣られる寮長」
「しかし男とはいえ先輩の蜂蜜レモン」
「これは仕方なし」
「寧ろこれって他所の寮じゃあり得ないレアケースなのでは?」
「じゃあ我らもベストを尽くすしかあるまい」
満場一致の賛成であった。
「あ、後ラセル氏にあのスポ根漫画を貸した二年生君は後で学園裏ね」
「え?!なんで」
実はラセルが借りた漫画、少年誌連載のためお色気シーンが多々有る漫画でもあった。
その為世間の表現に対する倫理規定には引っかからないがイデアの対ラセルの為の倫理規定にはばっちり引っかかっていた。
これにはラセルがマネージャー業を買って出た事に喜んでいた他の寮生達も軒並み有罪判決を下す。
「という訳で野郎共、ラセル氏を喜ばす為にもせめて一勝は目指しますぞ」
「此処で優勝とか言わない寮長まじ寮長」
「流石陰キャ先輩」
こうしてイグニハイドは一丸となった。
マジフト大会で一勝という低い目標達成の為、戦略系ゲーム好きな寮生達は作戦を、オルトは空撮により各寮の偵察を、ラセルは沢山の蜂蜜レモンを作り、疲労回復に加えて彼等の腸内環境迄も整えた。
代表選手になった者達は他寮の生徒達に驚かれながらもグラウンドで連日練習に励む。
彼等も驚いた。
嫌々引き受けた者が多い代表選手達は意外にも運動神経が良かったのである。
しかし、よくよく考えれば当然の帰結であった。
ある者は推しのアイドルの為ならばライブで朝から晩までペンライトと振り回せたし、またある者はゲームのアサシンに憧れてパルクールに各種格闘技を独学で極めていた。
他にもアニメのダンスを幾通りも踊れる者、漫画の影響で学園入学前は運動部に所属していた者、今まで気付きもしなかったが誰も彼も無駄にポテンシャルが高かった。
そして大会当日、個々の能力が強いあまりチームとして纏まらず仲間内ですらぶつかりあってしまう事に定評のあるナイトレイブンカレッジのマジフト大会で誰もが目を見張り、学園長は感動して泣き出す程の連携を見せたイグニハイド寮はまさかの三位入賞というなかなかな成績を残すのであった。
代表選手も選手でない者も皆一様にそわそわしている。
そんな中でため息をつく者達がいた。
イグニハイドの寮生達である。
彼等はマジフト大会を陽キャ達の祭典と呼び敬遠していた。
寮生の中には楽しみにしている者達もいたがあくまで観客としてであり、自分達が出場となれば話は別である。
オンラインを使って寮内会議を行っていた彼等の議題は如何にして体力も消費せずに試合を終わらせるかであった。
なんなら不戦敗でも良くない?と寮長にあるまじき発言をしたイデアであるが寮生達は軒並み賛成であった。
「流石、寮長」
「陰キャの鏡!」
「どうせ真面目に出ても陽キャ共に真面目にやれよって怒られるしな」
「さっさと負けてさっさと寮に引きこもりましょう!」
会議は決議へと向かおうとした所でイデアが素っ頓狂な声を上げた。
「ラセル氏何?え?え?!」
長老という渾名に違わず今時の最新機器やパソコンといったものを扱うのが苦手なラセルはいつもイデアの部屋でこのオンライン会議に参加している。
と言っても大体彼はいつも年寄りぶって他の寮生達の議論をにこにこ見守るだけであるのだが今日は珍しくイデアに何か言っているらしい。
余程の事なのかスピーカー越しに聞こえるイデアの声は何処か焦って困惑していた。
「あ、あー・・・」
「寮長?」
「寮長の霊圧が消えた」
無言になったイデアに寮生達は騒つく。
しかしそれから暫くイデアの声が聞こえる事はなかった。
「悲報」
皆が戸惑い、誰かがイデアの様子を見て来ようか話していたところに沈んだイデアの声が届く。
「ラセル氏がマネージャー業を頑張る気でいるので不戦敗案は棄却でつ」
「え、」
「は?」
「「「えーーーーーーっ!!!!?」」」
寮生達は自分達がインカムマイクを付けている事も忘れて叫んだ。
事の起こりは少し前迄遡る。
ラセルは同じ寮の二年生から漫画を借りた。
内容は弱小のマジフト部が転校生の入部をきっかけに部員一同、マネージャー達のサポートにより大会に勝ち上がっていくという典型的な物であった。
ラセルはその漫画を読んで初めてマネージャーという存在を知る。
何時も入院していたり身体の脆さだったりでマジフト大会は応援しか出来ず歯噛みしていたラセルであるがスポーツに対しこういう関わり方もあるのかと目から鱗であった。
ラセルはマジフト大会に向けて寮内会議をするイデアにマネージャーをしたい事を告げた。
すると途端、振り向くと驚き唸り声を上げて頭を押さえるイデア。
やはり男である自分ではマネージャー業は駄目なのか。
ラセルが読んだ漫画もマネージャーをしていたのは可愛らしい女の子達であった。
それでも、無理だと分かってもラセルは諦めきれない。
「僕もマジフトの大会を頑張るみんなの役にたちたいんだ」
やっぱり僕がマネージャーなんて無理なのかな?と首を傾げたラセルにイデアは胸を押さえて苦しげな声を上げる。
イデアもラセルがいつも寮の為にマジフト大会に出ようか悩んでいるのを知っていた。
しかし出場して頭にディスクでも受ければ頭蓋骨の骨折は免れないので諦めるようイデアも寮生達も必死に説得をしたし、バルガス達教師もラセルの出場を絶対に認めなかった。
「蜂蜜レモンも頑張って作るから!」
「マジですか」
スポーツ漫画定番の差し入れであるが実際本当にこんな事ありえるのかな、と差し入れの内容も含めて思った事がある。
暫くインカムを外して悩む様子を見せていたイデアは再度インカムを装着するとパソコンに向き直り何やら寮生達と音声会話を再開させた。
「そういう訳でマジフト大会は皆で真面目に頑張りましょう」
「圧倒的棒読み」
「蜂蜜レモンに釣られる寮長」
「しかし男とはいえ先輩の蜂蜜レモン」
「これは仕方なし」
「寧ろこれって他所の寮じゃあり得ないレアケースなのでは?」
「じゃあ我らもベストを尽くすしかあるまい」
満場一致の賛成であった。
「あ、後ラセル氏にあのスポ根漫画を貸した二年生君は後で学園裏ね」
「え?!なんで」
実はラセルが借りた漫画、少年誌連載のためお色気シーンが多々有る漫画でもあった。
その為世間の表現に対する倫理規定には引っかからないがイデアの対ラセルの為の倫理規定にはばっちり引っかかっていた。
これにはラセルがマネージャー業を買って出た事に喜んでいた他の寮生達も軒並み有罪判決を下す。
「という訳で野郎共、ラセル氏を喜ばす為にもせめて一勝は目指しますぞ」
「此処で優勝とか言わない寮長まじ寮長」
「流石陰キャ先輩」
こうしてイグニハイドは一丸となった。
マジフト大会で一勝という低い目標達成の為、戦略系ゲーム好きな寮生達は作戦を、オルトは空撮により各寮の偵察を、ラセルは沢山の蜂蜜レモンを作り、疲労回復に加えて彼等の腸内環境迄も整えた。
代表選手になった者達は他寮の生徒達に驚かれながらもグラウンドで連日練習に励む。
彼等も驚いた。
嫌々引き受けた者が多い代表選手達は意外にも運動神経が良かったのである。
しかし、よくよく考えれば当然の帰結であった。
ある者は推しのアイドルの為ならばライブで朝から晩までペンライトと振り回せたし、またある者はゲームのアサシンに憧れてパルクールに各種格闘技を独学で極めていた。
他にもアニメのダンスを幾通りも踊れる者、漫画の影響で学園入学前は運動部に所属していた者、今まで気付きもしなかったが誰も彼も無駄にポテンシャルが高かった。
そして大会当日、個々の能力が強いあまりチームとして纏まらず仲間内ですらぶつかりあってしまう事に定評のあるナイトレイブンカレッジのマジフト大会で誰もが目を見張り、学園長は感動して泣き出す程の連携を見せたイグニハイド寮はまさかの三位入賞というなかなかな成績を残すのであった。