リュウグウノツカイの人魚
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ラセルの宣言通りユウの生活は改善された。
早朝からオンボロ寮を訪ねてきたクロウリーユウの顔を見るなり何度もこれまでの待遇をユウに謝った。
懸念であった己の性別が学園長に知られて学園を追い出される、という事も無く寧ろ自分はこのまま学園にいても良いのかとユウが尋ねれば
「魔力を持たない異世界の少女を放逐出来ません!!!!」
と泣かれた。
良い年の大人がおいおいと少女に泣き縋る姿に側で見ていたグリムは引いていた。
クロウリーはお詫びと言わんばかりに残りの部屋と寮の外観を魔法で綺麗に直し、女子は何かと物入りだからと既に渡されて制服の他に数着の衣服と日用品、加えて見るからに決して安くはないであろう基礎化粧品まで渡されてユウは慌てふためく。
「こんな物迄頂いても良いんですか?」
「勿論です。私優しいので、と言いたい所ですが朝から訪ねて来たレガレスク君にこれぐらいは最低でも必要だと言われましてね」
「レガレスク?」
聞き慣れない名前にユウが頭を傾げるとクロウリーは不思議がった。
「ラセル・レガレスク君ですよ身長が高くて黒くて丸いレンズのサングラスをかけた生徒です」
そこまで説明されてユウはクロウリーが言う人物が昨日の男子生徒と同一人物である事を理解した。
と同時に怪我を治して貰い、愚痴混じりの話を聞いてもらったにも関わらず名前を一切聞かなかった事に気付いて恥じる。
そんなユウにクロウリーは「大丈夫ですよ」と慰めの言葉をかけた。
「彼はそういうちょっと抜けた所がある生徒なんです」
クロウリー曰く本人も自分が名乗っていない事に気づいてないだろうという事だった。
へっくし、というくしゃみに宙を浮くタブレットから心配の言葉をかけられる。
「大丈夫だよ。イデア」
「そう言って昨日一日授業に出なかったのは誰ですかね」
「僕だね」
語尾が伸びたのんびりとしたラセルの返答にイデアはタブレットの向こうで溜息を吐いた。
ホリデーが明けて弟と共に彼の自室に訪ねてみれば不在。
また体調を崩して入院したのかと慌ててメッセージを打てば返って来たのは先程と同じ「大丈夫だよ」という返事であった。
大丈夫と言いながら入学式は休むと言ったラセルはその翌日の授業にも姿を見せなかった。
本人はうっかり寝過ごして授業をサボってしまったと笑い、新学期そうそう出席日数の心配をしていたが話を聞く限りラセルは約二日眠り続けていた事になる。
人魚の常識は分からないが人間で有ればそこそこ問題、なのだけれどこのタブレットの向こうで相変わらずにこにこと笑っているのであろう友人は己の体調に関して危機感が全くと言って良い程無い。
イデアはマイクが拾わない様な小さな声で「オルトにヘルスケアの機能を追加しよ」と呟いた。