トレインさん家のお孫さん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おちびちゃんだ」
やっほーと、軽い調子で自分に向かって振られた手にユウも手を振り返した。
ユウがナイトレイブンカレッジの入学式に紛れ込んでいた騒動から半年。
半年という決して短くはない月日の間にユウも生徒達も互いに挨拶し合う程に慣れ親しんでいた。
学園内を歩くユウの姿は最早当たり前の光景で、一部の生徒達から「おちび」という渾名で呼ばれ親しまれている。
授業終わりの時間という事もあり、廊下は授業を終えた生徒達でごった返していた。
またしても別の生徒におちびちゃんと呼ばれたユウは手招きされるがままに近寄ると白衣を様々な液体で汚した一人の生徒がユウに手を出す様に告げた。
やはり言われるがままに差し出せば何かが紅葉の様な小さな手の上に置かれる。
「うわぁ」
ユウは喜色の声を上げ、目を輝かせた。
手に乗せられたのは虹色に輝く石であった。
「授業の失敗作だけど綺麗でしょ?おちびちゃんにあげるね」
「ありがとうございます!」
お礼を言ったユウはすぐさま窓から差し込む日光にその虹色の石を翳した。
石はきらきらとプリズムを放ち、その輝きにユウは一人きゃあきゃあと声を上げる。
「え、おちびちゃんそんなクズ石好きなの?」
別の生徒はユウの見て分かる喜び様に驚きの声を上げた。
錬金術について何も知らないユウには石の出来も良し悪しも分からないがきらきらと宝石の様に輝く石は好きであった。
首肯すれば同じ様な石を作った者は複数いたらしく、俺も、僕も、と四方八方から石を渡される。
あっという間に両手が塞がったユウであるが、両手いっぱいに色とりどりの石を乗せたユウはにこにことご機嫌であった。
そんなユウを可愛いと思い、思わずまた別の生徒が飴を差し出すとやはりまた喜ぶものだから今度は廊下を移動していた生徒達からも続々と飴が渡される。
しかし既に光り輝く石で手がいっぱいのユウが受け取り切れず困り果てていると錬金術の教室扉が開かれた。
誰かが「げっ」という声を漏らす。
決して近くはない距離であった筈なのに的確に失礼な声を漏らした生徒を睨み付けたクルーウェルに生徒達は巻き込まれまいと、慌てて解散した。
「デイヴィスお兄ちゃん」
ユウにそう呼ばれた男、デイヴィス・クルーウェルは両手いっぱいに錬金術の失敗作を持った彼女に片眉を吊り上げる。
錬金術の担当教師であるクルーウェルからするとユウが処分に面倒な失敗作を押し付けられている様に見えた。
けれどユウは嬉しそうに綺麗な石を生徒達から貰ったと報告するのでクルーウェルは頭を押さえる。
「仔犬。お前にはまだ難しいとは思うがお前がもらったそれは宝石でも結晶でもないただの不出来な失敗作だ」
「?でも綺麗だよ」
「だがゴミだ」
きっぱりとクルーウェルは告げたがユウはいまいち分かっていない様子だった。
それでもクルーウェルは構わずユウの両手いっぱいに乗った石を彼女の代わりに処分しようとするのだがユウはそれを拒否した。
「お兄ちゃん達が一生懸命作った物だから良いの」
嬉しそうに肩から下げたポシェットに石をしまおうとしたユウであるが腕を掴まれた為、その動きは止まった。
「お兄ちゃん?」
ユウの動きを止めたのは先程、石をくれた内の一人であった。
彼の後ろには同じく石をくれた生徒が複数名立っている。
ユウの腕を掴んだ生徒は申し訳なさそうな顔をしてやはり渡した石を返して欲しいと言った。
それに見るからにしょんぼりしたユウに生徒達は一様に慌てる。
「せっかくあげたのにごめんな。でも、やっぱりそれはクルーウェル先生言う通りゴミみたいな物だからさ」
「今度の授業は成功させて本物の金や宝石を作って渡すからからごめん」
皆は石を取っては代わりに飴やチョコをユウの手の上に置いた。
綺麗な石が一つ残らず無くなって落ち込むユウの頭をクルーウェルは「god girl!」と高らかに声を上げて撫でた。
「仔犬のおかげで次回の授業の成果は期待出来そうだ。よくやったぞ」
何だかよく分からないユウであったが褒められている事だけは分かったので首を傾げながらも少し照れを滲ませて笑った。