岩柱さん家の奥様と
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不死川玄弥は草臥れた姿で身を寄せる悲鳴嶼の屋敷へと戻って来た。
玄弥は悲鳴嶼の継子なので基本は彼と同行する事が多いのだが、偶に単独の任務もあった。
今回がそれで、悲鳴嶼に鍛えて貰っている成果なのか以前よりも鬼の討伐が易くなった気がする。
疲労を感じてはいるが手ごたえも感じている為屋敷へと続く道を歩く足は軽く感じた。
「玄弥さん」
真っ白の割烹着が日の光を反射して眩しい。
反射光を避ける為、目を細めれば此方に向かって手を振る人物の顔がよく見えた。
「お帰りなさい」と門の所で桶と柄杓を手に玄弥を迎えたのは悲鳴嶼の妻である灯里であった。
悲鳴嶼に妻がいる事、妻帯者である事は鬼殺隊でもあまり知られていない。
勿論、玄弥も悲鳴嶼が既婚者だとは知らず、彼の継子になって灯里を紹介される迄屋敷にいる彼女を家政婦か何かだと思っていた。
それが悲鳴嶼の口から「私の妻だ」と紹介された玄弥はとても驚いたし悲鳴嶼の何とも言えない表情には困惑した。
眉を下げて困っている様な悲しんでいる様なはっきりと分からない表情に灯里はこっそりと「照れているんですよ」と小さく玄弥に耳打ちした。
「あまり人に自分の事を話す人ではないですから」
これで照れているのか。
分かりにくいと玄弥は率直に思った。
少し不安だった悲鳴嶼の継子生活はそんな感じで始まった。
継子というのは師弟の様な関係だと思っていた玄弥は鍛錬に加えて及ばずながら悲鳴嶼の生活の面倒を見るつもりでいたのだが、既に悲鳴嶼には灯里という妻がいた為、炊事洗濯、掃除のどれを取っても玄弥の出番は無かった。
何なら玄弥に与えられた部屋は定期的に掃除されているし食事も三食、偶におやつ付きで悲鳴嶼と遠くへ赴く際にはお弁当も用意された。
俺は継子なのにこんな至れり尽せりで良いのだろうか戸惑う玄弥に悲鳴嶼はその分空いた時間で鍛錬を積みなさい言った。
加えて玄弥の世話をする事は灯里も喜んでいるので付き合ってくれとも。
付き合うも何も有難い限りである。
門で玄弥を出迎えた灯里は食事の準備は出来ていますよと、桶と柄杓を片付けて居間へと共に歩く。
朝とも昼とも言えぬ時間であるが屋敷に入れば魚でも焼いていたのか香ばしい匂いがしていた。
「悲鳴嶼さんは?」
「先程、連絡がありましてお昼迄には帰ってくるそうです」
既に鬼を狩り終え、帰宅の途についた悲鳴嶼が先に鴉を送ったらしい。
だったら少し待とうかなと玄弥は言った。
だったら私も少し早いお昼にしようかしらと灯里が楽しげに零すので玄弥は頷きそうしましょうと促した。
そうでなくても昼夜逆転した鬼殺の仕事、加えて悲鳴嶼は柱である為かなり多忙である。
その為三人揃って食事という機会は大変稀であった。
余程三人揃っての食事が嬉しいのか後もう一品位増やそうかしらと楽しげに灯里は話した。
だったら俺は悲鳴嶼が来る迄に何か家事を手伝うと玄弥が言えば気持ちだけもらっておきますと笑った。
「玄弥さんは任務明け何ですからゆっくりお昼寝でもしていて下さい」
寝る子は育つと言いますしね、なんて言う灯里に玄弥は流石にもう身長は伸び無いと言う。
それに対し灯里は「分からないですよ?」と引き下がらない。
どうしたものか。
灯里が大人しく見えてかなり頑固な事を散々これまで経験している玄弥は何と言えば灯里の手伝いが出来るのか考えた。
視界の端に白がひらりと揺らめく。
それは庭に干された寝具にひく為の敷布で、他にも洗濯竿には悲鳴嶼の大きな浴衣や手拭い、玄弥が後で纏めて洗おうと溜めていた洗濯物も綺麗になって干されていた。
ん?と玄弥は足を止めて風に揺らめく洗濯物をまじまじと見た。
敷布が干された竿の手前、衣服が干された竿をよく見る。
地面すれすれに干される悲鳴嶼の着物が左側に、右には女性物らしく色鮮やかな灯里の着物。
そして真ん中には玄弥の着物や浴衣、鬼殺隊から支給されている制服が干されている。
玄弥は足が汚れるのも構わず庭へと降りた。「玄弥さん?」玄弥の突然行動に灯里の驚く声が聞こえた。
それでも玄弥は構わず干される洗濯物の裏に回ればそれはあった。
風に揺らめく褌。
玄弥のである。
腰へと回し結ぶ帯紐の先には黒い刺繍糸を使い不死川玄弥と見事に刺繍されている。
これをしたのは灯里である。
玄弥は悲鳴嶼の継子としてこの屋敷にやって来た当初、幾ら色々と面倒を見てくれるとはいえ己の褌の洗濯までさせてしまうのは申し訳なく、恥ずかしくて褌を溜め込んでいた。
その都度では時間が勿体ないので後で纏めて洗おうと思っていた褌を勝手に洗われた上に他人の物と入れ違ってしまうと大変だろうからとご丁寧に名前の刺繍を施され、綺麗に畳まれた状態で返って来た褌。
思春期に突入したばかりの玄弥は恥ずかしさの余り部屋でのたうち回り、そして任務と鍛錬以外自室に篭った。
この時ばかりは普段、灯里の好きにさせている悲鳴嶼も同情して褌は玄弥が自分で洗える様にと灯里に話をつけてくれた筈なのだが、何故か褌は綺麗に洗濯されて風にはためいている。
「それでしたら沢山溜まっていましたので衣服と共に洗ってしまいましたよ」
「お、俺、褌は自分で洗うって言いましたよね?!」
「はい、ですけど玄弥さんも任務と鍛錬でお忙しい様でしたし。ついでにと思いまして」
玄関から履き物を取って来て側まで駆けて来た灯里は答えた。
確かに玄弥はここ数日忙しくしていた。
だから纏めて一気に洗ってしまおうと思ったのだ。
灯里に悪気は無い。
本当に純粋に良かれと思っての行動である。
ついで言うなら前回の騒動で悲鳴嶼も言っていたが褌に対して洗濯物である以外に他意は無い。
親が子供の洗濯物を洗う。
そんな感覚でいる。
だが思春期真っ盛りの玄弥からすれば年上の女性、しかも他人である彼女に己の褌を洗われるというのは耐え難き羞恥があった。
これが悲鳴嶼の妻でなければ羞恥が振り切れて怒鳴っていたかも知れない。
「もう、本当に頼みますから褌は勘弁して下さい」
「でも、流石に今日洗ってしまわないと明日身につける分がないですよ」
玄弥は羞恥に殺されそうであった。
褌は洗われて、褌の数まで把握されている玄弥は息絶え絶えである。
そんな玄弥に灯里は体調でも悪いのかと玄弥に尋ねた。
思春期故玄弥が感じる羞恥は灯里に伝わらない。
一体、どうすればとその場に塞ぎ込んで考え込む玄弥に離れた場所で応援する人がいた。
悲鳴嶼である。
草履を玄関迄取りにきた灯里と遭遇して彼女の口からかくかくしかじかとそこまでの話を聞いた。
涙を一雫溢した悲鳴嶼はそっと数珠を手にして小さく音を鳴らした。
玄弥よ、頑張れと。
玄弥は悲鳴嶼の継子なので基本は彼と同行する事が多いのだが、偶に単独の任務もあった。
今回がそれで、悲鳴嶼に鍛えて貰っている成果なのか以前よりも鬼の討伐が易くなった気がする。
疲労を感じてはいるが手ごたえも感じている為屋敷へと続く道を歩く足は軽く感じた。
「玄弥さん」
真っ白の割烹着が日の光を反射して眩しい。
反射光を避ける為、目を細めれば此方に向かって手を振る人物の顔がよく見えた。
「お帰りなさい」と門の所で桶と柄杓を手に玄弥を迎えたのは悲鳴嶼の妻である灯里であった。
悲鳴嶼に妻がいる事、妻帯者である事は鬼殺隊でもあまり知られていない。
勿論、玄弥も悲鳴嶼が既婚者だとは知らず、彼の継子になって灯里を紹介される迄屋敷にいる彼女を家政婦か何かだと思っていた。
それが悲鳴嶼の口から「私の妻だ」と紹介された玄弥はとても驚いたし悲鳴嶼の何とも言えない表情には困惑した。
眉を下げて困っている様な悲しんでいる様なはっきりと分からない表情に灯里はこっそりと「照れているんですよ」と小さく玄弥に耳打ちした。
「あまり人に自分の事を話す人ではないですから」
これで照れているのか。
分かりにくいと玄弥は率直に思った。
少し不安だった悲鳴嶼の継子生活はそんな感じで始まった。
継子というのは師弟の様な関係だと思っていた玄弥は鍛錬に加えて及ばずながら悲鳴嶼の生活の面倒を見るつもりでいたのだが、既に悲鳴嶼には灯里という妻がいた為、炊事洗濯、掃除のどれを取っても玄弥の出番は無かった。
何なら玄弥に与えられた部屋は定期的に掃除されているし食事も三食、偶におやつ付きで悲鳴嶼と遠くへ赴く際にはお弁当も用意された。
俺は継子なのにこんな至れり尽せりで良いのだろうか戸惑う玄弥に悲鳴嶼はその分空いた時間で鍛錬を積みなさい言った。
加えて玄弥の世話をする事は灯里も喜んでいるので付き合ってくれとも。
付き合うも何も有難い限りである。
門で玄弥を出迎えた灯里は食事の準備は出来ていますよと、桶と柄杓を片付けて居間へと共に歩く。
朝とも昼とも言えぬ時間であるが屋敷に入れば魚でも焼いていたのか香ばしい匂いがしていた。
「悲鳴嶼さんは?」
「先程、連絡がありましてお昼迄には帰ってくるそうです」
既に鬼を狩り終え、帰宅の途についた悲鳴嶼が先に鴉を送ったらしい。
だったら少し待とうかなと玄弥は言った。
だったら私も少し早いお昼にしようかしらと灯里が楽しげに零すので玄弥は頷きそうしましょうと促した。
そうでなくても昼夜逆転した鬼殺の仕事、加えて悲鳴嶼は柱である為かなり多忙である。
その為三人揃って食事という機会は大変稀であった。
余程三人揃っての食事が嬉しいのか後もう一品位増やそうかしらと楽しげに灯里は話した。
だったら俺は悲鳴嶼が来る迄に何か家事を手伝うと玄弥が言えば気持ちだけもらっておきますと笑った。
「玄弥さんは任務明け何ですからゆっくりお昼寝でもしていて下さい」
寝る子は育つと言いますしね、なんて言う灯里に玄弥は流石にもう身長は伸び無いと言う。
それに対し灯里は「分からないですよ?」と引き下がらない。
どうしたものか。
灯里が大人しく見えてかなり頑固な事を散々これまで経験している玄弥は何と言えば灯里の手伝いが出来るのか考えた。
視界の端に白がひらりと揺らめく。
それは庭に干された寝具にひく為の敷布で、他にも洗濯竿には悲鳴嶼の大きな浴衣や手拭い、玄弥が後で纏めて洗おうと溜めていた洗濯物も綺麗になって干されていた。
ん?と玄弥は足を止めて風に揺らめく洗濯物をまじまじと見た。
敷布が干された竿の手前、衣服が干された竿をよく見る。
地面すれすれに干される悲鳴嶼の着物が左側に、右には女性物らしく色鮮やかな灯里の着物。
そして真ん中には玄弥の着物や浴衣、鬼殺隊から支給されている制服が干されている。
玄弥は足が汚れるのも構わず庭へと降りた。「玄弥さん?」玄弥の突然行動に灯里の驚く声が聞こえた。
それでも玄弥は構わず干される洗濯物の裏に回ればそれはあった。
風に揺らめく褌。
玄弥のである。
腰へと回し結ぶ帯紐の先には黒い刺繍糸を使い不死川玄弥と見事に刺繍されている。
これをしたのは灯里である。
玄弥は悲鳴嶼の継子としてこの屋敷にやって来た当初、幾ら色々と面倒を見てくれるとはいえ己の褌の洗濯までさせてしまうのは申し訳なく、恥ずかしくて褌を溜め込んでいた。
その都度では時間が勿体ないので後で纏めて洗おうと思っていた褌を勝手に洗われた上に他人の物と入れ違ってしまうと大変だろうからとご丁寧に名前の刺繍を施され、綺麗に畳まれた状態で返って来た褌。
思春期に突入したばかりの玄弥は恥ずかしさの余り部屋でのたうち回り、そして任務と鍛錬以外自室に篭った。
この時ばかりは普段、灯里の好きにさせている悲鳴嶼も同情して褌は玄弥が自分で洗える様にと灯里に話をつけてくれた筈なのだが、何故か褌は綺麗に洗濯されて風にはためいている。
「それでしたら沢山溜まっていましたので衣服と共に洗ってしまいましたよ」
「お、俺、褌は自分で洗うって言いましたよね?!」
「はい、ですけど玄弥さんも任務と鍛錬でお忙しい様でしたし。ついでにと思いまして」
玄関から履き物を取って来て側まで駆けて来た灯里は答えた。
確かに玄弥はここ数日忙しくしていた。
だから纏めて一気に洗ってしまおうと思ったのだ。
灯里に悪気は無い。
本当に純粋に良かれと思っての行動である。
ついで言うなら前回の騒動で悲鳴嶼も言っていたが褌に対して洗濯物である以外に他意は無い。
親が子供の洗濯物を洗う。
そんな感覚でいる。
だが思春期真っ盛りの玄弥からすれば年上の女性、しかも他人である彼女に己の褌を洗われるというのは耐え難き羞恥があった。
これが悲鳴嶼の妻でなければ羞恥が振り切れて怒鳴っていたかも知れない。
「もう、本当に頼みますから褌は勘弁して下さい」
「でも、流石に今日洗ってしまわないと明日身につける分がないですよ」
玄弥は羞恥に殺されそうであった。
褌は洗われて、褌の数まで把握されている玄弥は息絶え絶えである。
そんな玄弥に灯里は体調でも悪いのかと玄弥に尋ねた。
思春期故玄弥が感じる羞恥は灯里に伝わらない。
一体、どうすればとその場に塞ぎ込んで考え込む玄弥に離れた場所で応援する人がいた。
悲鳴嶼である。
草履を玄関迄取りにきた灯里と遭遇して彼女の口からかくかくしかじかとそこまでの話を聞いた。
涙を一雫溢した悲鳴嶼はそっと数珠を手にして小さく音を鳴らした。
玄弥よ、頑張れと。
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